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「副業・兼業」の利点と企業の対応について

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「副業・兼業」の利点と企業の対応について

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第7回 ホワイト企業人事労務ワンポイント解説   

Q

当社の就業規則では「副業・兼業」に関して、「許可なく他の会社等の業務に従事してはならない。」として原則禁止にしています。これまで実際に許可申請を申し出てきた者はいませんが、会社に無届でアルバイト等をしている従業員もいるようです。最近のマスコミ報道では、今後は「副業・兼業」を認めていくのが世の中の流れであるといった論調が多いように感じています。当社としてどのように対応していくべきでしょうか?

A

正社員が業務の開始前や終了後、又は休日に別の勤務先でアルバイトをしたり、非正規社員が、複数の勤務先を掛け持ちして働くことを「副業・兼業(以下、「副業」)」といいます。現状では、貴社同様、多くの会社において、正社員の副業は原則として認められず 許可制になっている場合が多いと思います(平成26年の中小企業庁の調査では企業の85.3%が副業を認めていない)。しかし、厚生労働省の「柔軟な働き方に関する検討会」は本年1月に「副業・兼業の促進」に向けた最終報告をまとめ、ガイドラインを明らかにしました。同時に厚生労働省はこれに対応した「モデル就業規則」を公表しました。副業を希望する労働者は年々増加傾向にあるといわれていますので、以下、副業・兼業の問題について考えてみましょう。

民間企業の場合、兼業を禁止する法律はない

 公務員については国家公務員法や地方公務員法によって副業が禁止されていますが、民間企業の労働者については,副業を禁止する法律等は存在しません。したがって、副業を認めるか否かは会社が作成する就業規則等の定め次第ということになります。
 労働者は労働契約に従って1日のうちの一定の時間労務に服するわけですが、就業時間外は本来労働者の自由な時間と考えられます。したがって、その自由な時間に副業をすることを企業側が一切禁ずるというのは、特別な場合を除き、合理性を欠くと考えられます。

 その一方で、労働契約では労働者は企業に対し「誠実労働提供義務」を負っているので、労働者はその自由時間においても精神的・肉体的疲労回復のための適度の休養をとることは労務提供のための基礎的条件と考えられます。

 したがって、使用者としても労働者の自由時間の利用について関心を持たざるを得ず、また副業の内容によっては企業の対外的信用、対面が傷つけられるケース、また企業秘密の漏洩リスク等もありえることから、そのような副業なら規制しても合理性があることになります。

政府が考える副業のメリットと留意すべき点

 さて、政府としては「副業・兼業」を促進させる方針ですが、副業は労働者と企業にとって、それぞれメリットと留意点があるとしています。最近公表された「副業・兼業の促進に関するガイドライン」に記載されている要点を次表にまとめてみます。

 また、上記ガイドラインでは「副業・兼業」は、社会全体としてみれば、オープンイノベーションや起業の手段としても有効であり、都市部の人材を地方でも活かすという観点で地方創生にも資する面があるとしています。国としては、自社業務に支障が生じないと判断される場合には、社員の副業を認める方向にして欲しいと企業側に求めているようです。

複数事業所における就労時の労働時間通算

 これまで、日本で副業が広がらない一因になっていると考えられるのが、労働時間の通算(労働基準法第38条1項)の問題です。例えば、本業の会社の一日の所定労働時間が8時間だったとして、その始業前、又は終業後に2時間のアルバイトを行った場合には、その日の労働時間は10時間となり(原則として後から契約した事業主に)2時間分の割増賃金の支払義務が発生することになります。

 この点に関し、厚労省では複数勤務先での労働時間合算の仕組みの見直しを検討中との報道もありますが、現状、行政解釈では異なる使用者間での通算を認めていて(S23.5.14基初769号)、厚労省の前述のガイドラインでも、この考え方を維持した内容を例示しています。

 なお、現実問題として「本業」と「副業」でそれぞれの企業が労働者の労働時間を互いに把握するのは難しいと考えられ、ガイドラインでも労働者からの自己申告に基づいて行う内容が記載されています。いずれにせよ、企業が従業員の副業を認める場合には長時間労働を招くことのないような確認作業が求められるといえます。

副業についてのモデル就業規則(改定版)

 さて、厚労省のモデル就業規則(同省のホームページ上で公開)では副業の扱いについて、従来は「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと。」となっていましたが、平成30年1月公開の最新版では以下のように労働者の事前の届出を前提に勤務時間外の副業・兼業を認める規定に改定されています。

(副業・兼業)
第67条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。
3 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。
① 労務提供上の支障がある場合
② 企業秘密が漏洩する場合
③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
④ 競業により、企業の利益を害する場合

 企業はモデル就業規則の通りに規定を改定する必要はありませんが、副業に関する扱いについて見直しをする際の参考にしてください。

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