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月60時間超の時間外労働割増賃金率の引上げ

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月60時間超の時間外労働割増賃金率の引上げ

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第66回 ホワイト企業人事労務ワンポイント解説   

Q

猶予されていた中小企業の月60時間を超える残業の割増賃金率引上げ(50%以上)がまもなく開始されると聞きました。
当社(中小企業)は週休2日制で土日の休日勤務には35%の割増賃金を支払っています。時間外労働時間の算出では休日労働は除外されると思いますので、月~金までの時間外労働時間が60時間を超えた場合を考慮すれば良いのでしょうか?
割増賃金の代わりに代替休暇を付与する制度があると聞きましたが、概要を教えて下さい。

A

労働基準法が改正され、「月60時間を超える時間外労働の割増率が50%以上」に引上げられたのは2008年(平成20年)のことでした。大企業では2010年4月1日から施行されていますが、猶予されてきた中小企業にも、いよいよ本年(2023年)4月1日から引上げが義務づけられることになります。
就業規則(給与規程など)には、まだ、この内容を反映していない中小企業も多いと思われますが、4月からの全面施行に合わせ、60時間超の時間外労働が発生する可能性がある会社では就業規則の改定が必要になります。

 

改定のポイント(時間外労働と休日労働の違い等)

 法定労働時間(原則、週40時間、1日8時間)を超える時間外労働に対して、使用者は25%以上の割増賃金を支払わなければならないのは皆様ご承知の通りです。

 今回、中小企業にも適用される改正とは、「1カ月60時間を超える法定時間外労働に対して、使用者は50%以上の率で計算した割増賃金を支払わなくてはならない。」というものです(図参照)。

出典:厚生労働省 中小企業庁 「中小企業の事業主の皆さまへ 2023年4月1日から月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」 

 また、深夜労働(22時から翌朝5時まで)との関係では、月の60時間を超える時間外労働を深夜時間帯に行わせた場合には、「時間外労働割増50%+深夜割増25%=75%」以上の支払が必要になります。

 さて、時間外労働には休日労働(35%以上の割増賃金支払が必要)は含まれませんが、ここでの休日労働とは法定休日(週1日、又は4週に4日)に働かせた場合が対象になります。質問者の会社は土日を会社休日としていますが、法定休日を日曜日とすれば、土曜日に勤務した時間は法定外休日労働となり(法定)休日労働時間ではなく時間外労働時間として取り扱わなければならない点に注意が必要です。

具体的な算出例(以下、厚労省リーフレット図を加筆)

出典:厚生労働省 中小企業庁 「中小企業の事業主の皆さまへ 2023年4月1日から月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」

 労働者が上図カレンダー(数字は時間外労働時間数)で示すように勤務した場合、起算日(毎月1日)からの時間外労働時間数を累計して60時間を超えた時点(図では24日以降の緑色部分)からの合計10時間分については50%以上の割増賃金の支払が必要になります。なお、質問者の会社では土曜日の勤務に35%の割増賃金を支払う規定になっているため、合計13時間分(6日、13日、20日の土曜日の労働)と8時間分(日曜日の労働)は35%の割増賃金を支払うことになります。

代替休暇の規定を適用することも可能

 代替休暇とは、1カ月に60時間を超えて時間外労働を行わせた場合、労使協定により、法定割増賃金率の引上げ分の割増賃金の支払いに代えて、有給の休暇を与えることができる制度です(原則の25%割増率の部分については休暇に替えることはできません)。

 代替休暇の時間数は以下で計算します。

代替休暇の時間数 = 1カ月60時間を超えた時間外労働時間数 × 換算率(通常は0.25)

 ここで換算率は通常の時間外労働の割増率(1.25)と60時間超で支払うこととされている割増率(1.5)の差分となります(右図参照)。

 例えば、労働者が前ページ図のように勤務した場合、60時間を超えて労働した合計10時間分について、代替休暇を設けることができ、上式から代替休暇の時間数は(10時間×0.25=)2.5時間となります。

 代替休暇の単位は半日又は1日とされているので、この場合には、切上げて半日(又は1日)休暇を与えることで、60時間超えの25%分の割増賃金支払が不要となります。

 代替休暇制度を導入するためには、労使協定で、①代替休暇の時間数の具体的な算定方法、②代替休暇の単位(1日又は半日)、③休暇を与えることができる期間(2カ月以内)を定めることが必要です。なお、労働基準監督署への届出は不要です。

 代替休暇制度の導入は長時間労働した社員の健康を保持する観点で有用性があると考えられます。ただし、実際に代替休暇を取得するか否かは、個々の労働者の意思に委ねられていて、会社が代替休暇の取得を強制することはできない点に注意が必要です。

 会社は、今回の法施行にあわせ、残業が多い社員への健康管理も含めた注意喚起など、長時間労働を抑制する取組みについて確認する機会にしてください。



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