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『ダメ出し』転じて福となすー2ー

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『ダメ出し』転じて福となすー2ー

見方を変えれば、世界が変わる(4)

 こんにちは、コンサルタント・中小企業診断士の田中博志です。
 前回から、自分の考えに「ダメ出し」をされたときの対処を取り上げ、イメージしやすいように、架空の製パン会社「プライムデニッシュ」の営業1課のケースで考えています。

 前々回、営業1課では、若手の担当エリアで重要案件が出たときにどうするかとの課題について話し合い、

  • 「重要案件には、若手とベテランのペアで対応する」

という解決策を決めました。こうすることで、「若手が経験を積んで成長する」「重要案件を確実に受注する」という2つのニーズを同時に満たして「会社の永続的な成長」につなげるとの目論見でしたね。

 そして前回、K課長は、この解決策を実行するために上司のM部長に相談したところ、予想外の「ダメ出し」を受けました。

 「受注は増えるが、その一方で、若手の依存心が増すだろう」という指摘でしたね。
 K課長は粘り強く考え、解決策が別の要因と組み合わさって副作用が起きることを突き止め、見事に予期せぬ失敗を回避する補強策を見つけました。

 ところがその翌日、古参の部下のOさんに説明したところ、M部長よりも厳しい「ダメ出し」を受けてしまいました。
 すなわち、「受注できないうえに、当社の評判も下がる」という、望ましい結果も得られないうえに、副作用もある、という強烈なものでした。

 このように厳しい状況でも冷静に対処できる方法を詳しく考えていきたいと思います。

【Oさんの指摘】

  • Oさん:「課長、そんなことしても多分、受注につながりません。それどころか、当社の評判が下がる恐れがあります。」

 K課長は動揺しましたが、M部長の「ダメ出し」に対処した次の手順を思い出し、とりあえずこの順番で対応してみようと考えました。
――――――――――

  • 手順1:落ち着いて、相手の考えていることを聴き出す
  • 手順2:副作用が起きる過程(道筋)をていねいに描き出す
  • 手順3:過程の各ステップを次の3色で色分けし、色が変わる所を確認する

  • 手順4:色が青から黄またはピンク(赤)に変わる所に注目し、状況が悪化する原因を詳しく調べて「補強策の案」を考える
  • 手順5:解決策に「補強策の案」を加えて全体の流れを見直し、副作用を防ぎつつ、望ましい結果を実現できることを確認する(もし問題があれば、少し戻って、再度考える)

――――――――――
 では、順番に見ていきましょう。

  • 手順1:落ち着いて、相手の考えていることを聴き出す

 K課長は、きっと深い理由があるに違いないと気持ちを落ち着け、「どうしてそう思われるんですか?」と質問してみました。Oさんはゆっくりと説明しました。

  • Oさんの説明―――――

1) 若手とベテランのペアは何が何でも受注を得たいと考えるでしょう。
2) ですが、大口案件は必ず競合(コンペ)になるので、簡単には勝てません。
3) 提案内容の変更や資料の作り直しなどで対応にかなりの手間と時間がかかることになります。
4) ところで私たち営業課員は、ほぼ自分の担当エリアでの売上と粗利で評価を受けます。
5) 「指名するベテランはその時の状況で選ぶ」と言っても、暇を持て余している者は一人もなく、皆、時間があれば攻略したい先を持っています。
6) そのような状況なので、ベテランが期待どおりに若手の重要案件にコミットしてくれるか大いに疑問です。
7) 下手をすると、提案内容、資料、プレゼンの全てが若手に丸投げになってしまいます。
8) 稚拙な提案では真剣勝負の競合には勝てず、まず、失注するでしょう。
9) でも、それだけではありません。ベテランが出るということで、客先は、当社が組織をあげて対応すると期待するはずです。
10) にもかかわらず、魅力の少ない提案を受け取ったら、客先の心象を害してしまい、万一の場合、当社の評判が下がるかもしれません。
――――――――――
 K課長は、営業の表も裏も見抜いた鋭い分析に驚きました。「もらった意見を参考に考えてみますので、また、相談に乗ってください」と言い、自分の席に戻りました。

 席に戻ったK課長は頭を抱えてしまいました。
 Oさんの予測では、「当社の評判が下がる」という副作用が起きるだけでなく、もともと意図していた「受注が増える」という望ましい結果も実現できません。
 もう一つの「若手が経験を積んで成長する」ことには触れられていませんが、ベテランの関与が少ないので大した教育効果も上がらないと思われていることでしょう。
 まさに八方ふさがりという感じですが、とにかく、手順2に進むことにしました。

  • 手順2:副作用が起きる過程を(道筋)をていねいに描き出す

 Oさんの説明を振り返り、ポイントを箇条書きにします。

1) 若手とベテランのペアは何が何でも受注したい
2) 大口案件は必ずコンペになり、簡単には勝てない
3) 案件対応にかなりの手間と時間がかかる
4) 営業課員は、ほぼ担当エリアの売上と粗利で評価を受ける
5)-1 ベテランは皆、もっと攻略したい先を持っている
5)-2 ベテランは、余力があれば自分の担当エリアに使いたい
6) ベテランは若手の重要案件に十分コミットしない
7) 商談全体が若手にほぼ丸投げされる
8)-1 提案内容が稚拙になる
8)-2 競合に勝てず、失注する(受注できない)
9) 客先は、当社の組織的な対応に期待する
10)-1 客先は、魅力の少ない提案に失望する
10)-2 当社の評判が下がる

 次に、これらを次のように図解してみます(図表1)。全体のつながりが見えてきましたね。

  • 手順③:過程の各ステップを次の3色で色分けし、色が変わる所を確認する

 続いて先ほどの図表1の各箱に色をつけます(図表2)。ただし、解決策と2)、4)、5)-1のように他から矢印が入ってこない箱には色をつけません。

 これらは、この流れの前提となる出発点なので、一旦、良い・悪いの判断から外した方が、全体像をつかみやすくなるからです。  さらに、色が変わる所を確認すると、緑色の太矢印(ア)(イ)(ウ)で示した3カ所あることがわかりました。

 K課長は、一つ一つ辛抱強く整理していくうちに、状況が悪化する構造が見えてきました。
 そして、矢印の周辺を掘り下げれば補強策を見つけられるような予感もしてきました。  全体を整理して俯瞰することによって、落ち着きを取り戻し、希望を感じられるようになってきたのです。
 いったい、Oさんの強烈な「ダメ出し」を克服する打ち手はどんなものでしょうか?

 次回は、状況が悪化する原因を詳しく調べ、補強策を考えていきたいと思います。
 よろしければ、皆さんも考えてみてください。

※本稿は、エリヤフ・ゴールドラット博士が提唱された「制約条件理論(TOC)」の思考プロセスを参考にしています。

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