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Unit 16: 労働時間・休憩・休日-駆け出しコンサルタントの学習成長ブログ(労働法編)

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Unit 16: 労働時間・休憩・休日-駆け出しコンサルタントの学習成長ブログ(労働法編)
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みなさんこんにちは。人事コンサルタント(社会保険労務士・中小企業診断士)の古川賢治です。

前回まで2回にわたり、「労働法総論」と題し、労働法とは一体どのようなものであるかについて、その概観をお伝えしてきました。
今回は、「労働条件1(労働時間・休憩・休日)」と題し、労働条件の定義や最低限度の労働条件について学習していきます。その中でも特に、労働時間・休憩・休日に着目し、労働基準法上の最低基準を確認します。経験的に知っていることも多い基本的な内容ですが、労働時間管理のベースとなる部分ですので、改めておさらいしていきましょう。

労働条件とは

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今回は、労働条件(労働時間・休憩・休日)について学習します。突然ですが、労働条件とはどのようなものを言うと思いますか?

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文字通り、1日8時間、週5日勤務などの「働く条件」を指しているのだと思います。

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そうですね。「労働者と使用者(企業等)の間で取り決める雇用に関する条件」のことを、労働条件と言います。労働条件には実に様々なものがありますが、例を挙げていただいた1日8時間などの労働時間も労働条件の一つです。そして、労働条件の取り決め方も様々で、労働時間一つをみても、多くの企業が異なる条件を定めています。

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確かに、求人情報を見てみると、労働時間を1日8時間としている企業が多いですが、中には1日7.5時間のものもあるなど、意外と企業によってばらばらであることが分かります。ところで、いま学習している労働法というテーマとはどのような関わりがあるのでしょうか?

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いろいろな求人情報に目を通して気づかれたように、雇用される企業によって労働条件は違います。それはなぜかと言うと、 第14回で学んだように「契約自由の原則」があるからです。ただし、企業はなんでも好き勝手な条件を定めてよいかというと、そうではなく、労働者保護のための最低基準(労働保護法)を国が定め、企業に対し一定の制限をかけていくのでしたね。

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そうすると、日本にも一定の最低基準を定めた法律があるわけですね。

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はい。それが労働基準法、いわゆる労基法(ろうきほう)です。この労働基準法には、労働者が企業で働くうえで、企業が守るべき最低限度の労働条件が定められています。つまり、企業に対して「この最低ラインだけは必ず守ってくださいね」と規制しているのです。
少し前置きが長くなりましたが、これから学習していく様々な最低基準は、基本的にこの労働基準法に定められていますので覚えておいてください。そして、これから「法定○○」という言葉が出てきますが、これは法律で定められた最低限度の○○(○○には諸々の労働条件を指す言葉が入る)という意味だと理解してください。

労働基準法に定められた最低限度の労働条件

法定労働時間

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労働時間については、労働基準法で「原則として1日8時間、1週40時間」という最低基準が定められています(労働基準法32条)。

  • 休憩時間を除き、1日8時間を超えて労働させてはならない
  • 休憩時間を除き、1週40時間を超えて労働させてはならない
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先ほどの求人情報の話で、1日8時間勤務制の企業が多かったのは、この法定労働時間に沿って労務管理を行う企業が多いからなのです。

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なるほど。ところで、なぜ1日8時間なのでしょうか?

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この「1日8時間労働」というのは、日本に限ったことだけではなく、長らくグローバルスタンダード(世界標準)になっています。それは、1919年に国際労働機関(ILO)が、「労働時間を1日8時間かつ1週48時間に制限する」という第1号条約を採択し、これが国際的なルールとして確立していったからなのです。日本では、1947年に労働基準法が制定され、そこで初めて「1日8時間、1週48時間労働※」という最低基準が示されました。

※1987年の法改正により、現在は「1日8時間、1週40時間労働」となっています

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そのような歴史があったのですね。産業革命の頃は1日12時間を超える工場労働が当たり前だったそうですが、労働者たちが1日8時間制を要求した「メーデー(May Day)」に代表されるような社会的要請に応えるかたちで1日8時間制が実現されたのでしょうか。

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はい。しかし最近では、1日8時間制よりも短い労働時間を採用する企業が少しずつ増えており、「労働時間の短縮と労働生産性の向上の両立」が国際的なトレンドになりつつあります。日本でも、働き方改革の一環として労働時間の短縮がよく取り上げられますが、このように他の企業より魅力的な労働条件を整備することは、自社の採用競争力にも良い影響を与えます。

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ところで、いわゆる残業については何か最低基準はあるのですか?

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残業、つまり「時間外・深夜・休日労働」のことですね。労働基準法では、前述のとおり、「1日8時間を超えて労働させてはならない」との原則が定められていますが、同時に例外も規定されています。労働基準法36条の次の定めがその内容です(要約)。

  • 労使協定(36協定)を締結し、労働基準監督署に届け出た場合は、協定で定める範囲内で1日8時間、1週40時間の法定労働時間を超えて労働させたり、休日に労働させたりすることができる
  • 上記の場合の労働時間の延長の限度等は、別に定める(労働省告示第154号)
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表中の「告示」とは一体なんでしょうか、法律とは違うのですか?また、「残業時間は月に○時間」のような最低ラインは決まっていないのでしょうか?

