1. 賃金・評価などの人事コンサルティングならプライムコンサルタント
  2. プライム Cメディア
  3. WEB連載記事
  4. ホワイト企業の人事労務ワンポイント解説
  5. 企業が求人募集する際の留意事項

プライムCメディア

企業が求人募集する際の留意事項

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
企業が求人募集する際の留意事項

米田徹先生のプロフィールはこちら

第9回 ホワイト企業人事労務ワンポイント解説   

Q

私は中小企業の人事担当者ですが退職予定者が出たので求人募集をしようと考えています。最近では「ブラック企業」の不適切な求人がハローワーク等から締め出されるなど、求人する企業に対して規制が厳しくなっていると聞いています。求人募集する際に留意すべき事項について教えてください。

A

求人票をめぐっては、記載内容と実際の労働条件が異なるといった苦情やトラブルが多発したため、厚生労働省では数年前から様々な指導や取締りを実施してきました。さらに、本年(2018年)1月から改正職業安定法が施行され、虚偽の求人申し込みを行った企業への罰則の導入など求人募集を行う求人者に対する規制が厳しくなりました。そこで、以下では改正法の内容を中心に求人募集から採用にいたるまでに会社が留意しなければならない事項を検討してみたいと思います。

労働条件の明示に関して改正された事項とは?

 企業はハローワークや職業紹介事業者(以下、ハローワーク等)などに求人申込みを行う際に労働条件を明示しますが、その後の採用過程で労働条件が変更されることがあります。そのような場合、従来は、労働契約締結時の労働条件明示(労基法15条1項)までの間に変更された条件を明示する義務がなかったため、求人トラブルの一因になっていました。

 そこで、今回の法改正で求人申込み時に明示した労働条件が契約の途中で変更された場合には、変更内容について(可能な限り速やかに)求職者に明示しなければならないこととされました。
 例えば、面接等の課程で以下のような変更があった場合には、速やかに求職者に知らせる必要があります。

① 当初:基本給30万円/月 ⇒ 基本給28万円/月
② 当初:基本給25~30万円/月 ⇒ 基本給28万円/月
③ 当初:基本給25万円/月、営業手当3万円/月 ⇒ 基本給25万円/月(営業手当削除)
④ 当初:基本給25万円/月 ⇒ 基本給25万円/月、営業手当3万円/月

 変更明示の方法は、求職者が理解しやすいように、書面交付(当初と変更後の内容を対照)が望ましく、労働条件通知書で変更された事項に下線を引く等の方法も可能としています(詳細は厚労省パンフレット等を参照ください)。

改正により追加された明示すべき労働条件

 さて、募集・求人時に最低限明示が必要な労働条件には以下があります。

・業務内容
・契約期間
・試用期間★
・就業場所
・就業時間、休憩時間、休日、時間外労働(裁量労働制を採用している場合は、そのみなし時間★)
・賃金(いわゆる固定残業代を採用する場合は計算方法★)
・加入保険(雇用、労災、厚生年金、健康保険)
・募集者の氏名又は名称★
・派遣労働者として採用する場合その旨★
(★今回の改正で追加等された事項)

 上記中、今回新たに試用期間、派遣労働者として採用の場合はその旨(以上、法施行規則)、また、裁量労働制実施の場合のみなし労働時間数、固定残業代採用の場合の計算方法の明示等(以上、指針)が追加されました。

(1)試用期間の明示
 募集者は試用期間に関し、①試用期間の有無、有の場合はその期間、②試用期間中と試用期間終了後で従事すべき業務の内容が異なる場合はその内容等、を明示する義務が追加されました。
(2)裁量労働制実施の場合の明示
 裁量労働制を実施する場合、みなし労働時間数の明示が求められます。

記載例:企画業務型裁量労働制を採用し、〇〇時間働いたものとみなされます。

(3)固定残業代の明示
 固定残業代は、時間外労働の有無に関わらず一定の手当を支給する制度です。固定残業代に関しては、これまで制度を悪用した不適切な扱いが行われている例が数多くみられるため、今回の改正で固定残業代の明示が義務づけられました。指針では「固定残業代の算定の基礎として設定する労働時間数及び金額を明らかにするものに限る」と記載されており、金額だけでなく労働時間数まで明記することが求められています。また、これを超える時間外・休日・深夜労働があった場合には追加で割増賃金を支払うことを明示しなければなりません。

(固定残業代の記載例)
・〇〇手当:時間外労働の有無に関わらず、△時間分の時間外手当として××円を支払う
・△時間を超える時間外労働分についての割増賃金は追加で支給する

求人者に対する罰則の新設


 今回の法改正により企業などの求人者がハローワーク等に求人申込みをする際、虚偽の労働条件を提示して申込みを行った場合には、6月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科されるという厳しい内容が設けられました(改正法65条9号)。

 世の中は人手不足状況が続いていて、人員確保のために実際とは異なる有利な労働条件を提示して労働者を採用し、トラブルになる例が発生しています。今回の法改正では、このような虚偽の申込みから労働者(求職者)を保護する措置として、従来からあった職業紹介、労働者募集・供給事業者等に対する罰則(65条8号)に加え、ハローワーク等を利用する求人者(企業等)に対しても厳しい罰則が新設されました。

 求人する企業は改正法の趣旨を十分理解した上で、求人トラブルが発生しないように正しい求人募集を行うことが必要です。

プライムコンサルタントでは、本記事のようにWEB会員限定サービスをご提供しています。
「WEB会員」サービスはどなたでも無料でご利用いただけます。
今すぐご登録ください(入会金・会費など一切無料です。また、ご不要であればいつでも退会できます)。

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

カテゴリ