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表彰及び懲戒ー1ー

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表彰及び懲戒ー1ー

著者・米田徹氏のプロフィールはこちら

賢い会社の就業規則・人事規程作成のポイント(34)

Q

「表彰及び懲戒」はセットで規定されることが多いですね。

A

ほとんどの企業では「懲戒」についての規定は注意深く検討して作成すると思いますが、それに反して「表彰」の部分はシンプルなものになっている場合が多いと思います。

 「懲戒」だけではバランスが悪いので信賞必罰でとりあえず「表彰」も入れておこうということも多く、不熱心で規定は定めても実際に表彰を行ったことはないという中小企業も少なくないかもしれません。

 しかし、従業員の「やる気」を引き出していくためには、賃金等の金銭面での待遇も大切ですが、「頑張りを認める」ことも 大切だと考えられます。

 一般的には大人になってから「表彰される機会」は少ないと思いますので、会社に認められ表彰される機会が多くなれば従業員の意識も大きく変わっていくことが期待できます。
 企業はもっと表彰制度を充実させ、運用を活発にすることを考えても良いと思います。

Q

当社の就業規則でも「業務上有益な発明、改良または工夫・考案があったとき。」とか「永年誠実に勤務したとき。」に表彰すると規定していますが、一般的な表現にとどまっていて曖昧ですし表彰はあまり活発とは言えません。

A

就業規則では、どういう場合に表彰されるか等できるだけ内容を具体的に規定したいですね。

 例えば、
1.業績表彰...... 業務上有益な開発や改良または工夫のあったもの、各部署で個人目標を達成したもの、または会社に対する貢献度が極めて高いと判断されたもの。毎年、所属長からの推薦により役員会で決定する。
2.功労表彰......... 防災、衛生、事故防止等で貢献度が高いもの。毎年、所属長からの推薦により役員会で決定する。
3.永年勤続表彰...10年間、20年間、30年間継続勤務したもの。
といったように表彰のイメージがわきやすくする、また、毎年、創立記念日とか表彰の日を決めて賞状やある程度多額の見返り(賞金)をするのはどうでしょうか。

Q

いろいろと検討の余地がありそうですね。企業は大切な戦力である労働者のモチベーションを高めることが必要ですが、その際、表彰制度の充実は有効だと思います。
さて、表彰制度は会社毎に個別の考え方・判断になると思いますのでこのくらいにして、「懲戒」規定について教えてください。そもそも「懲戒」とはどういう意味を持つのでしょうか?

A

懲戒は、企業秩序に違反した社員が行った行為に対する制裁罰で使用者側から一方的に行うものです。

 本来、法的には労働契約は労働者と使用者は対等な立場にたって合意するはずですから、使用者が対等なはずの労働者に対しそのような趣旨の制裁罰を一方的に行うことが当然にできるのかという疑問が生じます。

 この点について裁判例などを見ると、労働者は労働契約を締結したことによって「労務の提供義務」を負うのと同時に「企業秩序維持義務」を負っており、使用者は労働者が企業秩序違反行為を行った場合には制裁罰として懲戒を課すことができるとしています。

 そのうえで、最高裁判決では懲戒権について、「使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則において懲戒の種類及び事由を定めておくことを必要とする。」としていますので懲戒処分をする場合には就業規則にその根拠がなければならないと考える必要があります。

 労基法でも「表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項」を就業規則に定めなければならないと規定しています(労基法89条9項)。

Q

社員の企業秩序違反を咎めるためには就業規則の「懲戒」規定が必要というわけですね。今まで「懲戒」することについて、そこまで考えたことはありませんでした。

A

「懲戒」というのは企業が行う通常の業務命令や手段とは異なります。

 以前(第30回)説明した「普通解雇」などとも根本的に異なる特別の制裁罰なので、使用者が労働者に対し「懲戒処分」を行うのであれば、その事由と手段を就業規則に明記する必要があるというわけです。
 会社が根拠もなく安易にできると考えるのは間違いなのです。

 それから、「懲戒」については労働契約法に次のような規定があります。

労働契約法(懲戒)
第十五条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

 この条文の読み方ですが、「使用者が労働者を懲戒することができる場合において」という意味の中には、就業規則等に懲戒の種類と事由が定められていることが前提にされていると考えられます。
 そして、そのような場合であってもその行使が当然にできるわけではないということです。

Q

たとえ社員に非があったとしても、度が過ぎた懲戒処分は権利の濫用で無効という意味でしょうか。
ここで「客観的に合理的な理由」とか「社会通念上相当」という言葉は良く耳にする気がします。

A

はい、労働契約法の16条(解雇)でも同様な言葉がでてきます。

 通常の普通解雇にしろ、懲戒処分にしろ、「客観的に合理的な理由」と「社会通念上相当」という二つの基準を満たしていなければ権利の濫用で無効ということになってしまいます。
 ただ、会社業務の中で起こる「懲戒」の場合はその種類も多いですし、程度も様々でしょうから、すべての行為を就業規則の中に具体的に記載することは困難です。

 そこで労契法15条では「労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして」という一般的・包括的な言い方をしているのだと考えられます。

Q

懲戒処分には軽いものから重いものまで種類がありますね。就業規則に明記が必要なことはわかりましたが、具体的にはどのように規定すべきなのでしょうか。

A

一般的には、懲戒は「けん責(始末書の提出)」から「懲戒解雇」まで種々の段階があるはずです。

 いずれにしても規程に定めのない懲戒処分を行うことはできませんので、しっかり規定しておく必要があります。

 詳細は、次回に検討しましょう。

今回のポイント

  • 表彰と懲戒(制裁)はセットで規定されることが多く、就業規則の相対的必要記載事項になる。
  • 労働者の仕事へのモチベーションを高めるために「表彰制度」の活用・充実は重要である。
  • 労働者は労働契約により「労務の提供義務」を負うのと同時に「企業秩序維持義務」を負う。
  • 使用者は労働者が企業秩序違反行為を行った場合には制裁罰として懲戒を課すことができるが、その際、就業規則等の定めが必要になる。
  • 客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でない「懲戒」処分は権利の濫用で無効となる(労契法15条)。

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