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働き方改革と就業規則の見直しについて

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働き方改革と就業規則の見直しについて

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第24回 ホワイト企業人事労務ワンポイント解説   

Q

働き方改革の法律が施行開始されていますが、それに伴い就業規則の改定が必要になると聞きました。見直しが必要な内容について具体的に教えてください。

A

昨年、働き方改革関連法が成立し、今年の4月から順次施行開始されています。しかし、就業規則についてはまだ手つかずの企業も多く、どのような見直しが必要なのかわからないという中小企業の経営者や人事労務担当者が多いのが実情だと思います。働き方改革関連法と就業規則の見直しについて以下、考えてみましょう。

働き方改革関連法の項目と施行時期

 働き方改革関連法の主な項目とそれぞれの施行期日をまとめると以下のようになっています。

 

年5日の年次有給休暇の確実な取得(2019.4~)

 法改正関連項目のうち、就業規則の変更が必須といえるのは年次有給休暇(以下「年休」)に関する規定です。法改正に伴い、年休が10日以上付与される従業員に付与日から1年以内に少なくとも年5日の年休を取得させなければなりません。
 そのため、会社から社員に対し年休取得の時季指定を行う必要が生じます。休暇に関する事項は就業規則の絶対的必要記載事項(労基法第89条)なので、時季指定対象になる労働者の範囲及びその方法等について就業規則に定める必要があるのです。
 以下は、その一規定例です。

(規定例)年次有給休暇
・・・
○項 会社は年次有給休暇が10日以上付与される社員に対し、付与日から1年以内に、その有する年次有給休暇のうち5日を限度として、時季を指定して取得させることができる。時季指定にあたっては社員の意見を聴取し、その意見を尊重するものとする。

 なお、時季指定については時間単位の年休は対象になりませんが、社員が希望した場合には会社は「半日単位」で時季指定をすることが可能です。「半日単位」の年休制度を導入していない企業では、これを機に、同制度の実施を検討するのも良いでしょう。

(規定例)半日単位年休
〇項 社員が希望し、会社が同意する場合、半日単位で年次有給休暇を与えることができる。

 この他に、年休の計画的付与を新たに実施する場合には、これを就業規則に規定するとともに、「計画的付与に関する労使協定」を締結します。

(規定例)年休の計画的付与
〇項 労使協定を締結した場合、各従業員の保有する年次有給休暇のうち5日を超える部分について、あらかじめ時季を指定して取得させることがある。

 社員自らが請求・取得した年休(時間単位で取得した年休を除く)、また計画的付与で取得させた年休については、年5日の確実な年休取得からその日数分を控除することができます。

労働時間の上限規制関連(大企業2019.4~。中小企業2020.4~)

 働き方改革では「働き過ぎ」の防止や「柔軟な働き方」を実現するために労働時間法制の大幅な見直しが行われました。
 残業時間の上限規制について、月45時間、年360時間を上限(原則)とした上で、臨時的な特別の事情がある場合は月100時間未満(休日労働含む)、年720時間以内、複数月平均80時間以内(休日労働含む)といった罰則付の規制が法律で明文化されました。
 事業場毎の残業の上限時間数の設定は、就業規則に定めるのではなく、毎年の労使協定(36協定)で見直すことになります。就業規則では以下のような規定があればよいでしょう。

法定の労働時間を超え、又は法定の休日に勤務させる場合は、事前に労使協定を締結し、これを所轄労働基準監督署長に届け出るものとする。

 なお、残業時間の上限規制では(法定)休日労働時間を含む場合と含まない場合で計算や管理が異なります。残業が多く上限時間の管理に気を遣う必要のある企業の場合、以下のように法定休日を特定することで時間外・休日労働時間の計算や確認が容易になるケースが考えられます。

(例) 第〇条 法定休日は毎週〇曜日とする

勤務間インターバル制度(努力義務。2019.4~)

  勤務間インターバル制度について、「事業者は、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保に努めなければならない」とされました(改正労働時間等設定改善法2条1項)。
 勤務間インターバル制度を就業規則に規定する際には、休息時間(インターバル)の終了時刻が翌日の所定始業時刻以降になった場合の労働時間の扱いについて2つの規定パターンが考えられます(上図と下記規定例を参照)。

第〇条 勤務終了後、次の勤務まで間には○時間の継続した休息時間を与える。休息時間の終了時刻が次勤務の所定始業時刻以降に及ぶ場合は、
(a)当該始業時刻から休息時間終了時刻までの間は労働したものとみなす。(又は)
(b) 次の勤務の始業時刻を当該休息時間終了時刻まで繰下げる。

労働時間の状況の把握義務(2019.4)

 労働安全衛生法の改正で労働者(管理職やみなし労働対象者含む)の「労働時間の状況の客観的な把握」が必要になります。そして月80時間(従前は100時間)を超えた時間外・休日労働をした労働者から申出があれば、会社は医師による面接指導を受けさせなければなりません。 厚生労働省のモデル規定の最新版では以下のように規定しているので参考にすると良いでしょう。

(長時間労働者に対する面接指導)
第〇条  会社は、労働者の労働時間の状況を把握する。
2 長時間の労働により疲労の蓄積が認められる労働者に対し、その者の申出により医師による面接指導を行う。
3 前項の面接指導の結果必要と認めるときは、一定期間の就業禁止、労働時間の短縮、配置転換その他健康保持上必要な措置を命ずることがある。

その他

 働き方改革関連法ではフレックスタイム制の清算期間の拡大(1ヶ月→3ヶ月)、高度プロフェッショナル制度などが規定されました。

 フレックスタイム制を新たに導入する場合や清算期間を拡大して適用する場合は、就業規則の改定、労使協定の整備が必要になります。
 高度プロフェッショナル制度を導入する中小企業はまだ少ないと思いますが、同制度を導入する場合には、就業規則の定め、法律に定める企業内手続き(労使委員会の決議や本人の同意等)、また新たな規制の枠組みに基づく健康確保措置などが必要です。

 本稿では省略しますが、短時間・有期雇用者と正規雇用者との不合理な待遇の禁止(いわゆる『同一労働同一賃金』)を規定したパート有期労働法、労働者派遣法の改正(大企業2020.4、中小企業2021.4施行)に対しては、賃金体系の見直し等を含め正規・非正規社員間で公正な待遇が確保できているか会社規則全般の見直しが必要になる企業も多いと考えられます。

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