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「無期転換ルール」の開始と会社の対応について

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「無期転換ルール」の開始と会社の対応について

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第8回 ホワイト企業人事労務ワンポイント解説   

Q

4月から、有期雇用者の「無期転換」が本格化すると聞きました。当社にも対象になりそうなパート社員が数名いますが、会社としてどのように対応したらよいのか、またその際の留意事項について教えてください。

A

有期労働契約の無期転換ルールについては新聞等マスコミでも多数報道され、多くの企業では、その準備や対応について具体的な検討が進んでいるものと考えます。しかし、本制度は従前にはない、まったく新しい法制度であり、特に、中小企業では、何をすればよいのかと頭を悩ませている会社もあると思います。「無期転換申込」の本格化が予想される平成30年度がスタートしたので、会社の対応と留意事項について以下考えてみます。

無期転換申込と無期転換ルール

 4月から「無期転換申込」の本格化が予想される理由を復習しておきます。このルールは平成25年施行の改正労働契約法(18条1項)の規定によるものです。

 すなわち「有期労働契約が反復更新され、通算5年を超えた場合、労働者の申し込みにより、期間の定めのない労働契約に転換される」という内容です(無期労働契約に転換されるのは申込時点ではなく、その有期労働契約が終了する日の翌日からになります)。

 この申込みを会社が拒むことはできず、労働者にとって強力な権利といえます。
 契約期間のカウントは平成25年4月1日以降に開始した契約からになるため、本年4月以降にその申込権利発生が本格化することが想定されます。(下図参照)

米田先生4月号挿入図.JPG

無期転換申込み、会社の説明義務は?

 さて、労働者からの無期転換の「申込み」タイミングですが、有期契約の通算期間が5年を超えた場合に、その契約期間の初日から末日までの間、いつでもすることができます。

 申込方法についての規定等はないので口頭受付も可能です。ただ、契約期間の最終日に突然口頭で申し込まれても、会社としては対応が難しいでしょうから「無期転換の申込みは、本契約が満了する日の原則〇カ月前までに会社所定の書面で申込むこと」といったルールを作って、対象社員に事前に説明し協力を求めておくのもよいでしょう(ただし、義務づけは困難で法的には契約満了日までになされた無期転換申込は有効となります)。

 無期転換申込権が発生する労働者に対し会社は説明する義務があるのかという質問や、説明すれば無期転換を申し込む人が増えるのではないかと懸念する声を、経営側から聞くことがあります。

 この点、法律上は、会社側にそのような説明をしたり、労働者に周知する義務は課されていません。しかし、無期転換制度は多くの報道により、有期労働契約者にとって関心の高い話題といえます。「正社員になれる制度」等の無用な誤解を生じさせないためにも、会社としては真摯な態度で制度の内容や会社の対応について説明すべきものと考えます。

 なお、定年後に引き続き雇用している有期契約労働者については、都道府県労働局への届出と認定(第二種計画の作成、認定)により、無期転換申込権が発生しない特例があるので対象になりそうな高齢労働者がいる企業では早めに対応しておくとよいでしょう(この他に、5年を超える一定期間内に完了予定の業務に従事する有期雇用の「高度専門職」に関する特例があります)。

無期転換後の労働条件について

 無期転換後の労働条件については、契約期間を除いて転換時の労働条件(賃金・労働時間等)がそのまま適用されます。ただし、別段の定めをすることも可能で、労働条件を変更するのであれば、無期転換前に転換後の労働条件を説明し労働者の同意を得ておくことが重要です。

 労働条件の変更に関しては「職務内容の変更などがないにもかかわらず、労働条件を従前より低下させることは、・・・望ましいものではない」(H24.8.10基発0810第2号)とした行政通達があります。無期転換を機に労働条件を低下させることのないように会社として留意すべきと考えられます。

 一方、新たな手当や賞与支給などで処遇を改善する場合は特段問題ありませんが、例えば、無期転換されるのを機に、正社員用の就業規則が適用され、正社員並みの責任を負わせるといった場合には労働者への説明と十分な理解を得ておくことが必要です。

 この際、実際上の必要性もないのに無期転換申込を抑制する目的で、フルタイム労働や配置転換条項の適用を求めるような行為は法の趣旨に照らして望ましいものとはいえず、そのような労働条件の変更は無効と判断される可能性があります。

無期転換を阻止する目的の雇止めは無効

 無期転換者は出したくないので、無期転換権の発生前に雇止め(契約期間満了時に労働契約を更新せず、契約を終了すること)できないかといったご相談を受けることがあります。

 雇入れ時の就業規則や雇用契約書で「契約更新は通算〇年まで」といった規定があり、これを厳格に実施しているような場合は別ですが、これまで、有期契約を反復更新してきていて、労働者が契約更新されることに合理的な期待を持っていると判断される場合には労働契約法19条の雇止め法理が適用されることになります。

 すなわち、労働者側に余程の非があるなど(解雇の場合と同様に)雇止めすることに「合理的な理由があり社会通念上相当」とみなされる場合を除き、雇止めは無効となる可能性が高いといえます。

 まだまだ先のことと思っていた「無期転換制度」がスタートしました。このルールは企業規模や業種を問わず例外なく適用されるため、有期契約労働者(パート、アルバイト、契約社員等の名称を問わない)を抱えるすべての企業は無関心ではいられません。

 今後、企業は無期転換ルールがあることを前提に計画的な人員配置を検討する必要があるといえます。

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