1. 賃金・評価などの人事コンサルティングならプライムコンサルタント
  2. プライム Cメディア
  3. WEB連載記事
  4. ホワイト企業の人事労務ワンポイント解説
  5. 労働時間の状況の把握義務と面接指導制度

プライムCメディア

労働時間の状況の把握義務と面接指導制度

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
労働時間の状況の把握義務と面接指導制度

米田徹先生のプロフィールはこちら

第25回 ホワイト企業人事労務ワンポイント解説   

Q

当社では課長以上の管理職は時間外・休日労働の割増賃金の支払い対象外なのでタイムカードの打刻等はさせていません。
今般、働き方改革関連法で管理職を含め、すべての社員の労働時間の把握義務が課せられたと聞きましたが、どのような法律改正なのでしょうか。

A

働き方改革の目玉ともいえる重点施策が「労働時間法制の見直し」です。政府は働き過ぎを防ぐことで、労働者の健康を守り、多様な「ワーク・ライフ・バランス」を実現できるようにするとしています。
見直し策の一つとして、今年の4月から企業には雇用する労働者の労働時間の状況を客観的に把握することが義務づけられました。労働者の健康管理を強化することが狙いです。以下、内容を見ていきましょう。

長時間労働に対する面接指導制度の強化

 働き方改革に関連した法律では労働基準法以外に労働安全衛生法(安衛法)に改正がありました。同法に定められている医師による面接指導(66条の8)は、長時間労働やストレスによる脳・心臓疾患やメンタル不調を未然に防止すること、あるいは適切に対応することを目的としています。
 具体的には、長時間労働をした労働者からの申出に基づき医師が面接指導を行い、事業者は、医師の意見を聴いた上で当該労働者の健康を保持するために必要な適切な措置を講ずるものです。
 今回、この医師による面接指導の要件について時間外・休日労働時間数に以下の改正がありました。

 なお、上記②の「疲労の蓄積がある」については客観的な判断がしづらいため、労働者自らが③の面接指導の申出をしたことで「疲労の蓄積がある」と取り扱うこととされています。従って、1ヶ月当たり80時間を超える残業があった労働者(管理監督者を含む)から申出があった時点で会社は「遅滞なく(概ね1ヶ月以内)」医師による面接指導を実施する必要があります。

 また、これまでは長時間労働をした労働者に対する情報の通知義務に関する規定はありませんでしたが、今回の改正によって、1週間あたり40時間を超える労働時間が月80時間を超えた労働者に対して、会社は「速やかに(概ね2週間以内)」その旨を本人に通知する義務が課せられました。

  会社に通知義務を課すことで対象労働者に医師による面接指導を受ける機会を十分に確保させることが狙いです。通知方法は書面、電子メールなどが適当ですが毎月の給与明細に時間外・休日労働時間数が記載されている場合はそれでもかまいません(注:同時に、社員数50人以上の産業医がいる事業場では月80時間超の残業があった労働者の情報を産業医に提供しなければなりません。この時間数も従前の100時間超から80時間超に変更されています)。

労働時間の状況の把握義務

 労働基準法では、時間外労働、休日労働の時間数などを正確に把握して適正に時間外割増賃金や休日割増賃金が支払われることが必要なため、それらを記載した賃金台帳の作成・記載義務などが定められています。しかし、同法では管理監督者や裁量労働制のみなし労働時間制適用者(以下、管理監督者等)は、時間外労働や休日労働の時間数を把握する対象から外れています。

 一方、安衛法が定める医師による面接指導制度は管理監督者等も対象になりますが、法改正前は管理監督者等が100時間を超える長時間残業を行い、かつ疲労の蓄積があると本人が判断した際に、自ら面接の申出をするものとされていました。

 しかし、管理監督者等について会社が労働時間の状況を一切把握せず、時間数の判断を労働者に委ねる取り扱いでは、医師による面接指導を適切に行うことは困難です。そこで、今回の安衛法改正では、管理監督者等を含め、すべての労働者(高度プロフェッショナル制度適用者を除く)について、労働時間の状況を一定の方法で把握しなければならないとされました。そして、事業者は把握した労働者の労働時間の状況について記録を作成して3年間保存する措置を講じなければなりません。

労働時間状況の把握方法

 安衛法で求められる労働時間の状況の把握については、「厚生労働省令で定める方法」によると法で規定され、省令では「タイムカードによる記録」、「PC等の使用時間の記録」等の客観的方法、「その他の適切な方法」と定められました。

 「その他の適切な方法」として、「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」には、労働者の「自己申告」による方法も認められますが、その場合、会社は労働者に対し十分な説明を行うなど省令に定められた措置をすべて講じた上で行う必要があります。

 また、「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」とは外回りの営業などが社内システムにアクセスすることが困難な外出先で行う業務に直行又は直帰する場合などに限定されます。

 タイムカードやPC使用記録などで労働時間が把握出来る場合であるにもかかわらず、自己申告による把握のみにより労働時間の状況を把握することは認められないというのが厚労省の見解です。

 今回、安衛法で規定された労働時間の状況把握義務は、医師による面接指導の実効性の確保を目的とするものです。したがって管理監督者等については一般の労働者における労働時間把握のような数字的な厳密さが求められるわけではないようにも思われますが、実務的な対応としては、一般の労働者に行っているのと同等程度の労働時間管理を行うことがリスク回避の観点で無難と考えられます。

 例えばタイムカードによる労働時間管理が行われている事業場であれば、管理監督者等についても同様の方法により労働時間の状況の把握を行うのが望ましいといえるでしょう。

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

カテゴリ