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「限定正社員」とは何か?企業での活用は?

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「限定正社員」とは何か?企業での活用は?

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第6回 ホワイト企業人事労務ワンポイント解説   

Q

今年4月から契約期間が通算5年を超えた有期雇用者の無期転換申込権が発生することにも関連して、「限定正社員」という言葉が注目されているようです。限定正社員」とは、どのような社員を言うのか、また、当社のような中小企業において、どのような活用を考えればよいのかを教えてください。

A

「限定正社員」という言葉が使われるようになったのは5~6年前位からで比較的最近のことと思われます。そもそも「正社員」「非正社員」といった言葉が法律用語ではなく、したがって「限定正社員」も厳密な定義がある言葉ではありません。

限定正社員の雇用形態とは?

 これまで「正社員」というと慢性的な長時間労働、仕事(職種)内容は非限定、また、頻繁な配置転換や突然の転勤にも応じる拘束性の高い働き方をする一方、その見返りに長期(終身)雇用の下で安定的な賃金補償を受ける雇用形態とされてきました。

 しかし近年、少子高齢化に伴う労働力人口の減少の中で、優秀な人材の確保や定着を可能にする「多様な働き方をする正社員」すなわち「限定正社員」が注目されるようになりました。

 限定正社員という場合、契約期間は無期限である一方で(1)労働時間限定、(2)職種限定、(3)地域限定といったように働き方に一定の限定条件がある社員を指します。以下、それぞれ内容を見ていきましょう。

(1)労働時間限定
 正社員であれば、1週間の所定労働時間は40時間程度(フルタイム)でしょうが、より短い時間に限定して働く短時間社員ということになります。また、フルタイムに近い場合であっても残業や休日勤務が課されないという働き方も含めて考えてよいでしょう。

(2)職種限定
 教員、看護師、トラックドライバーなどは職務が限定されて雇用される場合がほとんどで職種限定の雇用形態といえます。

 その他に特定の業務しか行わない働き方はこれまで契約社員、派遣社員などが担ってきた分野といえますが、今後は、性別・年齢・国籍を問わず人材の多様化を進める上でも職種を限定した限定正社員が増加するものと考えられます。

(3)勤務地限定
 勤務地(エリア)を限定した働き方です。無期雇用なので職種間の異動や残業等は一般の総合職と同様にあり得る形態です。大企業では、特に女性の場合、勤務地(エリア)限定の正社員扱いの雇用は多いと考えられます。

 なお、事業所が1つしかない中小企業の場合には実質的に転勤はなく「地域限定」ということで社員を区分する必要はない場合が多いかもしれません。

無期転換ルールと限定正社員

 改正労働契約法(平成25年4月1日施行)によって、有期労働契約だった非正社員が同一事業主のもとで通算5年超の契約更新を行うと本人の申出で契約期間が無期に転換されます。無期転換申込権が発生するのは今年4月以降で、そのような社員への処遇見直しとして「限定正社員」を検討する会社が増えています。

 背景には、昨今の人出不足があり、企業にとっては労働者の定着率が向上し長期的な人材活用戦略が立てやすくなる、また市場相場に基づく職務給ベースが多い「限定正社員」であれば賃金コストをある程度抑制できる、等のメリットが考えられます。一方、有期労働契約社員にとっても、賞与や新たな手当が支給されるなど何らかの処遇改善が行われる場合であれば、労働契約が無期に転換されて安定的かつ意欲的に働くことができるようになるメリットは大きいといえるでしょう。

限定正社員用の就業規則の整備

 限定正社員制度を導入する場合に、その労働者に適用する就業規則をどうするかという問題があります。会社に正社員と非正社員の就業規則が存在する場合、その中間的存在である「限定正社員」には、①正社員用就業規則を適用、②非正社員用就業規則を適用、③限定正社員用就業規則を新規に作成、の三通りの方法が考えられます。

 限定正社員の処遇が一般の正社員と同等で良いとする場合には、①の正社員用就業規則を適用することが可能です。その場合、例えば正社員就業規則に「転勤」条項が規定されていても、「勤務地限定」で契約している限定正社員の場合には、就業規則の「転勤」条項はその労働者には不利な内容なので、その部分に関しては就業規則ではなく、個別の労働契約が優先適用されることになります。

 一方、改正労契法の適用で有期雇用が無期雇用に転換される場合の労働条件は、別段の定めが無ければ従前と同一とされています。契約期間以外の労働条件が変わらないのであれば、②非正社員用就業規則を適用することも可能です。但し、契約の終了(定年、解雇等含む)などの規定は無期転換者に対して不都合が生じないように、部分的な見直しや追加・変更が必要です。

 誤解を生ずることがもっとも少ないのが、③の限定正社員を対象にした就業規則を新たに作成する方法で、多少の手間はかかりますがベストな方法といえるでしょう。

まとめ

 事前に定めた一定の限定条件(例えば、「職種限定」)で働く正社員は日本ではまだまだ多いとは言えませんが、グローバルに見れば、職種別労働市場の諸外国では一般的と言えます。 共働き家庭が増加する中での女性の活躍、また高齢者や外国人の活躍を支援する「限定正社員」制度は、今後日本でも働き方の主流になっていくものと考えられます。

 中小企業にとっても雇用形態を柔軟に捉える、限定正社員をうまく活用していくことが有能な人材を集めるために重要になることでしょう。従来型の雇用形態を見直し、少子高齢化・低成長時代に見合った「限定正社員」の活用を検討することが、あらゆる企業に求められていると言えそうです。

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