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メンタル不調者のリハビリ出勤制度

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メンタル不調者のリハビリ出勤制度

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第23回 ホワイト企業人事労務ワンポイント解説   

Q

メンタル不調で休職中の社員が、医師から「復職は可能だが、体調に配慮して復帰させることが望ましい」との診断書を提出してきました。
本人は現在、傷病手当金(健康保険)を受給中で本当に職場復帰できるのか会社としては不安視しています。そこで、まずは職場復帰前(休職期間満了前)の軽微な作業によるリハビリ(試し)出勤をさせて復帰が可能かの判断をしたいと考えています。当社の就業規則にはそのような規定はありませんが、どのように対処したらよいでしょうか。

A

メンタル不調で休職中の従業員を職場復帰させる際、業務内容を一定期間軽減する等、リハビリ勤務をさせる期間を置く企業は少なくないと思われます。
厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(平成21年3月改訂)でも、職場復帰のステップの一つとして「試し出勤制度」を勧めています。
ただ、やり方は多様で法的なルールも明確ではないため、各企業では手探りで運用しているところが多いのが実態のようです。

リハビリ出勤制度とその種類

 前述した厚労省の手引きによれば、リハビリ出勤(試し出勤制度等)として、次の3通りの方法が紹介されています。

(1)模擬出勤:通常の勤務時間と同様の時間帯にデイケア等で模擬的な軽作業やグループミーティング等を行ったり、図書館で時間を過ごしたりする。

(2)通勤訓練:自宅から職場付近まで通常の通勤経路で移動し職場付近で一定時間過ごした後帰宅する。

(3)試し出勤:本来の職場などに、試験的に一定期間継続して出勤する。

 このようなリハビリ出勤を実施することは、職場復帰の可否判断を会社がする上で役に立ちますし、労働者にとっても職場復帰に対する不安を緩和し、元の仕事への復帰が可能かを本人自らが確認できるといった点で労使双方にメリットがあると考えられます。
 実際に社員のリハビリ出勤を実施する場合には、その運用として次の2通りの措置が考えられます。

①   職場復帰前の休職中の措置として実施

② 職場復帰を認めた後の元の業務に復帰するまでの業務軽減措置として実施

 ①の場合は、あくまで休職期間中の「リハビリ」としての出勤なので、使用者の指揮命令下で働かせるわけではなく、その間は雇用関係ではなく賃金も支払われません(その代わり、医師が認めれば傷病手当金支給は継続される可能性があります)。また、リハビリ中に病気が悪化等しても、使用者は責任を負わず、労災も適用されない(原則)ことになります。
 ②の形態の場合には勤務(労働)となり、労働法が適用されて賃金が支払われ、労災も適用されることになります。この形態のリハビリ勤務の場合、勤務の軽減に相応して賃金が減額され、仮にリハビリ勤務の日に支払われる賃金が傷病手当金より少額であったとしても、健康保険から差額の支給は行われません。
 このように、リハビリ出勤では運用形態によって賃金支払いの有無、労災適用の有無などが変わってくるので、労使トラブルが発生しないように、予めきちんと実施方法を決めてスタートする必要があります。

リハビリ出勤の実施方法

 今回のご相談者の場合もそうですが、リハビリ出勤を就業規則などで明確にルール化している企業はまだ少ないと考えられます。現在のところ、企業は、リハビリ出勤制度を設けたり、実施する義務までは負っていませんので、安易にリハビリ出勤の制度導入をすることは企業にとって得策とはいえないでしょう。
 それでも、同制度は労働者の職場復帰率を高める効果が期待できるため、実施する場合には、本人と会社間で「リハビリ出勤」に関する合意書(または覚書等)を作成して実施するのが望ましいと考えられます。

 今回のご相談の場合、合意書に含むべき内容として以下があげられます。

① 復職可否を判断するための出勤のため、労働ではなく賃金は支給しない(労災保険の適用もない)

② 実施期間と実施内容

 まず、合意書では試し出勤中の作業は労務の提供ではなく、したがって賃金も支給しないことを明確にします。但し、労働であるか否かは労働基準法第9条の労働者概念(「使用される者で、賃金を支払われる者」)に該当するか否かによって客観的に決まり、当事者間で自由に決めることができるわけではない点に注意が必要です。

ハートのクローバー.jpg

 そこで、リハビリ出勤はあくまで訓練と位置づけ、会社から本人に仕事の指示をすることは禁じ、就業時間の中で本人の判断で自由に帰って良いといったように労務管理の対象としていないことを明確にして実施します。また、リハビリ期間の作業が会社の利益と直接つながっていれば労働者性が肯定されやすくなるので、あくまで訓練作業で、労務の提供を受けたわけではないと主張できるようにしておくことが大切です。
 実施期間についても2週間から1ヶ月程度以内と短期にすべきで、期間が必要以上に長いと社員からの賃金請求リスクも高まることになります。

 以上、本稿では復職前の休職中の措置としてのリハビリ出勤の場合の例を中心に説明しましたが、もちろん、復職を認めた上で、業務の内容を軽いものに代えたり、勤務時間や勤務日数を減らして行うことも可能です。

 リハビリ出勤を実施する場合、対象社員をどのような形態で出勤させるのが良いか、企業としても慎重に検討した上で実施することが望まれます。

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