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年金制度の機能強化のための改正法の概要について

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年金制度の機能強化のための改正法の概要について

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第55回 ホワイト企業人事労務ワンポイント解説   

Q

当社は社員数約80名(短時間パート約10名含む)で建設機械の部品製造を行っています。昨年、定年を65歳に引上げ、70歳までの継続雇用制度を導入したことで、今後、60歳代の社員の増加が見込まれます。
今年4月からの年金法改正では、シニア社員や短時間パートに影響する内容が多数含まれていると聞きました。会社として知っておくべき改正の要点を解説してください。

A

今回の年金法改正は、人生100年時代を見据えて、特に就業が進む高齢者や女性について制度の見直しを行い、長期化する高齢期の経済基盤の充実を図ることを目的にしています。
法改正の目玉の一つは「厚生年金・健康保険の適用範囲の拡大」です。これまで社会保険に加入していなかった中小企業の短時間パートが新たに加入対象になります。今回の相談者の会社も2024年10月から適用対象になることが想定されます(次表参照)。

 以下では、4月以降に開始される公的年金制度の重要な改正項目で、60歳以上の在職者に関係する以下について解説します。
 1.在職定時改定(65歳以上が対象)
 2.在職老齢年金制度の見直し(60歳代前半が対象)
 3.受給開始時期の選択肢の拡大(60~75歳)

在職定時改定(65歳以上が対象)

 在職定時改定は、今回初めて導入される新制度で65歳以上の厚生年金被保険者が対象になります。従来の制度では、退職(又は70歳到達)により厚生年金被保険者の資格を喪失するまでは、老齢厚生年金の額は65歳時の基本額のままで改定されませんでした。
 新制度では在職者の年金額を毎年10月分から改定し、それまでに納めた保険料を年金額に反映して厚生年金を増額します。勤務を継続したことの効果が退職を待たずに早期に年金額に反映することで在職者の働く意欲を高める効果を狙った改正といえます(図参照。出所:厚生労働省資料)。

 
 図にもあるように標準報酬月額20万円で働いた場合、1年間で増額される厚生年金は年額13,000円(月額1,100円)程度となります(本人の標準報酬額に比例)。なお、厚生年金の被保険者期間が40年未満の人には、この他に定額で年額約20,000円が上乗せされることも知っておくと良いでしょう。

在職老齢年金制度の見直し(60歳代前半が対象) 

 在職老齢年金制度は、就労し、給与と年金の合計額が一定以上になる60歳以上の年金受給者を対象にして、全部または一部の年金を支給停止する仕組みです。
 今回の改正で60~64歳に支給される特別支給の老齢厚生年金の停止ルール(低在老)が改定されました。支給停止されるのは給与(正確には標準報酬月額と過去1年間に受取った賞与を加味した総報酬月額相当額)と年金月額の合計額で決まりますが、この停止基準額が28万円から47万円へと大幅に緩和されます。目安としては、年収が400万円程度以内の人であれば、年金の停止は、ほぼなくなると考えて良いでしょう。
 但し、60歳代前半に特別支給の老齢厚生年金が支給される年代は限られていて、本制度の恩恵が受けられるのは男性は2025年度まで(昭和32年4月2日~昭和36年4月1日生まれ)、女性は2030年度まで(昭和32年4月2日~昭和41年4月1日生まれ)となります。
 なお、65歳以上の在職老齢年金制度(高在老)の停止基準額は従前どおり47万円に変更はありません。
 


受給開始時期の選択肢の拡大(60~75歳) 

 公的年金(基礎年金、厚生年金)は、原則として65歳が支給開始年齢で、従前は希望すれば60歳から70歳までの間で自由に受給開始年齢を選択できました。4月からはこの選択肢が拡大し60歳から75歳までの15年間の間で選択できるようになります。

(1)繰上げ受給(60歳~)
 原則65歳からの年金を早く受取り開始するのが繰上げ受給です。60歳以上であれば1カ月単位にいつでも繰上げが可能です。基礎年金と厚生年金を同時に繰上げる必要があり、どちらか一方だけの繰上げは出来ません。
 繰上げた場合の減額率は現行制度では1月あたり▲0.5%ですが、4月以降に60歳を迎える世代(昭和37年4月2日生まれ以降)からは、1月あたりの減額率が▲0.4%に緩和されます。例えば60歳から受給開始の場合、従前は5年繰上げで▲30%減額されましたが、新制度が適用される世代からは▲24%と減額幅が縮小します。

(2)繰下げ受給(66歳~75歳)
 これまでは70歳までの繰下げ受給が4月以降は75歳までに引上げられます。繰下げ増額率は1月あたり+0.7%なので、75歳まで10年間繰下げた場合には、65歳時の基本額に対して84%増額した年金を受取ることができます。
 繰下げ受給は基礎年金、厚生年金いずれか一方だけを選択することも可能です。65歳以上で働く人が増える中で繰下げ受給に関心を持つ人も増加しています。繰下げは65歳から加給年金や振替加算(いずれも繰下げ待機中は受取れず、繰下げ受給時に増額の対象にもならない)が加算される夫婦の場合など、注意しなければばらない点が各人毎に異なります。年金の繰下げ受給を検討している人は、年金事務所や社労士などの専門家に相談の上で、それぞれのライフプランに合った適切な選択をすることが重要です。

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