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人材活用に役立てる

見方を変えれば、世界が変わる(12)

 こんにちは、コンサルタント・中小企業診断士の田中博志です。

 これまで11回にわたり、見方を変えることの大切さを考えてきました。
 はじめの8回は3つの工夫、9回目は個人の基本的な考え方、10・11回目は組織のあり方について探ってきました。

 最終回の今回は、これまでの内容を人材の活躍にどのように役立てていくかについて解説したいと思います。
 少し長くなりますが、最後ですので、みなさんもぜひ一緒に考えてみてください。

【1】 「3つの工夫」を日々の業務で活用する

 はじめに挙がるのは、「対立」「ダメ出し」「障害」をテコにした工夫を使って、日々の業務を改善することです。それぞれの概要は次のとおりでしたね。

 いずれも、一人で使うこともできますし、組織で話し合いながら活用することもできます。
 「対立」は相手がいる場合が多いですが、自分自身の中にもあります。
 「あれがいいか、これがいいか」と葛藤したりジレンマを感じるときですね。

 そういうときは、両立が難しそうな複数のニーズを感じていますから、「対立する2人の自分」を想定して考えを図解してみるとよいです。

 「ダメ出し」も他人からだけでなく、自分から受けることもあります。
 「何か悪いことが起きるのでは?」と漠然と感じるときですね。
 そんなときは、副作用の予感をふり払うのではなく、心の声に素直に耳を傾け、どうしてそう感じるのかを「見える化」してみましょう。結論を焦らずにていねいに掘り下げていくと、より良いアイディアが見つかるものです。

 「障害」をテコにした実行計画づくりは、自分だけでなく、他の人の感覚を取り入れても面白いです。組織的なハードルを「見える化」できますので、プランの実現性が高まります。

 私たちプライムコンサルタントの社内でも、これらの手法を使って解決策を考えたり、業務計画を立てることがあります。
 また、日常業務だけでなく、半期ごとの個人目標設定や進捗確認の際にも使えますのでいろいろと試してみてください。

【2】 効果的な質問で人の力を引き出す

 3つの工夫を解説する事例で、「質問」をきっかけに状況が好転する場面がありました。
 架空の製パンメーカー「プライムデニッシュ」のメンバー同士が対立したり、若手が途方に暮れたとき、K課長やSさんの質問を機に思考が前に進みましたね。

 良い質問は、答えを直接与える以上の効果があるのです。役立ちそうなものをいくつか振り返ってみましょう。

【工夫-1に関連する質問】

■主張の背景にあるニーズや目的を聴くとき
 「何のために成長、あるいは受注を優先すべきと思うのですか?」
 第2回目 にK課長が発した質問です。
 PさんとQさんが、「若手の成長」と「確実な受注」のどちらを優先するかで対立したとき、双方が満たしたいニーズを端的に訊ねたものです。

 この質問は、議論の焦点を「何をするか」から「満たしたいニーズは何か」にシフトさせ、協力的に話し合うモードを取り戻す効果がありました。
 同じような質問を挙げてみます。

  • 「○○することでどんな効果を期待していらっしゃるのですか?」
     ストレートに訊ねにくい場合は、
  • 「○○の方が良いとおっしゃる背景や目的を含めて詳しく教えてもらえますか?」

■相手の主張とは別のニーズもあることを確認したいとき
 「Pさんがおっしゃる若手の成長とともに、確実な受注も大切だと思いますがいかがでしょうか?」
 事例にはありませんが、確実な受注を主張するQさんが、このように言って自分のニーズの大切さを確認することもできました。

 なお、相手にきちんと答えてもらうには、質問側も相手の言い分を受けとめることが大切です。
 自分のニーズを言うと露骨すぎるときは次のように言ってもいいでしょう。

  • 「○○(相手が主張するニーズ)は本当に大切です。他にも同じように大切なことがあるとしたらどんなことでしょうか?」

■Win-Winの解決策を探すとき
 「若手の成長と確実な受注を同時に満たす方法は何でしょうか?」
 これも事例にはありませんが、PさんとQさんはこの問いを胸に解決策を考えたはずです。
 「同時に満たす」というキーワードで発想の転換が促されます。
 次のようなバリエーションがあります。

