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パワハラ防止措置の法制化について

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パワハラ防止措置の法制化について

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第27回 ホワイト企業人事労務ワンポイント解説   

Q

パワハラ防止の法律が成立したと聞きました。内容について教えてください。企業としてどのような対応が必要になるのでしょうか?

A

職場でのパワーハラスメント防止対策を企業に義務付ける改正労働施策総合推進法が今年の5月末に参院本会議で可決・成立しました(R1.5.29)。
パワハラに関しては、これまで定義や防止措置を定めた法律はありませんでしたが、法律が成立したことに伴い施行日(2020年4月。中小企業は2022年3月末までは努力義務)までに人事労務担当者は必要な施策の準備をしなければなりません。以下、パワハラ防止措置の法制化について考えてみましょう。

パワハラ法制化の内容とは

 昨年、働き方改革関連法が参議院で可決成立した際の附帯決議(H30.6.28付)には、「職場におけるパワーハラスメント等によって多くの労働者の健康被害が生じており、その規制・防止を行うことが喫緊の課題である・・・法整備やガイドラインの策定に向けた検討を・・・早急に開始すること」との言及があり、今回のパワハラの法制化も、『働き方改革』の一連の流れと捉えてよいと考えます。
 さて、今回成立した労働施策総合推進法30条の2第1項ではパワハラ防止措置義務について以下のように規定しています。

30条の2 第1項
事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることがないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

 この条文では、職場での「①優越的な関係を背景とした言動」で、「②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」により「③就業環境が害されるもの」をパワハラと定義付けています。そして、「労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」「その他雇用管理上必要な措置」を使用者に義務付けるとしています。このような条文構造は、これまでのセクハラやマタハラの法規定(男女雇用機会均等法、育児介護休業法)の場合と基本的に同様と考えて良いでしょう。

 そして「事業主が講ずべき措置等」については指針を定める(30条の2、第3項)としています。この点に関し、昨年12月に発表されたハラスメント防止に関する厚労省の報告書では、事業主が講ずべき措置等に関し以下の内容を示すことが適当としており、先月(10月21日)公表された『パワハラに関して雇用管理上講ずべき措置等に関する指針(素案)』でもこのような内容が盛込まれています。

【事業主が講ずべき措置等】 厚労省報告書(H30.12)より
・職場のパワハラがあってはならない旨の方針の明確化
・当該行為が確認された場合には厳正に対処する旨の方針
・対処の内容についての就業規則への規定、それらの周知
・啓発等の実施 ・相談等に適切に対応するために必要な体制の整備(相談窓口)
・事後の迅速、適切な対応(丁寧な事実確認等)
・相談者・行為者等のプライバシーの保護併せて講ずべき措置

相談者への対応は十分慎重に

 パワハラの法制化に伴い、企業は「パワハラ相談」に対して、より慎重に対応していく必要があります。法30条の2の第2項は以下のように規定しています。

30条の2 第2項
事業主は、労働者が前項の相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

 パワハラ相談対応は「①相談窓口の設置」⇒「②相談を受け付けた場合、事実の確認」⇒「③パワハラが認められた場合には適切な事後対応実施」という流れになります。
 パワハラの場合、セクハラと異なり、相談者(被害者)側にも、業務上のミスや失敗等の落ち度や勤務態度の不良など問題点があるケースも想定されます。
 そのような場合には、企業として業務上の注意指導を行わなければなりませんが、「パワハラの相談をしたら、むしろ厳しく怒られた。不利益取扱いではないか。」と誤解されることがないよう配慮する必要があります。

 また、パワハラ相談後の職場配置についても注意が必要です。加害者とされる上司との接触を減らすために被害者を配置転換するような場合には、被害者に理由を十分説明して、不利益取扱いではないことを納得させた上で行う必要があります。
 パワハラ相談があったとわかれば、加害者とされる上司から相談者への報復行為の起こる可能性が考えられます。この点に関しては、事業主が「パワハラは許さない」という強いメッセージを発すると共に、そのような報復行為を行った者に対してはより厳しい処分の可能性があることを、研修の場などを通じてきちんと理解させておくことが重要です。

パワハラか否かの線引きは?

 現場で最も頭を悩ませるのは「業務上の適切な指導とパワハラの線引きはどこか?」ということだと思います。先月厚労省から公表された指針(素案)でも、パワハラに該当する例・しない例が示されていますが、早速、労働者側からは「パワハラを認定するための定義が狭い」との指摘があり、日本労働弁護団は抜本修正を求める声明をだすなど波紋が広がっています。

 パワハラか否かの判断には、「業種、業務状況、指導目的、必要性、年齢、性別、立場、企業文化等」様々な要因が関係します。「業務上必要かつ相当な範囲」にあたるか否かは個別判断に委ねざるを得ない部分が残るのはやむを得ないことだと考えます。しかし、パワハラはセクハラに比べ複数の目撃者の前で行われる場合も多いと思います。パワハラは許さないという強い方針の下、「このような行為・言動はパワハラではないのか、当社として好ましいとはいえないのではないのか」ということを常日頃からトップ以下、社員が真剣に考える企業風土を作ることがまずは大切ではないでしょうか。

法施行までの準備について

 さて、最後に法施行までに会社ができることとして、以下の3項目を挙げておきます。

(1) トップメッセージ(パワハラ防止指針策定)
 トップと人事担当者がよく話し合って、「職場におけるパワハラを絶対に許さない」といった社員に響くトップ・メッセージや防止指針(会社方針を明確化した文書)を準備します。

(2) 相談窓口の設置
 これは法律上の措置義務となりますが、窓口を十分機能させるためには、しっかりとした相談体制の確立が必要です。実務上は一番難しいといえるので、専門家の助言や他社の事例なども参考にすべきでしょう。

(3) パワハラ防止規程
 就業規則でパワハラの禁止と違反した場合の懲戒処分を定めることが必須ですが、就業規則の付属規程として『パワーハラスメント防止規程』のような別規程を作成して社員に周知することもパワハラ防止効果を高めます。

 パワハラのない職場は、社員が安心して働くことができ、生産性の向上や人材確保にもプラスに働きます。企業は攻めの姿勢で、点検と対策を急ぐことが重要です。

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