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出張時の労働時間の算定について

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出張時の労働時間の算定について

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第22回 ホワイト企業人事労務ワンポイント解説   

Q

当社は中小企業ですが、遠地の顧客との打合せで初めて内勤社員を出張させることになりました。原則として宿泊は認めないので、社員は自宅から早朝に出発し、帰宅も夜遅くなることが想定されます。社員からは移動時間を含め時間外労働の割増し賃金が支払われるのか質問がでました。
今後も同様のケースが増えそうな状況ですが、会社としてどのように対応すればよいでしょうか。

A

日帰りで遠隔地への出張が命じられたような場合、社員にとっては、その一日は早朝から夜間まで会社のために拘束された一日となるので、往復の乗り物に乗っている時間を含めて、労働時間がどのように扱われるのか気になるのは当然でしょう。
会社としても、社員が納得するように労働時間の扱い等をきちんと説明し対応する必要があります。

出張中の勤務と事業場外みなし

近地出張や遠地への日帰り出張の場合、その日の労働については特に時間外割増賃金を支払っていない会社が多いと思います。これは会社が労基法で規定される「事業場外労働のみなし労働時間」に基づいて、その一日は所定労働時間働いたものとして扱っている場合が多いからだと考えられます。

労働基準法 第38条の2第一項
労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。・・・

 事業場外みなしは、営業職のような自己裁量で外回りする外勤社員に適用する場合が多く見受けられますが、内勤の者であっても出張した日の労働時間は把握し難いため、就業規則に「従業員が出張し、労働時間を算定し難いときは、その日は所定労働時間労働したものとみなす。」といった規定をもうけることで「事業場外みなし」として扱うことが可能です(この場合、労使協定の締結等は不要です)。
 ただし、管理者と一緒に同行出張する場合や、会社から訪問時刻や帰社時刻等の具体的指示を受けて指示通り業務に従事する場合などは、会社が別段の指示をした場合となり、「労働時間を算定し難い時」にはあたりません。そのような場合には、実際に労働した時間を前提にその日の労働時間を算出する必要があります。

列車等の乗車時間の扱い

 次に、出張の際の往復の途中の乗り物に乗っている時間の扱いについて考えてみましょう。例えば会議出席のため決められた時刻までに目的地に着くために新幹線、航空機等に乗るよう指示を受けたといった場合です。使用者からの出張命令に基づくものですから、社員から労働時間として認めて欲しいといった要望がでることが想定できます。
 しかし、乗り物に乗ってるので自由行動ができないという一定の場所的拘束を受けていても、移動中に果たすべき用務が命じられているわけではありません。一般に「労働時間」とは「使用者の作業上の指揮監督下にある時間または使用者の明示または黙示の指示によりその業務に従事する時間」(三菱重工業長崎造船所事件。最一小判平12.3.9)とされています。
 移動中、到着までの間は眠っていようが、飲食しようが、読書しようが自由ですから、使用者の指揮監督下にある時間とはいえず、通常の通勤時間、あるいは事業場内での休憩時間と同様に考えられ労働時間には該当しないと解されます。
したがって、会社の物品、機密書類等を運搬することが必要で、それらを無事支障なく送達することが出張の目的であるような場合には移動時間も含め労働時間に該当しますが、通常の出張の場合の移動時間は労働時間とはいえず、前述の事業場外みなし規定の適用となる「労働時間」にも含まれないことになります。

 日当(代償措置)の支給

  以上のように、日帰り出張では早朝または夜遅くまで時間拘束される場合であっても、通常は事業場外みなしの所定労働時間勤務として扱い時間外割増し賃金は支払われないことになります。
 しかし、それだけでは出張を命じられた社員に不満が残るでしょうから、多くの会社では一定の条件を設けた上で1,000~3,000円程度の日当(非課税)を支給している例が多いと思います。この場合、日当は出張に伴う精神・肉体的疲労に対する慰労や諸雑費(昼食代等の実費弁済)の補填の意味合いを持つと解されます。

 以下は出張日における日当支給の一例です。

(例)以下の日帰り出張の場合、日当を支給する。
・出張に要する時間が6時間以上または出張先が片道100km以上にある地域に出張するとき
・午前6時以前に出発したとき又は午後9時以降に帰着したときはそれぞれ半日分の日当を加算して支給する

  今回の社員の質問に対しては、出張日における往復の移動時間は労働時間には該当しない旨を丁寧に説明してください。
 日当を支給する場合の金額については、税務調査等で問題にならないように常識的な範囲を超えないことが必要です。同業種・同規模の他社と比較して妥当な範囲で、また支給する従業員から役員のすべてを通じて適正なバランスを考慮して決定することとし、旅費規程など社内の公式なルールとして定めて運用するのがよいでしょう。

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