  • 「どうすれば、●●と○○の両方を実現できるでしょうか?」
  • 「●●と○○の両方を同時に満たす妙案を、一緒に考えませんか?」

 通常、「何をするか」という点では対立しても、「何故そうしたいのか」という点では共感できるものです。
 つい、方法論の違いに目が行きがちですが、大切なニーズを共有して生産的に話し合うために、このような質問を活用したいものです。

【工夫-2に関連する質問】

■「ダメ出し」を受けたが、その理由がわからないとき
「どうしてそのように感じられるのでしょうか?」・・・第3回
「どうしてそう思われるんですか?」・・・第4回
 いずれもK課長の言葉です。

 M部長とOさんから「ダメ出し」と受けたとき、動揺を抑えながら発しました。
「そんなことはないはずです!」「どうしてわかってくれないんですか!」と言わなかったので、相手もていねいに説明してくれました。私たちは、自分と違う意見を聞いたときに反射的に否定することがありますが、分からないことは素直に「分からない」「教えてください」と言えばいいのですね。

 相手の「ダメ出し」に敬意を払えるともっと効果的です。例えば、

  • 「そこまでは思いが至りませんでした。ぜひ、その理由を教えてください。」

 また、相手から言われる前に「ダメ出し」を引き出すのも有効です。
 例えば、アイディアを説明した後で次のように言ってみてはどうでしょうか?

  • 「このように考えたのですが、見落としていることもあるかもしれません。気づいたことがあれば、ぜひ教えてください。」

■副作用が起きる別の原因を探すとき
 「もし『提案内容は経験豊富なベテランが考え』かつ『客先に早く資料を出したい』ならば、『客先に出す資料をベテランが作る』ことになる。なぜならば・・・?」
 第3回にK課長が、M部長から指摘された「若手の依存心が増してしまう」という副作用を回避する方法を探るときに自問自答したのはこのようなことでした。

 K課長は自問自答の末、「他の人の案を資料にするにはかなり時間がかかる」というもう一つの原因を発見し、「ベテランと標準のノウハウが共有されている」状態をつくるという補強策を考えつきました。
 普段当たり前のように感じていることほど、その前提にある要因が見えにくいものです。
 それを引き出すとき、次のような言い方が有効です。

  • 「もし○○ならば、・・・である。なぜならば?」
  • 「○○は・・・である。なぜならば?」
     声に出してつぶやくと効果的ですし、他の人に言ってもらうとさらに気づきやすくなります。

【工夫-3に関連する質問】

■難しいと感じることを聴き出す時
 「どうして無理だと思うのでしょうか? 『わからない』『難しい』『できない』と感じていることを、包み隠さず言ってみてください。」
 6回目で、若手のSさんが「私にはとても無理」と諦めそうになったとき、ベテランのTさんが発した質問です。
 Sさんは、「わからないことを素直に言えばいい」と言われて落ち着きを取り戻し、実行計画づくりが始まりましたね。

■目指したい状況を具体化するとき
 「これらをクリアした状態を言ってみてください。具体的なやり方は別にして、『こうなっていたらいい』という状態を言葉にしてみるんです。例えば、1番目については『Y社のニーズを十分にわかっている』という風に。」
 これも6回目のTさんの言葉です。仕事を進めるには目標、すなわち、出来上がりのイメージが大事です。
 そのイメージを「(障害を)クリアした状態」と表現しています。あえて「目標は?」と言わないのはプレッシャーをかけないためです。
 また、「具体的なやり方は別にして」という言葉も相手の心理的ハードルを下げる効果があります。
 次のようにシンプルに言ってもいいでしょう。

  • 「できるかどうかは別にして、どんな状態を目指したいですか?」

■取り組みの順番を考えるとき
 「『これを実現するには、その前にこれができていなければならない』という関係も考えて・・・」
 7回目でSさんが中間目標に取り組む順番を考えるときのTさんの助言です。質問ではありませんが、これをもとにSさんは、

  • 「○○を実現するには、その前に何ができていなければならないだろう?」
    と考えたことでしょう。

 いきなり、「どんな順番にするか?」「優先順位は?」と問われても簡単には答えられません。
 でも上記のように言われると、少しずつひもを解くように無理なく考えられますね。
 次のような言葉も効果的です。

