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社員が死亡した際の会社手続きについて

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社員が死亡した際の会社手続きについて

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第61回 ホワイト企業人事労務ワンポイント解説   

Q

当社は従業員数約50名で機械製造業を営んでいます。先日、勤続約20年の40歳代の男性社員が自宅で就寝中に心筋梗塞を起こし急逝しました。直近の会社の健康診断でも異常はなく、業務起因性は考えられません。家族は、奥さんと子供(中学生)の3人暮らしだったとのことです。 突然の事で、給与や退職金の支払いなど、どのように扱えば良いのか戸惑っています。会社が行わなければならない実務についてご教示ください。

A

起きて欲しくはありませんが、在職中の社員が私傷病や事故で不幸にも亡くなってしまうことは会社実務の中では比較的多く起こりえることといえます。ただ、大企業とは異なり中小企業の場合、ほとんどの実務担当者は遭遇するケースは比較的少ないと思われるので、以下、そのような事態が発生した際、会社が行わなければならない実務について整理してみましょう。

 

社会保険、雇用保険関係の手続き

 従業員が死亡した場合、死亡日をもって退職となります。会社の就業規則の退職事由には、「自己都合退職」や「定年」などと並んで、「死亡したとき」といった定めがあるはずです。通常の社会保険・雇用保険の資格喪失手続きを行うことになります。保険料については、社会保険(健康保険、厚生年金保険)は通常の退職と同様に資格を喪失した日の属する月の前月までの保険料を納める必要があります。

 資格の喪失日とは退職日(死亡日)の翌日になるので、例えば、死亡日が月末日の場合、翌月1日が資格喪失日となり死亡した月までの保険料を徴収することになります。一方、月の途中で死亡した場合は、死亡日の属する月の前月までの保険料を徴収します。

 雇用保険については、通常の退職と同じように退職日(死亡日)までの勤労に対する給与の総額に雇用保険料率を乗じて保険料額を決定し徴収します。

 次に、会社に慶弔見舞金の制度などがあれば、社内規程に沿って遺族に見舞金を支給します。また、健康保険に加入中の従業員が死亡した場合、養われていた家族(被保険者に生計を維持されていた者であれば、被扶養者で無くても可)に埋葬料が5万円(定額)支給されるので、会社はご遺族(今回は奥様)に支給申請のご案内をしてください。

所得税の控除には要注意

 さて、死亡した従業員の給与支払における所得税控除の扱いは通常の退職者の場合と異なるので注意が必要になります。

 すなわち、死亡日後に支給期(賃金支払日)が到来する賃金は、死亡した従業員の「給与所得」ではなく、遺族が受け取る「相続財産」となり相続税の対象になります。例えば20日締め25日支払の会社で、従業員が3月15日に亡くなった場合、2月21日~3月15日までの3月分給与は3月25日が支給期(支払日)となり、死亡日後なので、相続人が受け取る相続財産となり、給与総額から所得税を控除する必要はありません(以下は、国税庁ホームページに掲載の参考図です)。


出典:国税庁ホームページ

 なお、従業員が死亡した場合は、年の途中でも年末調整を行う必要があります。上述の例(3月15日死亡)であれば、2月分の給与までを年間所得として、相続人が死亡した従業員の確定申告(いわゆる「準確定申告」)行うことになります。したがって、死亡した社員の所得金額を確認するための資料として、相続人に源泉徴収票(「死亡退職」欄に「○」を表示)を交付してください。

退職金の支払い、及び遺族年金の手続きについて

  退職金の支払いについては会社の退職金規程を確認する必要があります。社員死亡時の支払先について特に定めがない場合には、原則、相続財産として民法上の相続人に支払われることになります。今回冒頭のケースでは相続人は妻と中学生の子となり、それぞれに2分の1ずつが支払われることになると考えられます。

 しかし、多くの企業では「死亡退職金の支払いは、労働基準法施行規則42条から45条の定めによる。」としているケースが一般的です。退職金は、死亡した従業員と生活を一体としていた者の生活を優先して支払うとする趣旨の規定で、民法上の相続人の場合とは以下のような点が一部異なります(注:中小企業退職金共済制度を利用している場合も以下と同様の扱いになります)。

①配偶者がいれば子は全く支給を受けない
②内縁(事実婚)の配偶者を含む
③直系血族間では、孫よりも父母の優先順位が先になる

 退職金の性格も相続財産ではなく「遺族固有の権利」と考えられるため、仮に亡くなった社員が多額の借金を負っていて、遺族が相続放棄を選択した場合でも、退職金は相続財産の処分にはあたらず、遺族が退職金を受け取ることが可能になります。

 

 

 最後に、ご遺族の今後の生活保障の面で重要になるのが遺族年金ですが、長期勤続中の社員が死亡した場合、生計維持関係にある妻には遺族厚生年金の権利が発生します。また、今回のケースでは18歳未満の子があることから、遺族厚生年金に加え遺族基礎年金の権利も同時に発生することになると考えられます。遺族年金の申請手続きについては、会社実務とは切り離して、ご遺族には年金事務所などに問い合わせて、適切な請求手続きを取るようにアドバイスするとよいでしょう。

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