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定年後再雇用者の処遇とトラブル防止

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定年後再雇用者の処遇とトラブル防止

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第72回 ホワイト企業人事労務ワンポイント解説   

Q

 当社は約20年前に創業したIT関連企業ですが、当初は若かった社員も、今後、定年(60歳)を迎える社員が多く見込まれる状況です。
 個人差(適応力、健康など)も大きく、70歳まで元気で働いて欲しい社員がいる一方で、定年後の継続再雇用を拒否したいような社員もいます。
 高年齢社員とのトラブルを予防しながら定年後再雇用を円滑に進めていく上での留意事項やアドバイスをお願いします。

A

 「65歳までの雇用確保措置」がすべての企業に求められることは、広く知られるようになりました(高年齢者雇用安定法)。さらに、2021年4月からは「70歳までの就業機会の確保措置」が努力義務化されました。高年齢社員の経験と知識を活かしながら、労働力の安定確保を図ることが企業にとって益々重要になっていると言えます。
 高年齢社員の定年後再雇用についての労働条件やトラブルの防止について、いくつかのポイントについて留意すべき事項を検討します(以下、定年年齢を60歳として解説します)。

 

定年で再雇用を拒否することができるケースは?

 65歳までの雇用確保措置については、希望者全員を対象にすることが原則になりますが、解雇・退職事由がある問題社員まで、すべて継続再雇用しなければならない訳ではありません。

 以下のような規定を置いている就業規則は多いと思います。このような規定があれば、再雇用を拒否することが可能なので、自社の就業規則を確認してください。

(就業規則)定年後の再雇用

第○条 60歳定年後も引き続き雇用されることを希望する従業員については、65歳まで継続再雇用する。ただし、第×条に規定する「解雇事由」に該当する者については、定年をもって退職とし継続再雇用は行わない。

 ただし、これまで解雇しなかった社員に定年をもって再雇用を拒否する場合には、定年前からきちんと問題点を具体的に指摘し、改善の機会を与えることが重要と考えられます。そうした上で、問題点の改善がされず、業務に大きな支障を来していること等の証拠を取りそろえておけば、再雇用拒否が可能になります。

 能力や勤務態度に問題がある社員以外に、病気で休職中の社員が定年を迎えるといったケースも想定されます。例えば、定年時点で休職期間がまだ3カ月残っているといった場合に、定年後の再雇用をしないといった扱いができるのかは「休職規定」の定めによります。

 そこで、トラブルにならないように、就業規則の休職規定では、以下のような定めをしておくことが考えられます。

(就業規則) 休職規定

第△条・・・。なお、休職期間中に定年年齢に達する場合には、休職期間の満了日は、定年退職日とする。

 このような規定があれば、定年時点で休職期間満了になり、復職が困難な健康状態であれば、解雇事由又は退職事由に該当することが明らかになり、定年後再雇用を拒否することが可能になります。


社員によって労働条件を変更したい場合

 定年後の再雇用契約において社員毎に労働条件を変えたいといった相談を受けることがよくあります。法が使用者に求めているのは、65歳までの安定した雇用であって、使用者は労働者の希望に合致した労働条件(給与、勤務時間、職種等)を提示する義務まで負っているわけではありません。

 したがって、継続再雇用時の労働条件は原則として会社が自由に設定できると考えられます。たとえば、個々の社員に対して、定年前より勤務日数・時間を減らす、低い賃金を提示する、異なる職種への配置転換など、様々な条件が可能です。

 ただし、定年まではホワイトカラーの業務に従事していた社員に、短時間かつ低賃金の軽易な作業を命じるような場合には、本人から強い反発を受ける可能性も予想されます。しかしながら、そのような場合でも、本人の能力が低く、継続雇用するのであれば、そういった業務しか任せられない、といった合理的な理由を会社が示せれば、提示する条件は有効で、もし社員が承諾しなければ、定年後の労働契約は不成立になります。

 定年後再雇用時の賃金設定については、労使共に関心の高い事項といえます。多くの企業では、高年齢者については正社員に多くみられる年功型賃金から、能力、職務等の要素を重視する賃金に移行する場合が多く、一般的には、会社は定年前の6~8割程度の賃金を提示するケースが多いようです。

 その際、トラブル防止の観点でパート・有期労働法の「均衡待遇(第8条)」に配慮する必要があります。同法では、「通常の労働者の待遇との間において、職務の内容、配置の変更範囲、その他の事情を考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない」としています。賃金を大幅に減額するのであれば、定年前後で仕事の内容や責任を軽減するといった措置を講じることが重要です。これにより、再雇用者の不満を抑えつつ、賃金に対する納得感を高めることができます。


65歳以降の継続雇用の基準について

 労働力人口が減少する中で、企業も経験豊富で有能なベテラン社員の活用に本腰を入れざるを得ない状況にあります。65歳以降も継続して働いてもらいたいといったニーズは今後一層高まると考えられますが、全員一律にというわけにはいかず、基準を設けて、対象者を選別せざるを得ない状況も想定されます。

 対象者の基準を設ける場合は、具体的で客観性のあるものでなければならず、恣意的に高年齢者を排除しようとするなど法の趣旨に反する、又は公序良俗に反するものは認められません。厚労省では適切でない例として、 「会社が必要と認めた者に限る」「男性(女性)に限る」などをあげています。

 そこで、65歳以降の継続雇用基準として以下のような規定例が考えられます。

例:(65歳以降の継続雇用基準)
第○条 次の各号のいずれも満たす者、又は会社が特に必要と認める者

(1)本人が継続雇用を希望し、直近の健康診断の結果、業務遂行に支障がない者
(2)直近3年間の人事考課がいずれも○以上の者
(3)直近3年間の出勤率が○%以上の者

 上記の例で、「又は会社が特に必要と認める者。」という部分は客観性を欠くと思われるかもしれませんが、明確な基準((1)~(3))を示した上で、これを満たす場合には継続雇用を保障しています。その上で、これらの基準を満たさない場合でも、会社が必要とする場合、継続雇用することがあると対象者を拡大する意味ですから、法的な問題はないと考えられます。

 会社が特に必要とする人材の場合、65歳以降も継続雇用が可能なように規定しておくことは、会社にとってメリットが大きいと言えるでしょう。

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