「見方を変える」ための基本となる考え方

見方を変えれば、世界が変わる(9)
こんにちは、コンサルタント・中小企業診断士の田中博志です。
これまで、3種類の「見方の変え方」をご紹介してきましたがいかがでしたでしょうか。
少しの工夫で大きな変化が起こせることを理解して頂けたと思います。
一方で、理屈はわかるけれど現実的には難しそうだ、という印象もあるかもしれません。
「難しそうだ」という感覚には2種類があると思います。
一つは、「手間がかかって面倒そう」というものです。
この場合は、細かいことは気にせず、試しに使いながら慣れて頂くとよいと思います。
もう一つは、「いい考えだけど、素直な気持ちで使えるかな?」という感覚です。
これは、私たちの心の奥に工夫の邪魔をする「壁」があるかもしれないという鋭い気づきです。
ちょうど、「便利なPCソフトがあるけれど、土台のOS(注)に問題があるので上手く使えない」と似たようなことが、私たち自身の内面でも起きているのかもしれません。
(注)オペレーティング・システム。Windowsのような基本ソフトのこと。
今回は「見方を変える」ための、人間の内面にかかわる基本となる考え方について考えてみたいと思います。
ちょっと赤裸々なお話しになるかもしれませんが、新しい発見があるかもしれませんので、ぜひ一緒に考えてみてください。
はじめに、これまでご紹介した3つの工夫をおさらいしながら、私たちの内面が原因で上手く使えないとしたら、心の中にどんな思いがあるかを推測してみます。
他にもあるかもしれませんが、大体こんな感じでしょうか。
ところで、「上手くいかないときの心の中」の内容をよく見ると、似通ったものがありますね。整理してみると、次の「4つの思い」に集約されると思います。
■工夫を阻む「4つの思い」■
(ア)ものごとは複雑すぎて理解することなどできない
(イ)相手が自分と同じように協力的かどうかわからない(信用できない)
(ウ)考えが違う人が同時に満足できることなどあり得ない
(エ)私の考えの方が優っているに決まっている
もし心の底でこのように感じていたら、3つの工夫を使おうとしても必ず行き詰まってしまいます。
なぜなら、どの方法も、相手(自分を含め)を尊重し、相手の話し(自分の心の声も含め)に耳を傾けることを基礎として、傾聴をとおして出てきたことのつながりを解明しながら、より良い方法が必ず見つかると信じて答えを探し求めていくからです。
「4つの思い」は工夫を阻む「壁」となるので変えなくてはなりません。
ではどうすればいいのでしょうか?
試しに、(ア)から(エ)の内容を裏返して言ってみましょう。
(1)複雑そうに見えても、実はものごとはシンプルで、理解することができる
(2)誰もが「良かれ」という思いを持っている。相手を信用しても大丈夫だ
(3)お互いが満足できる方法が必ずどこかにある
(4)ほかにもいい考えがあるかもしれない
このように言ってみると、「4つの思い」とは違って明るい気持ちになれそうですね。
3つの工夫の途中で困難を感じても、(1)から(4)を「信念」のように唱えることで、前進する勇気が湧き、活路が開けてくるのではないでしょうか。
これまでご紹介してきた「見方の変え方」が効果を発揮するには、私たちの内面に「壁」があってはなりません。
上記(1)から(4)の信念を持ちながら、3つの工夫を使いこなして頂ければ幸いです。
ところで、皆さんの中には、(1)から(4)に似た言葉をどこかで見聞きした方もいらっしゃるかもしれません。
実はこれらは、本稿で参考にしているエリヤフ・ゴールドラット博士が挙げた「基本前提」に通じる内容です。
ゴールドラット博士は次の4つの基本前提の上に「制約条件理論(TOC)」という壮大なマネジメント理論を展開し、世界中の様々な企業、組織で大きな実績を上げられました。
1.ものごとは、そもそもシンプルである
"Inherent Simplicity"
2.人はもともと善良である
"People are good."
3.Win-Winは常に可能である
"Win-Win is always possible."
4.決して、わかったつもりになってはならない
"Never say I know."
「前提」とは、ものごとを考えたり、行うときの基礎となる判断のことですね。模式的に書くと、
- もし「A」であるとしたら・・・、「B」である
- 「A」であるから・・・、「B」をしよう
などとしたときの「A」の部分が前提です。
「前提」には、疑えない(明白な)事実であることもあれば、人によって価値判断が異なるものもあります。
例えば、上記2.の「人はもともと善良である」の代わりに、「人はそもそも怠け者である」とか「人は利己的である」という見方する人もいるかもしれません。
何を前提にするかはとても重要で、それに続く考え・行動(上記模式の「B」)に大きく影響します。
例えば、上司が部下に仕事への積極性を高めようとするとき、「人はもともと善良である」という前提に立つかどうかで次のように対応が大きく変わってきます。
(ア)「人はもともと善良である」としたら・・・「部下が自ら仕事の意義・やりがいや面白さに気づけるように、効果的な質問やアドバイスをしよう」
(イ)「人はもともと怠け者である」としたら・・・「部下が怠けないように、怠けたら罰を与えることにしよう」
性善説、性悪説のように異なる意見がありますが、どの立場をとればより良いアイディアや行動を生み出せそうかと考えると、私は前者の方を選択したいと思います。
他の3つの基本前提も同じように考えられます。
1.「ものごとがシンプルかどうか」、3.「Win-Winが可能かどうか」、4.「わかったつもりになるかどうか」について、どんな前提を選択すれば、より良い仕事や人生を創ることができるでしょうか?
ゴールドラット博士は、人の営みにおいて、基本的な考え方の重要さを強調されたのだと思います。
※本稿は、エリヤフ・ゴールドラット博士が提唱された「制約条件理論(TOC)」の思考プロセスを参考にしています。
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