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シフト制勤務における雇用管理の留意事項

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シフト制勤務における雇用管理の留意事項

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第56回 ホワイト企業人事労務ワンポイント解説   

Q

当社はグループホームなどを営む介護事業所です。スタッフの多くはシフト制の契約になっていて、毎月の勤務状況にはバラツキがあります。
一部のスタッフから毎月の労働日数・時間や給与が変動するので生活設計が立てにくいとの苦情が出ています。シフト勤務について労働トラブルにならないように、会社としてどのような配慮をすれば良いでしょうか。

A

パートやアルバイトなどを中心に、シフト制で働く労働者は多いと思います。介護事業以外にも、コンビニ、ファミレス、ホテルのフロント、工事現場など様々な業種でシフト制勤務が行われています。シフト制はその時々の事情に応じて柔軟に労働日・労働時間を設定出来る点で労使双方にメリットがある場合がありますが、一方、所定労働日が曖昧であることなどにより労働トラブルに発展するリスクもあります。厚生労働省は、需要の繁閑に対応したシフト制労働者が拡大しているとして、現行の労働法関係諸法令などに照らして、適切な雇用管理に向けた「留意事項」を明らかにしました(令和4年1月)。以下では、その内容も踏まえつつ、シフト制勤務についての留意点について検討します。

 

「シフト制勤務」と労働条件の明示義務

 「シフト制」とは、労働契約の締結時点では労働日や労働日数を確定的に定めず、一定期間(1週間、1カ月など)ごとに作成される勤務シフトなどで、初めて具体的な労働日や労働時間が確定するような勤務形態を指します。
 法律では、雇用契約書に所定労働日を明記することを求めていないので、「所定労働日はシフトによる。」とした労働契約は原則として適法といえます。
 一方、労働契約では、「契約期間、始業・終業時刻、休憩、休日、賃金の決定方法、支払時期・・・」など必ず書面で明示しなければならない事項が決められていて、シフト制労働契約の場合も同様です。

 例えば、「始業・終業の時刻」については、雇用する時点で確定している労働日については、労働条件通知書などに「シフトによる」と記載するだけでは不十分であり、労働日毎の始業・終業時刻を明記するか、原則的な始業・終業時刻を記載した上で、雇用契約時点で定める一定期間分のシフト表などを併せて労働者に交付するのが適切な明示方法となります。
 また「休日」について具体的な曜日が確定しない場合であっても、休日の設定に関する基本的な考え方(例えば、休日は週〇日以上等)を明示しなければなりません。

シフト制労働契約で定めることが有効な事項

 シフトの作成・変更やその他の設定については、以下のような事項について労使で話し合ってルールを定めておくことことがトラブル回避のために役立つと考えられます。 
(1)「シフトの作成」は使用者の都合で設定する会社が多いようですが、できるだけ労働者の意見を聞くこと、また、シフトの通知期限・方法(例:毎月〇日、電子メール等)などをルール化することが有効です。
(2)一旦、確定し通知されたシフトを変更することは「労働条件の変更」に該当し、原則として労使双方の合意が必要になる点に留意が必要です。労働日の変更やキャンセルが生じる場合には、会社側や労働者が申し出る場合の期限(例:〇日前までに連絡し承認を受ける等々)や手続き方法について定めておきましょう。
(3)「シフト設定」については、労働者の希望に応じて以下のような内容についてあらかじめ合意しておくと、労働条件が明確になるメリットがあり、トラブル防止の観点で有効性が高いと考えられます。

(設定例)
・毎週、月、水、金曜日から勤務する日をシフトで指定する ⇒労働日が設定される日が明確になる
・1カ月〇日程度勤務、1週間あたり平均〇時間勤務 ⇒目安になる労働日数や労働時間数が明確になる
・1カ月〇日以上勤務、少なくとも毎週月曜日はシフトに入る ⇒最低限労働する日数、時間数などが明確になる。

就業規則の作成と注意点

・就業規則……常時10人以上の労働者を使用する場合、シフト制労働者に対しても適用される就業規則の定めが必要です。「始業及び終業の時刻」や「休日」については基本となる時刻や日を定めた上で、具体的には「シフトによる」旨を定めるといった記載で差し支えありません。
・労働時間、休憩……労働時間や休憩時間については労基法が適用されます。すなわち、原則1日8時間、1週40時間以内で、この上限を超える場合には三六協定の締結が必要になります。また、1日の労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を、勤務時間の途中で与えなければなりません。(例えば、午後1時から午後8時までの連続勤務は法違反となります)。
・年次有給休暇……シフト制労働者であっても、雇入れの日から6カ月経過し、全労働日の8割以上出勤した際には、労働日数に応じた年次有給休暇を与えなければなりません。「シフトの調整をして働く日を決めたのだから、その日に年休は使わせない。」といった取扱いは原則として認められない点に注意してください。

 

コロナ特例支援金と裁判例など

 コロナ禍において飲食業などで突然顧客数が減って、シフト制社員の労働日数が減らされるケースが増加しました。シフト制はシフトにより所定労働日が決まるので、使用者の都合で労働日数が減ってもシフト設定以外の日は休業にはあたらず休業手当を支払わない、とする企業が多くでたことで、日本中でトラブルが発生しました。
 厚生労働省は「新型コロナ対応休業支援金・給付金」などで、これら休業手当の支払いを受けることが出来なかった労働者の救済を行っていますが、制度を知らずに生活に苦しんでいる人も多いと考えられます。

 コロナ関連ではありませんが、介護事業所で働く労働者が、ある時期から(勤務態度に問題があるとして)シフトを大幅に減らされたことは違法であるとして、賃金等を請求した事件があります。雇用契約書には勤務日数の記載はなく、「シフトによる」となっていました。裁判では合理的な理由がなく、シフトを大幅に減らしたのはシフト決定権限の濫用にあたるとして、シフトの削減がなければ得られた賃金の支払いを事業者に命じました(シルバーハート事件:東京地裁令和2.11.25)。

 シフト制勤務は労働日数・時間などが曖昧になりがちですが、雇用する際には、労働条件をできるだけ具体的かつ詳細に明示することで、労働トラブルの発生を未然に防ぐことが可能です。
 今回明らかにされた厚生労働省の留意事項では、シフト制労働者の解雇・雇止めや募集・採用、待遇、保険関係などについての留意点も記載されています。
 これらの資料などを参考にして、シフト制労働者の適正な雇用管理を行ってください。

参考:◆厚生労働省サイト「いわゆる「シフト制」について 」(←厚労省のサイトが開きます)

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