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正社員登用制度と運用上の留意事項について

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正社員登用制度と運用上の留意事項について

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第58回 ホワイト企業人事労務ワンポイント解説   

Q

当社は関東圏内各所に複数店舗を持つ雑貨卸売・小売業を営む中小企業です。今後、退職者が出る見込みのため正社員の募集を検討していますが、社内にパートタイマーや契約社員も多数おり、その中から正社員へ登用することも選択肢として考えています。 当社の非正規社員用の就業規則にも、「通常の社員への転換」規定が定められていますが、具体的には、どのような点に留意して進めたら良いでしょうか。

A

非正規社員を正規社員に転換する「通常の労働者への転換」は、パート有期労働法13条に定められている制度です。しかし、中小企業ではパート就業規則などに定められていても、転換の実績が乏しく形骸化している場合も多いと思われます。 昨年度から中小企業を含めすべての企業に「同一労働同一賃金」が求められることになり、裁判でも正社員登用制度の存在を評価する判決(メトロコマース事件、大阪医科薬科大学事件、他)がいくつか出ている状況です。正社員転換制度の構築・見直しを行うことは正規・非正規間の均等・均衡待遇の確保を図る「同一労働同一賃金」の観点からも意義があると考えられます。

 

「通常の正社員への転換(パート有期労働法13条)」とは?

 まず、パート有期労働法13条の内容を簡単に確認しておきましょう。この規定は平成27年のパートタイム労働法で追加されたもので、パートタイマーから通常の労働者(正社員など)への転換を推進するための措置を講じることが事業主に義務づけられました。その後、法改正により令和2年4月(中小企業は令和3年4月)からはパートタイマーに加えて、契約社員などの有期雇用労働者にも適用されることになりました。

 この、「通常の労働者への転換」の実務的な扱いとしては次の4つの措置のいずれかを実施することが事業主の義務とされています。

①正社員募集時における募集内容の周知
②正社員のポストの社内公募時における応募機会の付与
③正社員へ転換するための試験制度の構築
④上記以外の正社員への転換の推進措置(正社員登用のために必要な教育訓練制度の受講など)

 この中の措置では取組みやすい①を選択する事業所が多いと考えられます。すなわち、正社員を募集する際にその募集内容をパート等が見ることが出来るような状態にすればよく、実際にこれを見て応募してきた非正規社員を正社員に採用するか否かは事業所の判断に委ねられることになります。
 法的にはこれで法13条の義務を果たしたことになりますが、中小企業が①の措置と併用する形で③の試験制度構築による「正社員登用制度」を簡易的な形式で導入することも意義が大きいと考えられます。

正社員登用制度と運用上の留意事項

 正社員登用制度の構築や見直しに当たっては就業規則に定めがあることが重要です。規定する際には、応募資格(受験資格)が具体的で明確になっているか、試験等の実施方法、合否基準などが整っているかを確認してください。

 正社員登用制度の運用面での留意事項としては、受験資格や選考基準の透明性を確保して、応募者や今後応募を検討するパートタイマーなどに周知していくことが重要となります。例えば、受験資格について、「所属長の推薦があること」「人事評価がA以上の成績であること」といった基準が考えられますが、上司の主観に偏りがあったり、実態が伴わない形骸化した人事評価の場合には、適切な基準とはいえないことになります。

 したがって、「所属長の推薦」については具体的な要件(勤続○年以上で、役員会での承認が必要等)について、社内である程度の共通認識が得られるものであることが必要と考えられます。また、筆記試験やレポート提出を実施する場合には、「業務に関連する知識の確認」、「職場の改善点や正社員になって実現したいこと」といった具体的な課題を与え、試験結果についてのフィードバック(情報開示)に努めることが大切です。

 社内で非正規から正社員に登用される実績が示されれば、「頑張れば、正社員になれる」ということでパートタイマー等のモチベーションアップに繋がることが期待されます。しかし、応募者には処遇が上がるといった良い面だけでなく、それに伴って責任や負担を負うことを説明する必要があります。フルタイム勤務になること等に加え残業・休日出勤が課されたり、異動や転勤が伴う場合があるのであれば、きちんと説明して納得の上で応募してもらう必要があります。

 一方で、希望しても登用されなかった者からは、「やっている仕事はたいして変わらないのに、処遇が高くなるのはおかしい」といった不平不満が出て職場全体の雰囲気が害されるといったリスクも考えられます。したがって、登用後の正社員の職務の内容や責任の程度の違いについて、他の社員からもわかるように、登用前後で職務の内容や責任の重さを「変化させる」ことが会社の措置として重要です。

 

 

キャリアアップ助成金(正社員化コース)の活用

 正社員登用制度を導入する際には、キャリアアップ助成金の正社員化コースの助成対象になる可能性があります。この助成金の受給要件は変更される場合が多いので直近の内容の確認が欠かせませんが、令和4年度の制度の概要は以下となります。

【助成金の概要】雇用後6カ月以上3年以下の有期雇用労働者等を正社員に転換し、転換後の賃金(基本給と定額支給の諸手当の総額で賞与は含めない)を3%以上アップすると申請できる(事前にキャリアアップ計画の提出が必要)。
【支給額】①有期→正規 57万円/人、②無期→正規28.5万円/人  ※大企業は25%減
【正社員の要件(R4.10.1以降の正社員転換に適用)】同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用される労働者であって、「賞与又は退職金の制度」かつ「昇給」が適用される者

 このような助成金の活用も視野に入れた上で、貴社ならではの正社員登用制度の実施策を検討してください。

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