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管理監督者の労働時間管理について

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管理監督者の労働時間管理について

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第70回 ホワイト企業人事労務ワンポイント解説   

Q

 当社は従業員数約100名の中小企業で、課長職以上約10名を管理職としています。その中のある課長から、管理職には残業代が払われず、労働時間も自由裁量で決められるはずだから、タイムカードを打刻する必要はなく、休日出勤の振替え処理も不要ではないかとの意見が出されました。
 当社の就業規則では、管理職には労働時間、休憩および休日に関する規定は適用しないとしていて、残業代の支払いがない一方で、遅刻・欠勤等の控除もありません。当該社員の主張について会社はどのように対応すればよいのでしょうか。

A

 どこの企業でも、残業代が支払われない管理職社員が一定数いるのが一般的と考えられます。残業代を支給しないのであれば、労基法上の管理監督者である必要があると考えられますが、管理職の労務管理については会社毎に対応が異なる場合や、その扱いに誤解がある場合もあるようです。
 本稿では、「管理監督者」の労働時間管理について検討します。 

 

管理監督者とは何か

 多くの会社では、「課長等の管理職になれば残業代は払わなくて良い」等と安易に解釈されていますが、会社が管理職としてそのような運用をしていても、それはあくまで会社内部のことでしかありません。時間外労働があるのに残業代を支払わないのであれば、法的にも、管理監督者に該当する必要があります。 

 行政通達によると、管理監督者とは「一般的には、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意であり、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきものである」としています(昭和22913日基発17号)。しかし、これはいささか曖昧な表現で、労基署の許可や届け出が必要なわけでもなく、会社毎に管理監督者の扱いや解釈はまちまちになっているのが実態といえます。 

 管理監督者については、裁判の傾向と行政の解釈にも微妙な違いがあり、問題は一層複雑といえます。平成20年に判決が出た、「日本マクドナルド事件」における「名ばかり管理職」の問題は社会的にも大きな反響を呼びました。同判決では、訴訟を起した店長は、店舗の運営において重要な職責を負ってはいましたが、会社の経営にコミットできるような立場にはまったくなく、法的な「管理監督者」とはいえず、残業代を支払わないとする会社の取扱いを違法としました。 

 このように裁判例においては「管理監督者」の認定に厳しい判決が示されていることを会社は知っておくべきでしょう。しかし、多くの会社における人事管理上の措置として、課長職以上を管理職と呼称し、残業代を支払わない代わりに、職責に見合った管理職手当を支給して処遇することは、本人の仕事へのモチベーションや経営参画意識の向上に資するとも考えられます。 

 

労働時間、休憩、休日に関する適用除外の意味

 相談者の会社の課長職以上が、労基法上の管理監督者に該当するか否かは別として、ご相談のあった課長の発言を検討してみましょう。確かに、管理監督者は法的には労働時間、休憩および休日に関する規定は適用除外となります(ただし、深夜勤務割増は支払う必要があります)。 

 労働時間や休憩時間の規定が適用除外ということで、管理職には「所定労働時間」という概念がないと考えている会社は多いかもしれません。しかし、これは誤った考え方で、労働時間についての適用がないという意味は、「18時間を超えて労働させてはいけない。」とする制限規定の適用がないというだけであって、管理監督者にも所定労働時間の定めは必要で、通常は一般の社員と同じと考えられます。 

 管理監督者は、出社や退社について厳格な制限を受けないため、遅刻などをしても賃金カットされることはありません。しかし、職場の秩序を維持するためには、定められた始業時間や終業時間を守るのが原則であり、始業・終業時間を守らなくて良いと言うわけではない点には注意が必要です。 

 休日の管理についても管理監督者は適用が除外されています。しかし、その意味は、一般社員には必要な法定休日(原則、週一日)付与の規制を受けないだけで、管理職にも(労働義務を負わない)休日は必要です。したがって、お尋ねの休日の振替処理についても、管理職である以上、これを一般社員と同様に扱う(振替を強要等する)ことは適切とは言えませんが、休日勤務する日を他の労働日に振り替えたり、代休を付与する措置は過重な労働を避け、休息日を確保する目的で実施することには意義があるといえます。 

 なお、管理監督者であっても、年次有給休暇に関する規定は適用されます。前年度における出勤率が8割以上であれば、年次有給休暇を与え、かつ年間5日以上の有給休暇取得が義務付けられます 

管理職であっても労働時間の状況把握は必要

 さて、管理職は労働時間について適用が除外されるので、タイムカードを打刻する必要がないとする主張を考えてみます。その点、労働安全衛生法では、事業者は長時間にわたる労働をした者に対する医師の面接指導を実施するため、管理監督者を含めすべての労働者(高度プロフェッショナル制度適用者は除く)について、「労働時間の状況」を一定の方法で把握しなければならないとされています。同法で求められる「労働時間の状況の把握」について、省令では「タイムカードによる記録」、「PC等の使用時間の記録」等の客観的方法、「その他の適切な方法」と定められています。 

 「その他の適切な方法」として、「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」には、労働者の「自己申告」による方法も認められますが、相談者の会社の管理職は該当しないものと考えます。安衛法で規定された労働時間の状況把握は、従業員の健康管理のための労働時間の状況の把握義務なので、割増し賃金支払いのための労働時間把握のような数字的な厳密さが求められるわけではないようにも思われますが、実務的な対応としては、一般の労働者に行っているのと同等程度の労働時間管理を行うことが適切といえます。 

 タイムカードによる労働時間管理が行われている事業場であれば、管理監督者についても同様の方法により労働時間の状況の把握を行うのが望ましいといえるでしょう。 

 

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