  • 「○○のためには何が必要ですか?」
  • 「○○の前に何かやっておくべきことはありますか? それは何でしょうか?」

 3つの工夫を切り口とした効果的な質問を見てみました。これ以外にもたくさんありますので、ぜひ、ご自身の質問集を考えてみてください。

 ここで、部下がいる方にお奨めしたいことがあります。
 それは、部下が仕事に行き詰まったとき、すぐに答えを提供する代わりに、効果的な質問をすることです。
 部下が悩むのは辛いですし、仕事を効率的に進めるためにも、答えを教えたくなりますが、長い目で見ると部下のためになりません。

 部下の育成とは何でしょうか? 
 それは、「自分で課題を見つけて、解決策を見出す力を備えさせる」ことですよね。
決して、データベースに情報を入れるように「正解」を与え続けことではありません。ゴールドラット博士は次のように言いました。

 「答えを教えることはしない。なぜなら、教えることは、本人が答えを見つける機会を永久に奪ってしまうからだ」

 私たちは、誰かの言葉や質問をきっかけに考えが進んで新しいことに気づくことがよくあります。
 上司の役割は、部下に探究を促す質問をし、本人が自力で答えを見つけるサポートをすることではないでしょうか。

 また、上司が「答え」を教え続けると、「上司は何でも知っていなければならない」という思い込みに陥ってしまいます。
 これは答えを教えることの「副作用」であり、「決してわかったつもりになるな」という前提を脅かします。
 部下もいつかは誰かの上司になります。部下の現在と将来のために、質問を有効に活用した関わり方をしていただきたいと思います。

【3】 4つの基本前提とダイアログの場の好循環をつくる

 前回、詳しく見たように、個人の「4つの基本前提」と組織の「ダイアログ的な場」は互いに補完して好循環を生みます。
 このサイクルができると、個人と組織の活力が発揮されやすくなります。

 ただし、「あり方」の形成には時間がかかると言いました。
 それは、変化がゆっくりと進むので「異変」に気づきにくいということでもあります。

 せっかく好循環ができても、それを維持する意図が失われると、いつの間にか悪循環に変質する可能性も出てきます。
 「ゆでガエル」の比喩のように、気づいたらニッチもサッチもいかない組織になっていた、とならないようにしなければなりません。

 もう一度確認すると、人々の努力が改善やイノベーションにつながるかどうかは、個人と組織の「あり方」に大きく依存します。

 この「好循環」をさらに強固なものにするために、私はここに「3つの工夫」を加えたいと思います。
 なぜなら、「あり方」の良し悪しは、実際に改善やイノベーションが生まれているかどうかで確認されるからです。

 私たちは、世の中に価値を産み出すことを目的に仕事をしています。
 そのために、貴重な時間・労力・知識や思いを投入し、より質の高い価値をより多く産み出せるよう日々努力しています。

 努力が実を結ぶには、具体的な工夫が必要です。
 9回目で、「工夫の手順」を知っていても、基本的な考え方・心構えが欠けているとうまくいかないことを述べました。

 その一方で、考え方や心構えがあっても、具体的な工夫がなければ生産性は上がりません。両方が大事なのです。
 「考え方・心構え」は、「具体的工夫」を生み出したり改良する基盤ですが、それと同時に「具体的工夫」のフィードバックを受けて「考え方・心構え」の妥当性が確認され、ときには進化していくものだと思います。

 「ダイアログ的な場」の有効性についても同じことが言えます。

 少し理屈っぽくなりましたが、シンプルに言うと、「個人の考え」と「組織の場」と「業務の工夫」が図のように互いに支え合うと、より強固な好循環が実現するのです。

 これら3つの関係は、ハーモニーを奏でる三重奏のように、好循環の「環(わ)」と同時に、調和の「和」を形づくることが分かります。

 約半年間にわたり、お読みいただきありがとうございました。
 皆さんの日々の営みが、「個人の考え」「組織の場」「業務の工夫」の「和」によって、より大きな社会の価値を生み出し、一人ひとりの働き甲斐と会社の成長・発展を実現されることを心より願っています。

※本稿は、エリヤフ・ゴールドラット博士が提唱された「制約条件理論(TOC)」の思考プロセスを参考にしています。

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