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個別の法令による解雇制限について

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個別の法令による解雇制限について

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第5回 ホワイト企業人事労務ワンポイント解説   

Q

能力不足のため、やむを得ず解雇せざるを得ない社員に対し30日前に解雇予告をしたところ、その社員が予告した日の1週間後に業務中にケガをし、療養のため2日間休業しました。当初予告した日に解雇する予定ですが問題はありませんか?

A

解雇とは、会社(使用者)による一方的な労働契約の解約で、労働者の承諾は要件になりません。従業員にとっては、自分の意思に関係なく労働契約を解約され収入の道を絶たれるわけですから、重大です。そこで、労働契約法では、正当事由(客観的合理性と社会的相当性)を欠く解雇は、解雇権の濫用であり無効だと定めています(同法16条)。解雇に関する相談や訴訟の多くは、この解雇権の濫用にあたるか否かが問題になります。一方で、労働基準法他の法令では、解雇が禁止される場合が種々規定されています。今回は、「解雇権濫用法理(労契法16条)」の問題とは別に、個別の法令により解雇が制限されている事項について考えてみます。

業務上の傷病や産前産後の休業での解雇禁止

 労働基準法の定めにより以下の場合には解雇が禁止されています(同法19条)。

①業務上のケガや病気によって休業している期間、及び復職後30日間
②女性が産前産後の休業をする期間、及びその後の30日間

 これらの解雇制限は、労働者が労働能力を喪失(ケガや出産)し、又は十分回復していない期間に解雇されると、新規の就職先を探すことが困難で、生活を脅かされることになりかねないため、労働者保護の観点で定められたものです。

 なお、①業務上の傷病による解雇制限については、あくまで「業務上」の負傷や疾病の場合なので、私生活上の事故や病気の場合はもちろんですが、通勤災害(労災適用有)の場合にも解雇からの保護は受けられません。
 業務による疾病についての療養中の解雇制限は長期化すると使用者の負担が大きいため療養を開始してから3年が経過しても治らない場合、使用者が打切り補償(平均賃金の1,200日分の一時金)を支払った場合には解雇制限が解除され、解雇が可能になります。

 また、このような一時金支払い(打切り補償)ではなく、療養開始後3年経過時(又はそれ以降)に労働者が労災保険から傷病補償年金を受けている場合には打切り補償が行われたものとみなされ、解雇制限が解除されます。
 この他に、上記の労基法19条の解雇制限は天災事変のような止むを得ない理由のため事業の継続が不可能になった場合(この場合は労基署長の認定が必要)にも解雇制限が解除されます。

法違反の告発や組合活動等を理由にした解雇禁止

 労働基準法19条以外にも種々の法律で解雇が禁止される場合があります。例えば、労働者が監督機関などに対して行った告発行為等や正当な組合活動等を理由にした解雇は法で禁止されています。

(法律で解雇が禁止される例)
・労働者が労働基準法や労働安全衛生法違反の事実を労基署等に申告したことを理由にする解雇(労基法)
・公益通報者保護法に基づいて内部告発(公益通報)をした者に対するその事業主による解雇(公益通報者保護法)
・労働者が都道府県労働局に紛争解決の援助、またはあっせんを申請したことを理由にする解雇(個別労働紛争解決促進法)
・労働組合員であること、組合への加入や正当な行為をしたことを理由にする解雇(不当労働行為に該当し無効)(労働組合法)

婚姻、妊娠、休業申請等を理由にした解雇禁止

 雇用機会均等法では性別を理由にした解雇等を禁じており、また女性労働者が婚姻、妊娠・出産・産前産後休暇の請求等をしたことを理由とした解雇を禁止しています。
 家庭生活と職業生活の調和を図る目的で定められた育児介護休業法では、育児休業・介護休業の申出をしたこと、育児休業・介護休業をしたことを理由とする解雇を禁止しています。

まとめ

 さて、冒頭のご質問に戻って考えてみましょう。解雇予告をした後に、その労働者がたとえ1日や2日といった短期間であっても労災の対象になるような業務上の傷病により休業した場合には前述した解雇制限(労基法19条)の適用があります。
 すなわち休業した後、職場復帰した後の30日間は解雇することはできず、したがって当初の解雇予定日に解雇することはできないので解雇日を変更する必要が生じます。

 今回の場合は業務中のケガから復帰した後30日間の経過をもって解雇の効力が発生し、解雇が成立することになります。
 この際、解雇予告の効力はその発生の効力を停止しているにすぎないので、休業期間が長期にわたるような場合を除いて、再度の解雇予告は必要ありません。
 個別の法令により解雇制限される主なケースについて、以下の表にまとめたので参考にしてください。

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