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自己都合退職のトラブルについて

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自己都合退職のトラブルについて

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第28回 ホワイト企業人事労務ワンポイント解説   

Q

私は正社員として今の会社で長年働いてきましたが、事情があって就業規則に従って1カ月後に退職したい旨を上司に伝えました。しかし、会社からは「退職は認めるが、後任が決まり引き継ぎが済むまでやめないで欲しい。」と言われ、退職届を受理してもらえません。どうすれば良いでしょうか。

A

全国各地の労働基準監督所や労働局に設置されている「総合労働相談コーナー」に寄せられる労働相談の件数は11年連続で年間100万件を超える状況が続いています。平成30年度の「個別労働紛争解決制度の状況報告書(令和1.6.26)」によると、このうち、民事上の個別労働紛争に関する相談件数は26万6千件で「いじめ・嫌がらせ」が断トツの1位ですが、「自己都合退職」が「解雇」を抜いて第2位で過去十年を見ても増加しています(図参照)。
「自己都合退職」の件数には、今回の相談のように退職したいのに会社側が何らかの理由をつけて退職させてくれないといったものが含まれ、近年こうした相談が増えているようです。

労働契約の解約の自由とは

 労働契約は民法上、契約当事者双方に「解約の自由」を認めていますが、使用者側からの解約(=解雇)は、労働法規(解雇権濫用法理など)の適用など様々な制限があり簡単にはできません。
 これに対し、労働者側からの解約は、職業選択の自由(憲法22条)などの人権が保障されていることから、そのような制限はなくいつでも可能です。

 自己都合による退職には、法的には2つの場合が考えられます。すなわち、労働者側から一方的に労働契約を解消する解約告知としての退職(一般には「辞職」ともいわれます)と、そのような一方的な解約ではなく、会社に対して労働契約の合意退職の申込みをする場合(「退職願」などを提出)の2種類の退職です。
 辞職の場合には労働者側からの退職の意思表示が使用者に到達してから2週間を経過すると労働契約は終了することになります。(民法627条1項)。
 一方、合意退職の申込みの場合には、就業規則で定められた期日までに労働者が会社に意思表示し会社がこれを認めてから退職という流れになるわけですが、この際、会社側が過度の引き留めを行うことは許されません。実際、労働者が明確に辞職したいと表明すれば、法令上もそれ以上引き留めることはできないわけで、会社は合意退職の申込みを受け取った際には労働者の意向を尊重して適切な対応を行う必要があります。
 今回の相談のように、退職の意思を会社に伝えても人手不足等の理由で後任が決まらず会社側が執拗に引き留めをはかる結果、労働者が困って労働相談に持ち込まれるようなケースが増えています。会社としては、社員には退職(辞職)の自由があることを認識して、退職者が発生しても業務に支障がでないような対策を常日頃から講じておくことが必須といえるでしょう。

「自己都合退職」の様々なトラブル

 「自己都合退職」に関しては、この他にも、会社側からの退職勧奨にのって退職届を提出したが、本人自らの意思による退職(=自己都合退職)ではないと労働者側から主張されてトラブルになる場合があります。
 例えば、退職金制度の多くは、「自己都合退職」と「会社都合退職」とで支給係数が異なるのが通常です。本人にしてみれば、自己の都合で退職を望んだわけではないのに、退職に追い込まれ退職金まで減額されるのは不当であり、「会社都合退職」による全額支給を主張して労働相談に持ち込まれるようなケースが見受けられます。
 このような場合、会社都合か自己都合かは、当該企業の就業規則の解釈の問題になり一概には判断できません。退職勧奨があったから会社都合退職であるとか、(一身上の都合による)退職届が提出されたから自己都合退職であるといった形式的な判断は拙速といえるでしょう。退職に至るまでの経緯や退職金に関する話合いの有無等を総合勘案して個別に判断すべき事案といえます。

 また、労働者が退職後にハローワークで失業給付の手続きをする際、会社から届いた離職票の「離職理由欄」に「労働者の個人的な事情による離職」にチェックがついていて、係官に事実と違うといってクレームになることもよくあります。自己都合の場合と「事業主からの働きかけによる」(退職勧奨)場合とでは、失業給付の給付日数や給付制限の有無に差異が生じるためです。
 事業主側も会社都合の退職者を出すと、受給中の雇用開発関係の助成金の支給が停止になるなどの影響を恐れ、「退職届」を書かせた上で離職票には「自己都合」と記載する例も見受けられます。このようなトラブルを避けるためにも、退職の際にはきちんと文書を残すなどして、退職日や退職理由について後日、労使で異議が生じないようにトラブル防止を図ることが必要です。

 転職が当たり前になった今日、退職を巡ってトラブルが生じないよう、企業も十分な労務管理を実施することが重要です。

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