1. 賃金・評価などの人事コンサルティングならプライムコンサルタント
  2. プライム Cメディア
  3. WEB連載記事
  4. ホワイト企業の人事労務ワンポイント解説
  5. パワハラ相談窓口と相談対応マニュアル

プライムCメディア

パワハラ相談窓口と相談対応マニュアル

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
パワハラ相談窓口と相談対応マニュアル

米田徹先生のプロフィールはこちら

第57回 ホワイト企業人事労務ワンポイント解説   

Q

当社は社員数約70名の中小企業ですが、中小企業もパワーハラスメントの相談窓口を設置しなければならないと聞きました。相談窓口の設置に当たりパワハラ相談があった際に役立つ相談対応マニュアルを準備した方がよいでしょうか?

A

パワハラの防止を目的として令和2年6月に「改正 労働施策総合推進法」が施行され、中小企業の事業主にも令和4年4月から「パワーハラスメント防止措置」が義務化されました。事業主は雇用管理上の措置として、相談のための窓口を設置し、労働者に周知することとされています。

 

相談対応マニュアルに基づく対応が有効

 パワハラの相談があった時、相談窓口担当者のためのマニュアルがあると対応の際の拠り所となります。ハラスメント防止指針(厚労省)でも「予め作成した留意点などを記載したマニュアルに基づき対応すること。」と書かれています。
 しかし、指針自体に具体的なマニュアル例が示されていないため、中身のイメージは掴みにくいのが実態です。

 そこで、以下では人事院のWEBサイトで公開されている、『パワーハラスメントに関する苦情相談に対応するに当たり留意すべき事項についての指針』をご紹介します。このドキュメントは以下のような構成になっていて相談対応の仕方がコンパクトにまとまっています。 

【パワハラに関する苦情相談に対応するに当たり留意すべき事項についての指針(人事院)】
第1 基本的な心構え
第2 苦情相談の事務の進め方
 1 苦情相談を受ける際の相談員の体制等
 2 相談者から事実関係等を聴取するに当たり留意すべき事項
 3 行為者とされる者からの事実関係等の聴取
 4 第三者からの事実関係等の聴取
 5 相談者に対する説明
第3 問題処理のための対応の在り方
 1 基本的事項
 2 事案に応じた対処

第1 パワハラ相談対応時の基本的な心構え 

 基本的な心構えとして
「1.被害者を含む当事者にとって適切かつ効果的な対応は何かという視点を常に持つ」
「2.事態を悪化させないために、迅速な対応を心掛ける」
「3.関係者のプライバシーや名誉その他の人権を尊重し、知り得た秘密を厳守する」
といった点に留意する必要があるとしています。

第2 苦情相談の事務の進め方:相談担当者は2名が原則 

「1項 苦情相談を受ける際の相談員の体制等」

 苦情相談を受ける際には、原則として2名の相談員で対応するとしています。本来、相談は1対1が原則ですが、ハラスメント相談は「調査」の役割もあるため「言った」「聞いていない」などの行き違いを防ぐために2名が好ましいようです。ただ、相談者に圧迫感を与える場合もあるので希望があれば同伴者(原則として職場内の人間)を認めるべきでしょう。 
 人数以外には、相談者が望む性別の相談員が同席することが好ましいとしているので、会社として男女1名ずつの相談員を予め決めておくことが望ましいと考えられます。

