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『障害』転じて福となすー2ー

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『障害』転じて福となすー2ー

見方を変えれば、世界が変わる(7)

 こんにちは、コンサルタント・中小企業診断士の田中博志です。

 前回から、「私にはとても無理です!」と言いたくなる課題への対処法を取り上げ、架空の製パン会社「プライムデニッシュ」で働く営業1課の若手Sさんが新商品開発の案件に対応するケースを考えています。

 前回は、未経験のPB商品開発の案件に途方に暮れていたSさんが、ペアを組むベテランのTさんの質問に答えながら自力でクリアすべき課題を見つけていきました。次の図表1の内容でしたね。

 次に行うことは、それぞれの課題をどんな順番でいつ取り組むかというプラン作りです。
 Tさんは、これもSさんの力でできると言いました。今回は、Sさんが自分で計画を作る様子を詳しく見ていきます。 
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 「何からやったらいいか教えて頂けますか?」というSさんに、Tさんは言いました。

  • Tさん:「はい、と言いたいところですが、せっかくですから、それも自分の力で考えてみませんか? 私が手伝いますから・・・。」
  • Sさん:「できればそうしたいですが、でもどう考えればいいのでしょう?」
  • Tさん:「表の右側のクリアした状態を並べ替えてください。ルールは『時間』です。

 一番初めはこれ、その次はこれ、・・・最後はそれ、という具合です。厳密でなくても間違っていてもいいので、わかる範囲でやってみましょう。

 例えば、『2) 最終的な仕様と納入数に応じた見積ができている』は最後ですよね。
それから、『10) 私に見落としや間違いがないか確認してくれる人がいる』は一番初めですね。私とペアになった時点で完了していますから(笑)」

 最後の一言に元気づけられたSさんは、10個の課題(=クリアした状態)の時系列を考えて次の順に並べました。

10) 私に見落としや間違いがないか確認してくれる人がいる
1) Y社のニーズが詳しく分かっている
4) Y社の意思決定プロセスや重視するポイントがわかり、キーパーソンとの折衝の機会が設定されている
3) 商品開発部、製造部などと開発チームが編制され、試作・商品化の流れがわかっている
7) 競合に比べた当社の強みと訴求ポイントがわかっている
8) Y社のハートをつかむポイント、資料の構成、盛り込む内容がわかっている
5) 具体的な開発プロセスを決める手順がわかり、客先と打ち合わせ時の社内の協力体制ができている
6) 試作品を吟味し開発チームにフィードバックする方法がわかっている
9) 最終契約に至るまでのプロセスをしっかり管理している
2) 最終的な仕様と納入数に応じた見積ができている

 並べ終わってから、Sさんはちょっと自信なさ気に言いました。

  • Sさん:「大体こんな感じだと思いますが・・・少し違和感があります。一直線にはならないような気がします。」
  • Tさん:「いいところに気がつきましたね。では、次にこれを図解して見ましょう。

一つずつ付箋に書いて矢印でつなぐのです。『時間』だけでなく『必要条件』もルールに加えます。
つまり、『これを実現するには、その前にこれができていなければならない』という関係も考えて線で結ぶのです。」

 Sさんは1)~10)の付箋を作り、大きな台紙に貼っていきました。
 「これが先、次はこれ、これはもっと後、やっぱりこれは・・・」と行きつ戻りつ進めました。

 Tさんは、Sさんが困った時に「○○のためには何が必要だと思う?」とヒントを与える質問をしたり、「ここにはもう1ステップあった方がいいね」と、追加の付箋を貼ったりしてサポートしました。
 共同作業の末、ついに図表2ができました。11)~13)はTさんのアドバイスで追加したものです。

 この図を真剣に見つめていたSさんは、やがて口を開きました。

  • Sさん:「この順番で進めていけば受注にこぎつけるような気がしてきました。はじめはとてつもなく大きな山のように感じていましたが、一歩一歩進めればいいんですね。あとはそれぞれの期限を決めればいいんでしょうか?」
  • Tさん:「その通り! これに日付が入れば立派な実行計画です。一つ一つの付箋は、Y社のPB商品の受注という大目標達成のためにクリアしていく途中の目標、いわば『中間目標』なのです。あなたは自力で中間目標を見つけ、取り組む順番も整理したのですよ!」
  • Sさん:「それはTさんの助けがあったからです。でも、中間目標はどれも簡単ではありません。
    具体的にはどうすればいいんでしょうか?」
  • Tさん:「それは個々の中間目標に取り組む時に詳しく考えればいいのです。 その時にもし『とても無理!』と思ったら、今日やったように『難しい』『わからない』を洗い出し、それをもとに『ミニ中間目標』を作ればいいんです。もちろん私も相談に乗りますよ。大事なことは、全体を見通しながら『今やるべきことに集中』することなんです。時間がない中で闇雲に突っ走るのは危険です。かと言って、心配ばかりして動かないのもダメです。これからの半年間、常に『今やるべきことに集中』できるよう、まず実行計画を考えたんです。」
  • Sさん:「わかりました。何だか勇気が湧いてきました!」
  • Tさん:「これから半年、多くの困難があるでしょうが、できる限り自分の頭で考えていくようにしましょう。私がしっかりサポートします。Sさん頑張ってください!」

 得心がいったSさんは、Tさんに相談しながら各中間目標に期限を書き込み、ついに実行計画を作り上げました(図表3)。

 この後Tさんは、上司のK課長にSさんとのやりとりを報告しました。

  • Tさん:「まず私が、『詳細ヒアリング→社内体制の構築→競合分析と魅力的な提案作成→プレゼン→開発・試作・改良→仕様決定・詳細見積→契約締結→納品・陳列』という流れをS君に説明する方法もあったと思います。しかし今回は、S君にできるだけ自分で考えさせるようにしたので、少し時間がかかってしまいました。」
  • K課長:「もし君がその定石の解説から始めていたら、S君はどうなっていたろうか? たぶん自分で考え続けることは難しかったのではないか。
    人に教わって鵜呑みにするのと、自分で考え抜くのでは、理解度がまったく違う。」
  • Tさん:「自分で考えたことで、S君は自分で打開策を見つけられるようになりました。
    今後の取り組みは大いにはかどるように思います。」
  • K課長:「その通りだ。ノウハウを覚えるだけでは限界がある。
    営業で最も大事なことは、今、何が課題かを自分で見つける思考力だ。
    この力があればどんなときでも冷静に対処できるに違いない。営業全体にとっても貴重な戦力アップになる。
    これからも引き続きS君をうまく指導してやってほしい。」
  • Tさん:「私たち営業1課の方針が、全体の底上げにつながることがよくわかりました。私も責任をもって取り組みます。」

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 いかがでしたか? K課長によると、Sさんは困難な仕事でも効果的に打開策を見出す手法を身につけたとのことです。
 次回はその手順と背景にある大切な考え方を整理したいと思います。

※本稿は、エリヤフ・ゴールドラット博士が提唱された「制約条件理論(TOC)」の思考プロセスを参考にしています。

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