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Unit 31(最終回): 労働法とその先にあるもの-駆け出しコンサルタントの学習成長ブログ(労働法編)

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Unit 31(最終回): 労働法とその先にあるもの-駆け出しコンサルタントの学習成長ブログ(労働法編)
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みなさんこんにちは。人事コンサルタント(社会保険労務士・中小企業診断士)の古川賢治です。今回は、これまでお伝えしてきた労働法編の最終回です。労働法という広いテーマの中で、労働条件・労働契約・就業規則など様々なトピックを取り上げてきました。最後は、私見も交えながら、労働法という存在とその先にあるものについて考えてみたいと思います。

人事管理・労働経済編の総集編はこちら

労働法とその先にあるもの

労働法の存在

「労働法はなぜ存在するのか?」

この問いに対する歴史的な答えは、Unit 14で学習しました。労働法は、産業革命以降、過酷な労働によって健康破壊や女性・年少者の酷使が相次ぐ中、弱い立場にある労働者を保護するために成立しました。その内容は、労働条件の最低基準を定めるなどによって、使用者に一定の制限を与えるというものでした。

具体的には、1日や1週あたりの労働時間に一定の制限を設けたり、賃金の額に最低限度の基準を定めたりというものです。こうした内容は、Unit 16Unit 19Unit 20等で学習しました。

労働法は嫌なものか

これまで見てきたように、労働法は基本的に何らかの形で使用者の行動を制限しています。それゆえに、企業側からすると、「労働法は、経営の自由を規制する嫌なもの」と思われることもあるかもしれません。実際に、経営の第一線で活躍している方から、そのような言葉をお聞きすることもあります。

しかし、果たして本当にそうなのでしょうか? 労働法は制限を与えるばかりで、他には何も与えてくれない嫌なものなのでしょうか? この記事を執筆しながら考えているうちに、私は次のように思い至りました。

「労働法は、フレームワークの一種として活用できるのではないか?」

フレームワークとしての労働法

フレームワークとは、枠組み・構造などという意味ですが、特にビジネスにおいては、「問題解決に役立つ思考の枠組み」と解されることが多い言葉です。有名な例としては、経営戦略立案に役立つ「SWOT分析」、マーケティング戦略立案に役立つ「4P」などがあります。皆さまも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

労働法は、使用者に制限を与えることで働き方の枠組みをある程度決めてしまうものですから、まさにフレームワークと言えると思います。そう考えると、労働法が制限の他にも与えてくれている「何か」に気づくことができそうです。

「制約の中でこそ、アイディアは生まれる」とよく言われます。室町時代に活躍した水墨画家の雪舟は、白と黒という制約の中で独自の技法を数多く編み出し、水墨表現が持つ無限の可能性を示してくれました。これはまさに、制約の中でアイディアが生まれたことを示す好例と言えるでしょう。

こうしたことを踏まえると、労働法の制約もまた、素晴らしい労働のアイディアを創造するためのフレームワークになり得るはずです。

よりよい社会を目指して

ここまで、労働法はフレームワークになり得ると述べてきましたが、その可能性に言及するだけでなく、実際にアイディアが創造された事例に触れたいと思います。

ご存知の方も多いかと思いますが、ドイツには「労働時間口座制度」という働き方があります。その名の通り、まるで銀行口座にお金を貯めるように、労働時間を貯蓄できるという仕組みです。例えば、残業時間を口座に貯蓄しておき、好きな時に引き出して休暇として使用することができます。つまり、超過勤務分の時間は、残業代をもらう代わりに休暇として別の日に使えるということです。このアイディアは、残業手当発生の回避やワークライフバランスの向上等の効果をもたらし、使用者と労働者の双方にメリットを与えています。

私は、この制度をはじめて知ったとき、とても心を打たれました。まず、残業時間を貯蓄するという発想自体に驚いたのですが、調べてみると、1980年代頃にはすでにこの概念が確立されていたのですから、さらに驚きました。いまでは、この制度がある職場で働くドイツの労働者は6割に達するそうです。そのほかにも、ドイツの労働法には、日本に見られないような柔軟な働き方を推進する制度が多々あるようです。

こうした制度が生まれた背景には、時代の要請もあったのでしょうが、既存の労働法の制約の中でそれをフレームワークとして活用し、よりよい労働のあり方を探求し、アイディアを創造し、社会を開発していくという考え方が大きく関係していたのではないかと思います。

ここではドイツの労働法制を取り上げましたが、私は、「日本も海外先進国の真似をしよう!」などと言いたかったわけではありません。「労働法は私たちにフレームワークを提供してくれ、それを活用することでよりよい労働のアイディアを創造することができるはずだ」ということをお伝えしたかったのです。

ここで再び、冒頭の問いに戻ります。

「労働法はなぜ存在するのか?」

過去の経緯を見て、歴史的な答えはすでに学習しました。それでは、未来に対する答えはどうでしょうか。労働法のその先にあるものを見据えながら、いまの私は、自分自身にこう答えます。

「素晴らしい労働のアイディアを生むために必要なツールで、社会をよりよくするためにあるものだ」と。

おわりに

さて、2018年1月以来、本シリーズをお届けしてきましたが、いかがだったでしょうか? 皆さまに少しでもお楽しみいただけたのならば、これ以上嬉しいことはありません。人事管理・労働法を少しでも親しみやすいものにするために、教授と生徒という二人の登場人物を配した会話形式により、平易な表現を心がけました。

お伝えしてきた情報は、初歩~基本レベルかつ一般的な内容が中心でしたので、中には少し物足りないと感じる読者もいたかもしれません。一方で、人事・労務の経験がまだ浅く、基礎的な内容を学ばれている最中の読者もいたように思います。

私がコンサルタントとして様々な企業の現場にお邪魔する中で、このような基本的な人事・労務管理が不十分であることにより、企業と働き手の双方にとってよくないことが起きてしまっている中小企業を数多く目の当たりにしてきました。

私は、「なにごとも基本が大事」だと信じています。その点で、人事・労務管理も同じだと考えます。近年、働き方改革等によって、労働法制が高度・複雑化していっているように見えますが、その中でも決して変わらない「基本的なもの」があると思います。そうしたツボを押さえた人事管理には、働き手の労働意欲を喚起し、生産性を向上させ、労働の質を高める力があります。労働の質が高まれば、企業の競争力は増し、それは環境変化の波に対応していくちからとなります。

今回をもって、本連載「駆け出しコンサルタントの学習・成長ブログ」は終了しますが、私自身の学習・成長の旅はまだまだ続きます。次にまたこの場でお会いするときは、コンサルティングの現場で培った経験も交えながら、労働の質を高めるために役立つ情報をお届けしていきたいと思います。

ありがとうございました。

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