「2項 相談者から事実関係等を聴取するに当たり留意すべき事項」 

 パワハラの事実聴取では「相談者の求めるもの」をしっかり聴取します。「今後見込まれる言動の抑止」、更に「喪失した利益の回復」、「謝罪要求等を求めるのか」といった要望を確認します。また、どの程度の緊急性があるのかについても把握します。
 この際、相談者の主張等に真摯に耳を傾けましょう。被害者の場合、パワハラを受けた心理的影響から必ずしも理路整然に話すとは限りません。むしろ脱線することも十分想定されますが、事実関係を把握することは極めて重要なので忍耐強く対応することが肝要です。また、相談員自身の評価を差し挟むことは控え、相手の主張と事実関係を把握することに集中します。
 聴取内容は「当事者間の関係」、問題の言動が「いつ、どこで、どのように行われたのか(5W1H)」、「物的証拠の有無(メール・会話の録音等)」「相談者は、行為者に対してどのような対応をとったか」「上司には相談したか」「他に目撃者はいるか」などを正確に把握します。そして聴取した事実関係等を相談者に再度確認した上で書面等に記録します。
 聴取に当たっては、あらかじめ準備したチェックシートのようなものを使うと漏れなく聴取できて役立ちます。


「3項 行為者とされる者からの事実関係等の聴取」 

 次に、原則として行為者とされる者への聴取が必要になります。しかし、パワハラが比較的軽微、又はパワハラか否かの判断が難しい場合等は、管理職(上司)の観察や指導による対応が適当な場合もあるので、行為者本人への聴取に限定せず、その都度適切な方法を選択します。 
 パワハラ行為者とされる者への聴取が必要な場合には、被害者(相談者)から聴取した事実関係等について確認するなど適切に対応します。この際、行為者とされる者に対しては十分な弁明の機会を与えつつ、その主張に真摯に耳を傾け中立的立場で淡々と話を聞くようにします。

「4項 第三者からの事実関係等の聴取」 

 パワハラ当事者間で事実関係の主張に不一致がある場合には、第三者からの聴取が必要になります。この場合は、前述した「2項 相談者から事実関係などを聴取するに当たり留意すべき事項」を参考にしつつ、適切に対応します。
 そして、最後の「5項 相談者に対する説明」では苦情相談に関し、具体的にとられた対応について、相談者に説明することになります。

第3 問題処理のための対応の在り方

 苦情相談に対応する際に、その行為がパワハラに該当するかどうかについて相談者に相談員の心証を伝えるべきではありません。そして、事案に応じた形で以下のような対処が考えられます。

・「パワハラに該当すると考えられる場合」
 相談者の了解を得て、速やかに事業主、役員、又は総務部長などの責任者(以下、会社の「人事当局」)に知らせる必要があります。仮に相談者がそれを望んでいない場合でも、相談者が自傷行為に及ぶ可能性がある等の深刻な状態にあると疑われる場合には、人事当局への連絡は欠かせません。

・「パワハラに該当するか判断が難しい場合」
 人事当局と連携して、必要なら複数回にわたり双方の主張(更に第三者からの情報)を聴取します。そして、いずれが正しいかの判定を目指すのではなく、双方の認識の隔たりを埋めつつ将来に向けてとるべき対応について共通認識に到達することを目指します。それでも共通認識への到達が困難な場合は、人事当局として判断を示し、必要な措置を行うことになります。
 なお、話の内容から判断して明らかにパワハラに該当しないと思われる事案であっても、相談者が組織的対応を求めているときは相談者の了解を得て、事案を人事当局に知らせる必要があります。
 一方、相談者は相談員限りでの対処やアドバイスを望む場合もあります。その際は、業務遂行やコミュニケーションの在り方の見直しなどによる解決を相談窓口担当者として助言するといった対応が考えられます。

 以上の人事院のドキュメントは国家公務員を対象とした相談指針ですが、中小企業が自社用にカスタマイズすれば手軽な相談マニュアルとなるので、皆様の会社でも活用を検討してみたらいかがでしょうか。

参考:◆人事院サイト「パワーハラスメントに関する苦情相談に対応するに当たり留意すべき事項についての指針 」(←PDFが開きます)

プライムコンサルタントでは、本記事のようにWEB会員限定サービスをご提供しています。
「WEB会員」サービスはどなたでも無料でご利用いただけます。
今すぐご登録ください(入会金・会費など一切無料です。また、ご不要であればいつでも退会できます)。

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

カテゴリ