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災害補償

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災害補償

著者・米田徹氏のプロフィールはこちら

賢い会社の就業規則・人事規程作成のポイント(33)

Q

今回は「災害補償」について伺います。ある就業規則の本を見たところ、「安全衛生及び災害補償」という章立ての中に次の短い規定が一条あるだけです。これだけで特に問題はないのでしょうか?

(災害補償)
第×条 従業員が業務上の事由又は通勤により負傷し、疾病にかかり、又は死亡した場合は、労働基準法及び労働者災害補償法に定めるところにより災害補償を行う。

A

災害補償については労働基準法、及び労災保険法で災害補償に関する定めがおかれているので、法律上の規定と会社の補償内容が同じということであれば、極端に言えば、 就業規則に全く規定がなくても問題はないことになります。

 上記の条文だけしか規定がないのであれば、これは法律上の規定の範囲で補償するという意味になります。

 災害補償に関することは、就業規則の相対的必要記載事項になっていて、法律以上の上積補償を行う場合には、その内容を詳しく規定する必要があります。

Q

わかりました。ところで業務中のケガについては労災保険があるので、会社としては基本的にはその補償を使えば足りると考えているのですが、上記の規定例で労基法と労災法が併記されているのはどのように考えればよいのでしょうか?

A

労基法では労働者が業務上負傷した場合の災害補償が定められています(労基法第8章「災害補償」)。

 この災害補償は無過失責任といって会社には非がない場合でも、災害の発生が「業務上」のものであれば使用者は労働者に対してその補償(労基法で定める最低補償)をしなければならないのです。

 業務中の負傷といえども、労働者に過失があれば補償は不要(又は減額)という考え方もできるわけですが、労働中の災害は企業の営利活動に伴い発生する現象ですから、企業活動で利益を得ている会社に損害の補償をさせ、労働者を保護すべきというのが日本の法律の考え方です。

 そこで労基法上で定められた災害補償がきちんと、且つすみやかに履行されるために国は労災保険の保険者となって災害補償を行っています。
 個人営業の農林・畜産・水産でごく小規模なものを除き、労災はあらゆる事業者に加入が義務付けられています。

 実際には、労災保険では労基法の補償(最低補償)を上回る補償が行われています。
 例えば労基法での休業補償は平均賃金の60%ですが労災保険では80%であるとか、労災では傷害補償の一部が年金化されていて補償が充実しています。

 ですから、基本的には、「使用者は労災保険法の定めるところにより災害補償を行う。」と記載しても同じことになりそうですが、実は労災では業務災害で休業する場合の最初の3日間は待期期間となり休業補償が行われません。

 したがって、この3日間については使用者側で平均賃金の60%以上の休業補償をしないと労基法で定める補償を満たさなくなってしまうので注意が必要です。

Q

なるほど、それで就業規則では「労基法並びに労災法に基づく」と規定しなくてはいけないわけですね。
ところで、この休業補償の3日分ですが、以前、当社の社員が業務中に負傷した際、本人の100%過失で会社に責任はなく、その場合でも会社が支払う必要があるのかといった議論が社内であったのですがいかがでしょうか?

A

これは先ほども説明したように業務中のケガであれば無過失責任で会社が補償する必要があり必ず支払わなければなりません。

 なお通勤上のケガ等についても労災保険から必要な給付が行われますが、通勤災害については労基法上の災害補償の対象外ですから最初の3日間の休業補償については会社でこれを支給する義務等は生じません。

 それから、通勤災害は業務上の災害ではないので療養のため休業中の労働者を解雇してはならないという解雇制限規定(労基法19条1項)や年休の出勤率の算定に関する規定(注:業務災害で休業した場合には出勤したものとして取扱う必要がある)の適用は受けないことになります。

Q

そういえば業務災害で負傷し療養中の社員には解雇制限がありましたね。
そうすると業務災害を負ってずっと働けない休業状態が続いた場合は会社に長期間留まることになると思います。そのような場合、「打切り補償」を行えば解雇が可能になると聞いたことがありますが、これはどういうことですか。

A

労基法では業務災害で療養補償を受ける労働者が、療養開始後3年を経過しても負傷又は疾病が治らない場合には、平均賃金の1,200日分の打切り補償を行えばそれ以上の補償を行わなくても良いと規定しています。そして打切り補償を行えば、解雇制限もなくなるので解雇が可能になります。

 通常、そのような長期療養中で治癒していない労働者の場合、労災保険から傷病補償年金を受けることになると思います。
 療養の開始後3年経過時点(又はその後)で傷病補償年金を受けている場合には、労基法で定める打切り補償を支払ったものとみなす(労災法19条)と規定されていますので、その時点で解雇が可能になります。

 このような打切り補償についても、労基法、労災法の規定範囲になります。
 会社で別途、「特別見舞金」のような上積み補償をする場合以外は、就業規則に規定する必要は特にはありません。

Q

上積補償について伺います。当社では法定以上の上積補償をする場合がありそのことが就業規則に定められています。そのような場合の規定上の注意点を教えてください。

A

労働災害についての補償は労災保険で相当範囲がカバーされるので、通常はそれ以上の災害賠償責任が追及されることは稀です。

 貴社のように上積補償を創設するのは社員に対する福利厚生を厚くすることを目的にしているのだと思います。
 それによって社員全体のモチベーションやモラル向上を狙いとしていると考えられます。

 結局は任意の上積なので、設計は全く自由ということになります。
 上積補償を行うか否かの認定基準は会社独自に決めてもかまいませんが、通常は労基署の労災認定基準に合わせる場合が多いのではないでしょうか。

Q

業務災害では会社が被災労働者やその遺族から多額の損害賠償を求められるような事件が新聞報道等されますが上積補償との関係はどのように考えられますか?

A

それは規定のしかたにも関係しますね。
一般的には上積補償による給付が支払われる場合には、その価額の限度で企業は損害賠償責任を免れることができると考えられます。

 その点、「従業員やその遺族が、上積金を受領した場合には、その原因になった業務災害に関する民事損害賠償権を放棄しなければならない。」といった規定もみかけますが、上積補償の金額が十分でなければこのような規定があっても慰謝料等の民事損害賠償等を提訴される可能性はあると思います。

 実務上は、十分な上積金が支払われるのであれば、その際、民事損害賠償請求権を放棄する旨の念書をとることなども有効でしょう。

それでは次回は、「表彰と懲戒」についての規定を検討しましょう。

今回のポイント

  • 災害補償については労基法、及び労災保険の範囲内であれば、就業規則に事細かな規定を置く必要はない。
  • 労災保険では労基法以上の補償が行われるが、業務災害の場合の最初の3日間(待期期間)は例外で労災保険からの給付はなく、事業主が平均賃金の60%以上の支払い負担をしなければならない。
  • 社員に対する福利厚生を厚くする目的で上積補償を創設する場合には、就業規則にその内容を規定する必要がある(相対的必要記載事項)。
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