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フリーランス新法と企業の対応について

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フリーランス新法と企業の対応について

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第81回 ホワイト企業人事労務ワンポイント解説   

Q

当社は広告関連の事業を営む資本金300万円の小規模企業です。ウェブサイトを構築・改善するために、フリーのウェブデザイナーやウェブ開発者に業務委託しています。
昨年、フリーランス新法が成立し、まもなく施行されるとのことですが、法律の概要や、会社として留意すべき事項などを教えてください。

A

「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(以下、フリーランス新法)が成立し、昨年5月12日に公布されました。施行は、公布の日から1年6ヶ月を超えない日とされており、遅くとも2024年秋頃までには施行される見込みです。
下請法(下請代金支払遅延等防止法)は資本金が1,000万円を超える事業者が規制の対象になりますが、フリーランス新法には企業規模の要件はありません。下請法の適用がない小規模の事業者にとっては、新法の施行により新たに対応が必要な事項も多く、企業実務にもいろいろな影響を及ぼす可能性があります。
以下、フリーランス新法の内容について見ていきましょう。

フリーランス新法制定の背景

 働き方の多様化が進み、フリーランスという働き方が広まっています。自営型テレワークやギグワーク(インターネットを通じて短期、単発の仕事を受注して働く)など、自由度の高い働き方を選択する人々が増加しています。全国でフリーランスは約462万人(内閣官房の推計)、に上りますが、一方で、フリーランスが取引先との関係で様々な問題やトラブルに直面している実態が報告されています。

・実態調査(令和3年 内閣官房ほか)では、フリーランスの約4割が報酬不払い、支払遅延などのトラブルを経験。フリーランスの約4割が記載不十分な発注書しか受取っていないか、そもそも発注書を受領していない
・「フリーランス・トラブル110番」では、報酬支払いの他、ハラスメントなど就業環境に関する相談も寄せられている

 トラブルの背景には、フリーランスとして業務委託を受ける「個人」と、発注事業者としての「組織」との間には、交渉力や情報収集力に格差が生じやすいことが挙げられます。

 新法の制定目的は、労働法の保護が及ばず、契約上の弱者になりがちなフリーランスが安心して働けるよう、①取引の適正化②就業環境の整備を図ることにあります。

 ここで、新法が対象とする「フリーランス」とは、業務委託を受ける事業者で、従業員(短時間勤務者等は除く)を使用しない個人となります。いわゆる、個人事業主や一人社長(個人)が新法の保護の対象です。

 一方、法律が規制対象とする「発注事業者」とは、フリーランスに業務委託する事業者で、従業員を使用する企業などを指します。(下図:厚生労働省リーフレットより)

フリーランス新法の内容

 新法は5章構成で、特に重要なのは第2章と第3章になります(その他の章は、総則、雑則、罰則)。

○第2章:(特定受託事業者に係る取引の適正化)関連

 この章には、下請法の影響が強い規定がされていて、主に公正取引委員会と中小企業庁が担当する分野と考えられます。

 内容的には、発注事業者は業務委託するフリーランスに対して、「書面等による契約内容明示義務」「報酬支払い日の設定・期日内の支払」さらに「禁止事項」などが定められています(以下を参照)。

義務項目
具体的な内容
①書面等による取引条件の明示 業務委託をした場合の、書面等による、「委託する業務の内容」「報酬の額」「支払期日」等の取引条件を明示する
②報酬支払日の設定・期日内の支払 発注した物品の受領日から60日以内の報酬支払期日を設定し、期日内に報酬を支払う
③禁止事項 継続的業務委託をした場合、法律に定める行為を禁止する(例:フリーランスに責任がないにもかかわらず、「発注した物品を受取らない」、「発注時に決めた報酬を減額する」「物品等の受領後に返品する」など)

 

○第3章(特定受託業務従事者の整備)関連

 この章の規定は、労働者に保護されている労働法規の内容を、フリーランスにも拡張したものと考えられ、主に厚生労働省が担当する分野と考えられます。

 「募集情報の的確な表示」、「育児介護の両立支援」、「ハラスメント行為の禁止」などが法律に規定されています。これらの詳細については、今後、厚生労働大臣が必要な指針を公表するものとされています。

義務項目
具体的な内容
④募集情報の的確表示 広告などに募集に関する情報を掲載する際に
・虚偽の表示や誤解を与える表示の禁止
・内容を正確かつ最新のものに保たなければならないこと
⑤育児介護等と業務の両立に対する配慮 継続的業務委託について、フリーランスが育児や介護などと業務を両立できるよう、申出に応じて必要な配慮をしなければならない(就業時間の短縮等の対応)
⑥ハラスメント対策 フリーランスに対するハラスメント行為に関する相談対応のための体制整備の措置実施等
⑦中途解除等の事前予告・理由開示 継続的業務委託を中途解除したり、更新しないこととしたりする場合、原則として30日前までに予告しなければならない

 

まとめ

 フリーランスと呼ばれる人達の中には高いスキルを持つ者がいる一方で、一定のスキルを持っていても適切な取引が保証されず、受注の安定性に欠ける事業者も少なくありません。フリーランス新法は、このような弱い立場にある人達を含め、フリーランスが関わる取引の適正化と働きやすい環境の整備を図るための法律です。

 まもなく施行されるフリーランス新法により、多くの中小企業が対応を迫られることになります。フリーランスの約4割は資本金1,000万円以下の発注事業者と主に取引していると言われています。下請法の適用がないこれらの事業者においてはフリーランス新法により、以上説明してきたような、責任ある新たな対応が求められることになります。

 法律の施行日までに、フリーランス新法に対応できる体制を整えることが重要です。

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