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定年後再雇用社員の賃金・評価制度

定年後再雇用社員の賃金を決める3つの実務ポイント

「再雇用になったら、定年時の何%まで賃金を下げられますか?」

定年後再雇用社員(以後、「再雇用者」と言う)の賃金に関しては、多くのお客様からこのようなご相談をいただきました。その背景には、“定年後の再雇用は社会福祉”という経営者の感覚があったのではないでしょうか。

「給料の高い人、やってもらう仕事がない人をいつまでも雇わなくてはならないのか」という不満もあったと思います。必要としていないものにお金を払っている感覚ですから、コストカットの視点に終始してしまったのも当然でしょう。

 

ところが、状況は急速に変わりつつあります。

最大の理由は、国内で急速に進む少子高齢化を背景とした人手不足による採用競争の激化と賃金相場の高騰です。新規の人材採用が難しくなる中で、余剰人員であった再雇用者が貴重な戦力と考えられるようになってきました。定年延長が中小企業から大企業にも広がる動きとも相まって、60歳以降の賃金水準は年々高くなってきています。実際、厚生労働省の賃金構造基本統計調査によれば、60~64歳の所定内給与の全国平均は2023年で305,900円(従業員規模100~999人/産業計/男女計)と5年前の2018年調査から約35,000円、率にして12.8%も上昇しています。

また、再雇用者も2020年4月(中小企業は2021年4月)から適用されている同一労働同一賃金法制の対象となり、正社員との不合理な待遇差は認められなくなりました。正社員には定期昇給がある一方で、再雇用者は一律に昇給無しとする例を時折見かけますが、こうした待遇は法律上で問題となる可能性がありますので、注意してください。

しかしながら、賃金をただ高くするだけでは、人件費の投資効果は上がりません。賃金をアップした最初の数カ月は再雇用者もやる気になるでしょうが、高くなった賃金に慣れてしまえば、たちまち以前と同じ仕事ぶりに逆戻りしてしまいます。賃金に見合った成果を出してもらうには、再雇用者にもしっかりとした人事処遇の仕組みが必要なのです。

ただし、再雇用には正社員とは大きく異なる点があります。それは、一般的に最長5年間で再雇用契約が終了するという、ゴールまでの時間が非常に短いという点です。
これらを踏まえて、再雇用者の待遇にはつぎの3点に留意してください。

①契約満了までを見据えた定年前の本人との話し合い
②仕事と成果に応じた賃金支払い(ペイ・フォー・パフォーマンス)の徹底
③正社員の待遇との関係を説明できるようにすること

①契約満了までを見据えた定年前の本人との話し合い

定年後再雇用とは、定年退職した社員と新しい雇用契約を結び直すことです。今後5年間でどのように会社に貢献して欲しいかを図表1のような流れで本人と十分に話し合いながら、再雇用後の勤務条件を決めていきましょう。

定年後再雇用に向けた準備の流れ(図表1)定年後再雇用に向けた準備の流れ

②仕事と成果に応じた賃金支払い(ペイフォーパフォーマンス)の徹底

会社によって人事制度や成果の判断基準が異なりますので、ここでは当社が主に推奨している役割等級をベースにした賃金制度に沿って基本的な考え方をお伝えしたいと思います。

まず、再雇用者用の基本給表を作ります。

長期雇用が前提の正社員には、毎年の給与改定で細やかに昇給額を調整して長くモチベーションを保つ工夫も必要ですが、再雇用者の場合はペイ・フォー・パフォーマンスの徹底が基本です。つまり、それぞれの等級に評価SABCDと対応した5種類の基本給額を用意すれば十分です(図表2)。

 

再雇用者用の基本給表(例)(図表2)再雇用者用の基本給表(例)

 

こうした基本給表が準備できたら、次のステップで再雇用時の基本給を決めていきます。

STEP1

再雇用後に任せる役割を決め、それに応じて賃金ランクを決める

例えば、Ⅲ等級の標準的な(=B評価程度の)役割と成果を期待するなら、基本給は9ランクで333,000円となります。

STEP2

就業条件(働き方)に応じて、賃率を決めて金額を決定する

就業条件(働き方)には、人材活用のしくみ(異動の有無や範囲)や時間外勤務の要請の有無などが入ります。 本人と勤務条件を話し合った結果、再雇用後は職種変更や配置転換の範囲を限定するようなケースもあるでしょう。その場合、担当する業務は正社員と同じであったとしても、会社の人事権が一部限定されるわけですから、同じ基本給を払ったのでは正社員に対し不公平です。そこで、限定分として先ほどの基本給に一定の賃率を掛けます。例えば、の333,000円に賃率:95%を掛けて、333,000円 x 0.95 = 316,350円と計算すれば、根拠のある金額の算出が可能になります。なお、就業条件の限定度合いが大きくなるほど、賃率を低く設定するのが一般的な手法です。

諸手当についての詳述は控えますが、正社員とのバランスを考えて、待遇の違いが説明できる形での支給を検討します。

このようにして、再雇用時の賃金が決まり、翌年以降は契約更新時に役割と貢献度の評価に応じて基本給を見直していけば、仕事と成果に応じた給与支払い(ペイ・フォー・パフォーマンス)が徹底できます。

③正社員の待遇との関係を説明できるようにすること

前述したように、再雇用者も同一労働同一賃金法制の対象となり、正社員との不合理な待遇差は認められなくなりました。つまり、正社員とのバランスを無視して再雇用者の賃金を決めることはできなくなったということです。

働く人のモチベーションも考えると、再雇用者にも正社員と同じ人事評価制度を適用して、役割にふさわしい行動や成果を求め、その評価を反映させて契約更新時の給与改定を行うのが自然であり、本人にも説明しやすいでしょう。

正社員の待遇との関係を説明できる賃金の決め方が企業に求められている以上、再雇用者も通常の人事評価の対象とすべき時代となってきています。

人手不足のなかで、高齢者の労働力としての価値は高まっています。政府も高年齢者の雇用確保や待遇改善の後押しを進めており、改正高年齢者雇用安定法では、2025年3月末で経過措置が終了し、2025年4月1日からは希望者全員に対して65歳まで雇用機会を確保することが完全に義務化されました。

再雇用者のやる気と貢献を引き出すには、金額の根拠を説明できる納得感のある賃金待遇が有効であり、これは同一労働同一賃金ガイドラインが求める均等・均衡待遇の確保にもかなっています。再雇用者がイキイキと働くことは、社員全体のやる気にも良い影響を与え、会社業績の向上にもつながります。

是非、そうした視点から再雇用者の人事制度整備に取り組んでください。

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