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仕事と育児との両立支援制度について

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仕事と育児との両立支援制度について

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第80回 ホワイト企業人事労務ワンポイント解説   

Q

育児休業を終えてまもなく職場復帰する社員がいます。職場復帰後の仕事と育児との両立支援について、どのような制度があるのか質問されました。
当社として固有の優遇制度などは設けていませんが、短時間勤務制度など法律で定められた制度について、人事総務部門が知っておくべき事項についてご教示ください。

A

少子高齢化という社会構造の中で、労働者が出産・育児と職業生活を両立させていくことは極めて重要です。国は「育児介護休業法」を制定し、男女ともに育児・家事を担いつつ仕事やキャリアの両立を支援する制度を企業に求めています。
直近では、育児休業を中心にした大規模な改正(産後パパ育休や育児休業の分割取得など)が2022年4月から段階的に施行されました。育児休業は子どもが1歳になるまで取得可能ですが、保育所等に入所できないなどの理由で特に必要と認められる場合には1歳6か月、更に2歳になるまで認められます。
本稿では、育児休業を終えて職場復帰する労働者などに対する仕事と育児の両立支援について、法律でどのような制度が規定されているかについて整理して解説します。

育児短時間勤務制度の内容

 育児短時間勤務制度は、3歳未満の子を養育する労働者が所定労働時間を短くして勤務することができる制度です。但し、元の所定労働時間が一日6時間以内の者は対象になりません。

 短縮措置は1日の所定労働時間を原則として6時間とする措置を含む必要があります。たとえば、1日の所定労働時間が8時間の労働者の場合、1日6時間の短縮勤務は認められますが、7時間勤務や5時間勤務等が可能かは会社の定めによることになります。

 なお、労使協定を締結し短時間勤務の適用除外が認められるのは、以下の3ケースです。

①雇用期間が1年未満の者
②短縮措置を講じないことについて合理的な理由があると認められる場合(例:1週の所定労働日数が2日以下等)
③業務の性質や実施体制に照らして、短縮措置が困難と認められる業務に従事する労働者(③の場合には、事業主は就業と養育を容易にするためにフレックスタイム制、始業・就業時刻の繰上げ・下げ等の措置を講ずる必要があります)

 育児休業等を終了した労働者が3歳未満の子を養育しながら短時間勤務で職場復帰する場合、申出により復帰後3ヶ月間の報酬の月平均額で報酬月額を下げる制度(社会保険料が減額)が利用できます。この場合、記録上は従前の高い標準報酬月額とみなす特例があり、将来受取れる年金が減額される等の心配はありません。

所定外労働・時間外労働・深夜業の制限

 3歳に満たない子を養育する労働者が請求した場合、原則として所定労働時間を超えて労働させることが禁止され、会社は「残業」を命じることはできません。育児期の労働者にとって「短時間勤務制度」と並んで、「残業の免除」はニーズが高く、育児介護休業法で事業主に設置が義務づけているものです。

 さらに小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が請求した場合には、「時間外労働の制限」により原則として制限時間(1月について24時間、1年について150時間)を超えて労働させることが禁止されます。

 同様に小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が請求した場合、原則として深夜(午後10時から午前5時まで)の労働をさせることはできません。

 以上の「所定外労働・時間外労働・深夜業の制限」は、「事業の正常な運営を妨げる場合」や雇用期間が1年未満、または週の所定労働日数が2日以下の労働者等については、制限が除外される場合があります。

子の看護休暇とは

 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者は、1年に5日(子が2人以上の場合は10日)の看護休暇を取得することが可能です。

 看護の理由として認められるのは、負傷しまたは疾病にかかった子の世話または疾病予防のために予防接種、健康診断を受けさせる場合となります。看護休暇は1日に限らず、時間単位で取得することが可能です。

 なお、子の看護休暇は有給を義務づけてはいません。厚生労働省の令和3年度調査によると、子の看護休暇制度の規定がある事業所のうち、「無給」と答えた事業所は65.1%、「有給」は27.5%、「一部有給」は7.4%という結果でした。

 以上を整理すると、子の出生から小学校就学始期までの法で規定される就労と育児の両立支援制度は次図のようになります。

 

 事業主は、労働者がこれらの支援制度を申請し、又は措置が講じられたことを理由として、当該労働者に対して、解雇その他不利益な取扱いをすることは法で禁じられています。

今後の動向について(テレワークの活用が努力義務に) 

 厚労省設置の労働政策審議会では仕事と育児・介護の両立支援対策の充実を審議し、昨年12月に厚生労働大臣に建議を行いました。

 その内容も踏まえ、政府は2024年3月12日に、育児介護休業法の改正案を閣議決定し、国会に提出しました。改正案では男性の育児休業取得率開示を義務付ける企業を1,000人超から300人超に拡大し、100人超の企業には取得率の目標値の公表を義務付けます。

 また、子が3歳になるまでテレワークで働ける環境を整えることを事業主の努力義務とするほか、残業免除は小学校就学前までに延長し、看護休暇の取得理由を緩和(子の行事なども理由に追加)します。

 育児介護休業法は度重なる法改正で、制度がめまぐるしく変わってきましたが、今後の法改正の行方に注目が必要です。

 

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