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70歳までの就業機会の確保について

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70歳までの就業機会の確保について

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第42回 ホワイト企業人事労務ワンポイント解説   

Q

法律の改正により、「70歳まで働く機会の確保」を図ることが企業の努力義務になると聞きました。当社では、65歳に達した後も、「会社が必要とする者」は継続雇用する場合があると定めて実施していますが、すべての高齢社員を対象にすることが求められているのでしょうか。企業が講ずるべき、今後の対応について教えて下さい。

A

70歳までの就業機会の確保を企業の努力義務とする改正高年齢者雇用安定法(以下、改正「高年法」)が成立し、本年4月に施行されます。前回、2012年に改正された高年法による「65歳までの雇用確保措置」については厚労省の調査によると99.9%(31人以上規模企業)とほぼ全ての企業が実施、更に66歳以上まで働ける制度のある企業の割合も33.4%あるとのことです(2020.6.1現在)。今回の法改正は65歳以降、更に「70歳までの就業機会の確保」を企業に求めるもので、背景には日本の労働力不足や社会保障財政の逼迫があります。労働者にとっても生涯賃金を増やせる経済的安心感、仕事を続けることが健康につながるといったメリットが考えられます。昨年10月に改正法の省令と基本指針が公表されたので、その内容に沿って、以下、解説します。

 

70歳までの就業機会の確保(努力義務)の内容

 今回の改正高年法は、すでに70歳以上の定年(又は定年の廃止)や継続雇用制度を導入している企業を除き、すべての企業が対象になります。努力義務とされる「高年齢者就業確保措置」とは次の①~⑤のいずれかの措置となります。

 企業は、70歳までの就業機会の確保のために上記の措置のうち、ひとつ又は複数の措置を講ずることが可能です。当該労働者を定年まで雇用していた事業主が対象となります。

対象者の基準とは

 対象者の基準について、これまでの「65歳までの雇用確保措置」では、原則として、希望する者全員を65歳まで雇用する必要がありました。しかし、今回の「70歳までの就業確保措置」は努力義務のため、①(定年の引き上げ)、②(定年制の廃止)以外の措置については、対象となる高年齢者の基準を定めることが可能です。法律上も対象者の基準についての定めはないので、各企業の実情に合わせて定めることができます。
 ただし、対象者の基準を設ける場合は、労使間で十分に協議することが望ましく、事業主が恣意的に高年齢者を排除しようとするなど法の趣旨に反する、又は公序良俗に反するものは認められません(適切でない例として、「会社が必要と認めた者に限る」「男性(女性)に限る」などがあげられています)。
 したがって、今回の質問者の「会社が必要とする者」という基準は適切とは言えず、より具体性や客観性のある内容に変えることが望ましいといえるでしょう。
 なお、継続雇用制度、創業支援等措置を実施する場合に、「心身の故障のため業務に耐えられないと認められること」「勤務(業務)状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責(義務)を果たし得ないこと」といった事項を就業規則や就業支援等措置の計画に記載して、契約を継続しないことは認められます。




継続雇用制度の活用

 5つの選択肢の中で最有力なのは、③の70歳までの継続雇用制度の導入でしょう。65歳までの雇用確保措置でも最も多くの企業が採用していて、その延長として実施することが可能です。
 今回の「70歳までの就業確保措置」では、グループ会社の事業主(特殊関係事業主)以外の他の事業主が引き続いて雇用することも認められます(注.「65歳までの雇用確保措置」では転籍などで外部企業等に移ることを労働者に強制することはできません)。その場合はその外部企業と、「高年齢者の雇用確保を約する契約」を締結した上で実施する必要があります。指針では、他社で雇用する場合でも「可能な限り個々の高年齢者のニーズや知識・経験・能力等に応じた業務内容及び労働条件とすることが望ましい。」としています。

創業支援等措置(④⑤)とは

 雇用によらない④⑤の措置(創業支援等措置)は、これまでの65歳までの雇用確保措置にはない新たに追加された措置で、実施する上では企業内での十分な検討が必要になります(1.実施計画の作成、2.過半数労働組合等の同意を得る、3.計画を労働者に周知、等の一定の手続きが必要)。
 ④の70歳まで継続的に業務委託契約(フリーランス)を締結する制度は、起業などといった形で高年齢者が新事業を開始する場合に、企業との業務委託契約等に基づき実施するものです。この形態は労働者性が認められず、労働者保護も及ばないことから、企業側からの業務依頼や指示等に十分留意する必要があります。指針では、「雇用時の業務と内容及び働き方が同様の業務を創業支援等措置と称して行わせることは法の趣旨に反する」としています。
 ⑤は事業主自ら(又は委託、出資等するNPO法人等の団体)が実施する社会貢献事業に参加させることで高齢者の70歳までの就業を確保する措置です。
 社会貢献事業とは「不特定かつ多数の者の利益に資する目的が必要」とされ、例えば、環境保全事業、子供向け事業などが考えられますが、該当するか否かは事業の性質や内容等を勘案して個別に判断されます。例えば、少数又は特定の団体(宗教、政党等)の利益に資することを目的とした事業は該当しません。
 以上の創業支援等措置(④⑤)については、高齢者の創業や企業の社会貢献事業の実施といったハードルがあり、また、高齢者が希望し、雇用でないことを納得した上で契約を締結して実施する必要があり、どの程度普及するかは未知数と言えそうです。

 以上、今回施行される「70歳までの就業機会確保措置」は努力義務ではありますが、少子高齢化が急速に進展し労働者確保の重要性が一層高まっている状況から、企業にとっても、積極的に取り組むべき内容と考えられます。過去の高年法では、当初努力義務とされた制度のほとんどは後に義務化されています。将来の義務化を見据えて早期に措置を講ずることを検討することが望まれます。

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