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賃金上昇トレンドの本質を見極める(ブックレット66号巻頭言)

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賃金上昇トレンドの本質を見極める(ブックレット66号巻頭言)

株式会社プライムコンサルタント代表  菊谷寛之
(2023年2月21日(WEB開催)春季定例研究会 ブックレット「はじめに」より)

賃金上昇トレンドの本質を見極める(34)

 40年ぶりの物価上昇を背景に、昨年後半から賃金上昇トレンドに転換する企業の動きが目立ってきた。経団連も今年は、「物価動向」を特に重視しながら、企業の社会的責務として賃上げを積極的に呼びかける異例の政策表明を行った。

 物価が上がれば賃金も上がらないと、労働者の生活は苦しくなる。当然といえば当然だが、長年のデフレ賃金政策が続いた後だけに、いまさらという感は否めない。

 そもそも個々の企業はどのようにして雇用や賃金を決めていくのだろうか。

 近代経済学の限界効用理論によれば、完全競争市場のもとで、利潤を最大化しようとする企業は次のような単純な理由から雇用や賃金を調整する。

  (+)賃金コストを追加して労働者を増やすほうが、より大きな追加収入を得られると判断したときは人を増やして利益最大化を狙う。労働市場がタイトになれば、人の採用や離職防止に備えて賃金を上げる。この動きはこれ以上賃金を上げ、雇用を増やしてもメリットがない、または人手不足で採用できないという限界まで進む。

 (-)逆に労働者を減らして賃金コストを減らすほうが、収入の減少以上にメリットが大きいときは、あえて人を減らす。人を採る必要がないので、賃金も上げない。この動きは、これ以上労働者が減ると損失が出るという限界まで進む。

 前者(+)は、企業や経済が成長するときの常態といえる。後者(-)は景気後退の局面や、高成長から低成長に移行するときに起きることである。

 健全に成長する経済であれば、(-)雇用を減らす企業・業種から、(+)生産性を高め雇用を増やす企業・業種に労働力が移る局面で、後者の賃金上昇が賃金の世間相場を引き上げ、勤労者の実質消費と国富の増加を支えるはずであった。

 しかし日本では、2000年代初頭、バブル崩壊後の低成長期に台頭した「新自由主義」が大きな歪をもたらす。労働の規制緩和で低賃金の非正規雇用が増加する一方、投資家や株主の発言権が強まり、賃金や研究開発投資が必要以上に抑制・削減された。結果、(+)生産性を高め雇用を増やす企業は莫大な利益を積み上げ、(-)生産性が低く雇用を減らす企業も利益を確保し延命したものの、経済全体では人的資源を損ね、市場の購買力や潜在成長力を弱める悲劇的な「合成の誤謬」を招いた。

 やるべきことは別のところにあった。経済が成熟化して競争が激化し、賃金が高くなればなるほど、単に人を増やせば収益が増えるという成長機会は限られてくる。

 そこでは賃金は、単に人を雇い生活を支える最低限のコストではなく、新たな顧客価値と追加収入の実現という課題に、組織的にチャレンジし成果を上げることができる、自律的な人材を育成する「人的資本投資」として再定義される。そのためのマネジメントと報酬、エンゲージメントの仕組みに成功する企業が成長を遂げる。

 今年は、物価上昇をカバーする生活防衛としての賃上げとともに、人的資本に対する投資効果(=報酬価値)を探求する「構造的な賃上げ」を試す節目の年となろう。そのような積極的な賃上げの意味づけができない企業や、賃上げを吸収する力がない企業、そもそも報酬価値の向上に否定的な企業は、近い将来も危ぶまれる。

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