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はい。告示とは行政が発するものですが、法律との大きな違いは、告示には法律のような拘束力がないという点です。ちなみに、上記の労働省告示では時間外労働については「1か月45時間、1年360時間まで」などと示されていますが、その基準を企業に守らせる強制力がないため、最低基準としてうまく機能していないという問題がありました。
しかし、法改正により2019年4月からはこの告示が法律に格上げされることが決まり、今後はいわゆる残業についても、企業が必ず守らなければならない最低ラインが明確になりました。

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労働基準法制定以来の大改正も含まれている、「働き方改革関連法」で導入される残業規制のことですね。

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そうです。改正後の新ルールについては、本シリーズとは別の記事『時間外労働時間の上限規制について 』に分かりやすくまとめられていますので、そちらを参照してください。

法定休憩時間

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次に、休憩時間について確認していきましょう。

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休憩についても労働基準法に定められているのですか?

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もちろんです、休憩も大切な労働条件の一つですからね。法定休憩時間については、労働基準法34条に定められていて、その最低基準は次のとおりです。

  • 労働時間が6時間を超え、8時間以下の場合は45分以上の休憩時間を与えなければならない
  • 労働時間が8時間を超える場合は、60分以上の休憩時間を与えなければならない
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60分休憩が当たり前と思っていましたが、労働時間が6時間超8時間以下の場合は、45分の休憩で構わないのですね。これを見ると、労働時間が6時間を超える場合は必ず休憩が必要になるのでしょうが、逆に言うと、労働時間が6時間以下の場合は休憩がなくてもよいのですか?

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この法律に従うことのみを考えるなら、おっしゃるとおり、労働時間が6時間以下の場合には休憩は与えなくてよいことになりますね。しかし、労働者への安全配慮義務や労働生産性の低下防止を踏まえると、たとえ6時間以下であっても、労働が一定程度連続する場合には、適宜休憩を取らせるべきでしょう。

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確かにそうですね。作業の合間に適度に休憩を取り入れると脳が活性化し、仕事の能率が上がるとも聞きます。知識労働が主体となっている現代社会においては、良質な休憩を取ることが労働生産性向上のヒントになるかもしれませんね。

法定休日

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最後に、休日について確認してから、本日の講義を終了しましょう。

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休日と言っても、土日が休みの企業もあれば、平日が休みの企業もあってばらばらですよね。法律ではどのようなルールがあるのですか?

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法定休日については、労働基準法35条に定められていて、その最低基準は次のとおりです。

  • 毎週少なくとも1回の休日を与えなければならない
  • または、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければならない
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週に1回休むか、4週間で4日休むかのどちらかの方法で、平均して1週1日以上の休日を確保する必要があるというように読めますね。そうだとすると、曜日を指定しなくても最低基準を満たせそうですが、法定休日は、各企業で何曜日にするかを自由に設定してもよいのでしょうか?

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はい。ちなみに、土日が休みで週休2日制の企業では、一方が単なる休日※、他方が法定休日ということになります。こう言うと混乱してしまいがちなので、休日の管理を簡単にしたい企業では、「日曜日を法定休日とする」などと企業内ルールを設ける場合があります。

※法定休日に対し、所定休日と言うこともあります

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うーん、なんだかややこしくなってきた気がします。「休日の管理」の意味もよく分かりません。

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実はこの話は、次回以降の講義で扱う予定の「割増賃金(いわゆる残業代)」に関わってくるのですよ。その際に改めてお伝えしますので、ひとまずいまのところは、単なる休日と法定休日は別物だということだけ理解しておいてください。

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分かりました。本日の講義で学んだ「労働時間・休憩・休日」については、これまでなんとなく「一般的にそういうものだ」という感覚でしか捉えていませんでしたが、こうして見ると、法律にしっかりと最低基準が定められているのですね。企業の労務管理者としては、こうした法定の最低基準をしっかりと理解したうえで、自社がどのような労働条件を整備するのかを考えていくことが大切ですね。

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そうですね。なお、本日は1日8時間、1週40時間という「通常の労働時間制」のみをお伝えしましたが、実はそれ以外にも、変形労働時間制やフレックスタイム制等の「弾力的労働時間制」と呼ばれる各制度も存在します。次回は、それらについて学習する予定ですので、今日の内容を忘れないようにしてください。

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はい。次回は、多種多様な労働時間制に関する講義ということですね。教授、本日はありがとうございました。

今回の連載内容は、2017年6月13日の講義を参考に執筆しました。
東京労働大学講座「労働法条件1」(中窪裕也 一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授))

※東京労働大学講座は、独立行政法人労働政策研究・研修機構が毎年度開催している、労働問題に関する知識の普及や理解の促進を目的とした講座です。今年度で66回目を数え、これまでの修了者は27,000人を超える歴史と伝統を誇る講座です(2018年1月時点)。
 

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