1. 賃金・評価などの人事コンサルティングならプライムコンサルタント
  2. プライム Cメディア
  3. WEB連載記事
  4. ホワイト企業の人事労務ワンポイント解説
  5. 育児介護休業法の改正と企業実務への影響

プライムCメディア

育児介護休業法の改正と企業実務への影響

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
育児介護休業法の改正と企業実務への影響

米田徹先生のプロフィールはこちら

第54回 ホワイト企業人事労務ワンポイント解説   

Q

育児介護休業法が改正され、企業の人事労務実務にも大きな影響が出ると聞きました。
社員から本人や配偶者が妊娠・出産したと申出があった時の対応など、会社が実施しなければならない実務の内容や会社規定類の変更などについて要点を教えてください。

A

育児休業や介護休業の取得を促す育児・介護休業法の改正が昨年6月の国会で可決・成立し段階的に本年4月と10月に分けて施行されます。
「産後パパ育休(後述)」の新設など法改正の内容は多岐にわたりますが、以下では、会社の実務対応が必要になる点を中心に要点を見ていきます。なお、以下の対応事項には中小企業の猶予措置はありませんので、企業規模に関係なく実施が必要となります。

 

令和4年4月までに対応が必要な実務内容

 本年4月までに会社が対応しなければならない主な事項は次の(1)~(3)となります。

(1)(妊娠・出産の申出をした社員に対する)個別の周知・取得意向確認措置
(2)育児休業を取得しやすい雇用環境の整備
(3)有期雇用者の取得要件緩和に対する対応(必要に応じて実施)

(1)は、社員本人またはその配偶者の妊娠・出産について申出があったときには、会社は育児休業制度の内容について知らせる(個別周知)とともに、育休取得意向の確認を、個別に行わなければなりません。

「個別周知」する内容は、「育児休業・産後パパ育休に関する制度」、「育児休業・産後パパ育休の申し出先」、「育児休業給付(雇用保険)に関すること」、「労働者が休業期間に負担すべき社会保険料の取扱い」となります。育休取得の意向確認を含め、面談、書面交付、また労働者が希望した場合にはFAX又は電子メールなどで実施する必要があります。

(2)の「雇用環境整備」については、育児休業の取得をしやすくするために、会社は4月以降、育児休業・産後パパ育休に係る以下のいずれかの措置を講じなければなりません(複数講じることが望ましい)。

①研修の実施
②相談窓口の設置
③(自社の労働者の)事例収集と提供
④育休制度と取得促進に関する方針の周知

 例えば、「①研修の実施」を行う場合は厚労省がHP上で研修用のビデオ動画を公開しているので、管理職などを集めて、視聴させるといった方法で実施することが可能です。また、育休に関する「相談窓口」を設置して社員に周知する措置も有効です。
 最後の(3)は有期雇用者への対応です。これまで育休(介護休業も同様)は、有期雇用者の場合、引き続き雇用される期間が1年以上の者(かつ、子が1歳6カ月までの間に契約満了することが明らかでない者)に限定されていました。しかし、今回の法改正で「1年以上」の要件が撤廃され無期雇用者と同様の扱いになりました。ただし、入社1年未満の正社員を含むパート・アルバイトの育休を拒むことは可能で、その場合は、「雇用期間1年未満の者は除外する」旨の労使協定を締結する必要があります。

「産後パパ育休」と10月までに対応が必要な実務内容

 今回の改正の大きな目的として取得率が伸び悩んでいる男性の育休取得の促進があります。男性にとって一番育休を取りたいのは子が生まれた直後といえます。母親は8週間の産後休業に入っていますが母体保護のために静養が必要です。妻が里帰りなどするのでなければ、父親として最も育児参加が必要な時期といえます。


 そこで、今回の改正では子の出生後8週間以内に4週間まで取得できる「出生時育児休業(通称:産後パパ育休)」が新設されました。この期間内に2回に分けて分割取得することができます(分割取得の場合、初めにまとめて申込むことが必要)。さらに、産後パパ育休では(労使協定締結を前提に)例外的に一時的な就労を行う事が可能な仕組みが盛り込まれました。
 なお、子の出生後8週間以内の期間は4週間までしか育休が取得できないわけではなく、従来の育休も選択可能です。そして、この従来の育休についても今回改正があり、原則分割取得不可だったものが、分割して2回まで取得可能になります。また、保育所に入所できないなどの事情で育休を1歳以降(1歳から1歳半、1歳半から2歳の期間)に延長する場合、開始日の扱いが柔軟化され「夫婦で育休を途中交代できる」ようになります。
 以上、令和4年10月1日からの法施行により、働き方・休み方のイメージは大きく変わります(次図参照)。

 

 10月以降、大きく改善される点をまとめると以下となります。(図中ではピンク色の矢印で示されます)。

・母親の産休期間(出生後8週まで)に父親は「産後パパ育休」を最大4週間、分割して2回取得できるようになる
・(産後パパ育休ではない)通常の育児休業期間中に夫婦共に分割して育休を2回取得できる(現行は1回)
・1歳以降の育休が夫婦途中交代で取得できる(現行は、途中交代できない)

 そして、産後パパ育休などが施行される10月までに会社の対応が必要な主な事項は次の(4)~(6)となります。 

(4)就業規則(育児介護休業規程)の改定
(5)社内書式の見直し
(6)産後パパ育休に関する労使協定の締結(必要に応じ) 

 (4)は法改正に対応するための就業規則の改定です。「産後パパ育休」を始め多数の変更が必要になるので、厚労省が先日公表した、育児介護休業規定例(令和3年10月作成)等を参考にして作業を進める必要があります。 
 さらに、育休の申請事務に関しては書面で行っている事業所が多いと思われますが、分割取得などに対応した、育休申出書などの「(5)社内書式の見直し」が必要です。これも厚労省の参考書式が活用できます。
 最後の(6)は、「産後パパ育休」の申し出時期を原則の「2週間前まで」から「1カ月前まで」等に変更したり、労使の個別合意で、事前に調整した上で産後パパ育休中に就労させる場合(産後パパ育休期間中の所定労働日・所定労働時間の2分の1を上限とする)には労使協定の締結が必要になります。

 以上の他にも、法施行に伴い、雇用保険の育児休業給付の申請や社会保険(健康保険、厚生年金)の保険料免除要件などが変更になります。また、本稿では触れませんでしたが、育児休業の取得状況公表の義務づけが令和5年4月から施行されます(従業員数1000人超企業が対象)。
 今回の改正育児介護休業法は、以上述べたように大きな法改正になります。会社での手続きが複雑になることが予想されるため、今から余裕を持って準備を進めてください。

プライムコンサルタントでは、本記事のようにWEB会員限定サービスをご提供しています。
「WEB会員」サービスはどなたでも無料でご利用いただけます。
今すぐご登録ください(入会金・会費など一切無料です。また、ご不要であればいつでも退会できます)。

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

カテゴリ