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高年齢者の雇用保険と保険料の徴収

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高年齢者の雇用保険と保険料の徴収

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第31回 ホワイト企業人事労務ワンポイント解説   

Q

当社ではこれまで65歳を雇用年齢の上限としてきましたが、昨今の人手不足の状況から一部の社員については65歳以降も雇用を継続することとしました。
従来、65歳以上の高齢者については雇用保険料が免除されていたと思いますが、今後は徴収されるようになると聞きました。どのように変わるのでしょうか。

A

2018年の我が国の15~64歳の「生産年齢人口」は前年比51万2千人減の7545万1千人。今後も生産年齢人口の減少は不可避で、政府は経済や社会保障の担い手を増やすために、70歳までの就業機会の確保を企業の努力義務とする高年齢者雇用安定法など、関連法案を閣議決定しました。そこで、今回は高齢者(65歳以上)の雇用保険に焦点を当てて解説します。

65歳以上も雇用保険の被保険者に(平成29年1月から)

 雇用年齢が伸びる中で雇用保険については3年前の2017年1月に改正法が施行されました。それ以前の雇用保険では、年金が支給開始される65歳までが保険制度としての保障期間と考えられていて65歳を超える高齢者が新たに就職した場合には、雇用保険の適用はありませんでした(65歳以前から同一の事業所で継続して働いている場合のみ雇用保険の適用が継続)。

 改正後は年齢上限が撤廃され65歳以上の雇用者は「高年齢被保険者」となり、すべての年代の労働者が雇用保険の適用対象になりました(1週間の所定労働時間が20時間以上、かつ31日以上の雇用見込みの者が対象)。
 高年齢被保険者が離職した場合には雇用保険から「高年齢求職者給付金」を受け取ることができます。また、介護休業給付金(在職中に限る)や教育訓練給付金(在職中又は離職日から1年以内に開始した教育訓練)の給付対象になります。

 会社が資格取得手続きをし忘れると、これらの給付金を受けることが出来ず後日トラブルになりかねません。現在65歳以上の労働者が勤務していながら雇用保険の資格手続きが漏れている場合には、遡及処理を含め、速やかに資格取得届の提出を進めてください。
 高年齢求職者給付金は雇用保険の加入期間が1年未満の場合は基本手当日額30日分、1年以上の場合50日分の一時金が支給されます(離職後にハローワークで求職の申込みと失業の認定を受けてからの受給となります)。

<高年齢求職者給付金>

算定基礎期間
(雇用保険加入期間)
支給額
(基本手当日額の)
1年未満 30日分
1年以上 50日分

 例えば、離職前の給与月額が24万円(交通費等込み)だった場合、日額の給与は8,000円となり、失業給付の計算の基礎となる基本手当の日額は約5,420円になります。被保険者期間が1年以上ある高齢被保険者が離職して給付申請を行った場合にはその50日分の約27万円の高年齢求職者給付金が受けとれることになります。

 65歳以前に受け取る失業給付の場合と異なり、65歳以上で受け取る「高年齢休職者給付金」は厚生年金との支給調整はなく年金と給付金が両方受取れるメリットがあります。また、65歳以降で離職と就職を繰り返した場合、支給要件を満たせば、複数回受け取ることも可能です。

雇用保険料徴収は令和2年4月から

 2017年1月からの雇用保険適用拡大により、高年齢被保険者も原則、雇用保険料の徴収対象になりましたが、経過(緩和)措置により2019年度末までは雇用保険料が労使共に免除されていました。しかし、この保険料免除の経過措置が本年3月で終了し4月から雇用保険料の徴収が開始されます。
 それでは、65歳以上の被保険者の雇用保険料の給与天引きのタイミングはどうすればよいでしょうか?

 雇用保険を含む労働保険料の申告においては「保険料算定期間(当年4月1日から翌年3月31日)に支払いが確定した賃金が参入の対象になる」とされています。例えば、毎月20日締め月末支払いの会社の場合は4月末支払いの給与は3/21~4/20の労働分ということになり3/21~3/31の労働は当年ではなく前年度に支払いが確定した賃金ではないかとの疑問が生じます。
 しかし、結論からいうと賃金は「締め日をもって支払いが確定した」と考えるのが一般的で、4月末支払い分(締め日4/20)から翌年の3月末日支払い分(締め日3/20)までが当該年度の労働保険料の算定期間の対象となります。

(例)高年齢被保険者の雇用保険料の控除

  • 末日締め翌月10日支払い → 5月10日支給の給与から控除
  • 20日締め月末支払い → 4月末日支給の給与から控除

 適用される雇用保険料率について

 失業等給付に係る雇用保険料率は2017年度からの時限措置により引下げられていて一般の事業の場合、労働者の負担は賃金総額の3/1000となっています。この時限措置は3年間とされていましたが令和2年度も継続される見通しで次表の料率がそのまま有効になります。

<雇用保険料率> 

事業の種類 本人負担 事業主負担(二事業分) 合計
一般の事業 3/1000 6/1000(3/1000) 9/1000
農林水産等 4/1000 7/1000(3/1000) 11/1000
建設の事業 4/1000 8/1000(4/1000) 12/1000

 例えば、年収300万円の65歳以上の一般の事業で働く高齢労働者の場合には年間で9000円(750円/月)程度の雇用保険料負担が必要になる計算です。
 この場合、事業主負担は雇用二事業分を含め倍額の年間18,000円程度になり、65歳以上の高齢者の社員を多数雇用している企業では、令和2年度以降の雇用保険料の事業主負担の増大が見込まれるので、その点も留意しておく必要があります。

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