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副業・兼業に関する情報の公表と通算時間管理

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副業・兼業に関する情報の公表と通算時間管理

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第65回 ホワイト企業人事労務ワンポイント解説   

Q

当社は就業規則で「他の会社等で勤務してはならない。」と副業・兼業を禁止にしていていますが、このような扱いは不適切ではないかとの指摘を受けました。問題があるでしょうか。
もし、副業を許可制にして承認した場合、社員の労働時間を副業先の会社と通算して管理する必要があると聞きました。具体的にはどのように行えば良いのでしょうか?

A

副業・兼業を希望する労働者は年々増加傾向にあり、副業をする人も増えつつあります。足りない収入を補う「かけもち」のイメージではなく、自分のスキルを高めてキャリアに生かす副業が近年のトレンドと言えます。
政府も働き方改革以後、副業・兼業の推進に力を入れており、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(以下、ガイドライン)が2018年1月(初版)、2020年9月(改定)、そして2022年7月(二度目の改定)に相次いで公表されています。

 

副業・兼業を一律に禁止することは問題あり

 質問者の会社では、副業・兼業を一律に禁止しているようですが、これは少々問題がある取扱いということになります。

 裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であり、例外的に企業が副業・兼業を禁止又は制限することができる場合として以下が認められています。

1. 労務提供上の支障がある場合
2. 業務上の秘密が漏洩する場合
3. 競業により自社の利益が害される場合
4. 自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合

 したがってガイドラインにおいても、就業規則では、原則として、「労働者は副業・兼業ができること」、「例外的に上記①から④のいずれかに該当する場合には、副業・兼業を禁止又は制限できることとしておくこと等が考えられる。」としています。

副業・兼業の許諾についての公表を推奨

 さて、直近のガイドライン改定(227月)の内容は、それほど大きなものではありませんでしたが、以下の文言が追加されています。

 企業は、労働者の多様なキャリア形成を促進する観点から、職業選択に資するよう、副業・兼業を許容しているか否か、また条件付き許容の場合はその条件について、自社のホームページ等において公表することが望ましい。

 「公表することが望ましい」としているだけですから、法律で公表を義務づけるものではありません。しかし、特に有能な人材を中心に副業・兼業が可能な企業を選択する傾向にあると言われており、企業が副業・兼業の許可状況を公表することは、優秀人材の獲得に資すると考えられます。 

 公表方法については、厚労省の「副業・兼業の促進に関するガイドラインQA」で以下のような説明が補足されています。 

・「副業・兼業」の範囲……他の会社に雇用される形態以外に事業主になって行うものや請負・委託・準委任契約により行うもの(フリーランス、独立、起業等)によるものについても公表が考えられる
・公表事項……副業・兼業を許与しているか否か、また条件付き許容の場合はその条件について
・公表方法……自社ホームページ等による公表が望まれる。会社案内(冊子)や採用パンフレットも考えられる

 副業・兼業について条件を設けて許容する場合の公表例としてガイドラインでは以下のような例が挙げられています。

【公表例】弊社では、従業員が副業・兼業を行うことについて、原則認めています。ただし、長時間労働の回避をはじめとする安全配慮義務、秘密保持義務、競業避止義務及び誠実義務の履行が困難となる恐れがある場合には、認めていません。

 

 

労働時間の通算の基本的な考え方について

 法律では、「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。(労基法381項)」とされていて、事業主が異なる場合も含まれることになります。 

 したがって、「雇用型」の副業・兼業を許可した場合、自社と副業先の労働時間を通算して管理しなければなりません。その点、ガイドラインでは他社の労働時間については、労働者からの申告等による把握が基本としていて、客観的資料(タイムカード等)まで求められるわけではありません。 

 その上で、労働時間の通算では以下の順序があり、法定労働時間を超えて働かせた事業主には割増賃金の支払い義務が生じます。 

・まず労働時間の締結の順に所定労働時間を通算する
・次に所定外労働時間の発生順に所定外労働時間を通算する

 例えば、自社の所定労働時間が18時間で先に労働契約を結んでいれば、自社での所定内労働に対して割増賃金は発生しません。一方、副業先で同一日に所定労働時間2時間の副業をする場合、副業先での所定内の勤務時間は法定労働時間(18時間)を超えるので、副業先の事業主は割増賃金(通常賃金の125%以上)を支払わなければなりません。 

 労働時間の通算に関しては、働き方改革で導入された「労働時間の上限規制」を考慮する必要も生じます。すなわち、自社と副業先の労働時間とを通算して、以下を守らなければなりません(いずれも臨時的な特別の事情があって「特別条項」有りの36協定を労使が合意した場合)。

・月100時間未満(時間外労働と休日労働)
・2~6カ月平均が全て1月あたり80時間以内(時間外労働と休日労働)

 なお、年間の時間外労働時間の上限720時間、月45時間を超えることができるのは年6カ月まで等の規制は個々の事業場における延長時間規制なので副業先の労働時間と通算する必要はありません。 

 企業は以上のような基本的事項を踏まえた上で、副業・兼業を希望する社員には多様なキャリア形成を図ることを促進する観点で、業務に支障がない範囲で副業・兼業を認めることが、今後の望ましい対応と考えられます。その際、長時間労働にならないよう、企業と労働者との間で十分なコミュニケーションをとり、労働者の健康・福祉を確保するよう努めることが大切と言えます。 


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