Unit 30: 雇用平等-駆け出しコンサルタントの学習成長ブログ(労働法編)
今回は、雇用平等について学習していきます。
雇用平等
今回は、雇用平等について学習していきます。突然ですが、雇用平等と聞いて何をイメージしますか?
あまり聞いたことがない言葉ですね。雇用の差別を禁止する、ということでしょうか。
そうですね。多様な働き方の推進や同一労働同一賃金の実現等によって、雇用の差別がいまあらためて注目されています。
確かに、報道等でも正規社員と非正規社員の間の賃金格差などの問題を取り上げる機会が増えているように感じます。具体的には、どのようなことが雇用差別にあたるのでしょうか?
大まかに分けると、雇用の場面で禁止されている差別は以下の4つです。
雇用差別 | 例 |
---|---|
①個人の意思や努力によっては変えることのできない属性を理由とする差別 | 人種、性別、年齢、出自等を理由とすること |
②思想・信条等、基本的人権にかかわることを理由とする差別 | 個人の思想信条、国籍、組合(結成・活動等)等を理由とすること |
③雇用・就業形態等を理由とする差別 | パートタイムや有期契約、派遣社員等の雇用形態を理由とすること |
④障害や性的指向(LGBT)等を理由とする差別 | 個人の抱える身体・知的・精神障害等を理由とすること |
私自身は直接的に雇用差別を受けた経験はないですが、いわれてみればこのようなことは報道等で目にすることがありますね。労働法は、これらを禁止するために何らかの規制をしているのでしょうか?
もちろんです。これまで学んできたように、労働法は使用者にいろいろな規制をかけています。①と②については、労働基準法第3条(均等待遇原則)や男女雇用機会均等法、労働組合法などによって禁止されています。③は主にパートタイム・有期雇用労働法によって不合理な待遇差が禁止されています。いわゆる同一労働同一賃金ですね。④は障害者雇用促進法等によって禁止されています。なお、今回は各法律・条文の詳細については触れませんので、興味があればご自身で調べてみてください。
こうして見ると、実に様々な法律によって規制されているのですね。各規制の詳細は宿題として自分でチェックしてみようと思いますが、実際の差別は、雇用の現場でどのような形で行われているのでしょうか?
これについては、統計等のデータがあるわけではありませんが、以下のような形で行われることが多いと思います。見てお分かりのとおり、雇用の入口から出口までの全てのステージにおいて、あらゆる場面で差別が起きているのです。
- 募集採用差別
- 配置差別
- 賃金差別
- 労働時間差別
- 昇進差別
- ハラスメント差別
- 退職解雇差別
確かにそうですね。具体的な差別の事例があれば教えていただけないでしょうか。
はい。例えば昨年、「育児休暇を取得した男性社員が、復帰後に突然、理由もなく地方支店への異動・転居を命じられた」ケースが、配置差別の問題として注目されました。
実際に報道等で話題になりましたね。育休を取得した男性社員への嫌がらせとしか思えないような異動命令で、転勤に応じられなかった男性社員は結局退職したそうですね。
その他、「妊娠を理由に女性社員に退職を迫った」「労働組合を結成しようとした社員を解雇した」などのケースも見られます。
様々な形をとりながら実際に雇用差別が行われていることがわかりました。ところで、これまで深く考える機会がなかったのですが、そもそも、なぜ雇用差別は禁止されるべきなのでしょうか?もちろん私自身、雇用差別はあってはならないと考えていますが。
本質的な問いですね。それには2つの理由があると考えます。
-差別は、なぜ禁止されなければならないのか?-
- 法的観点(労働者の人格的利益の保護)
- 経済的観点(公正で良好、安定的な企業運営の確保)
なんだか急に難しくなってきましたね。一つずつ詳しく教えていただけますか。
はい。①は、当然のことですが、私たちが生きる民主主義の社会において、個人の尊厳や名誉等の人格的利益、人権は侵害してはならないということに基づきます。つまり、労働者の人格的利益を保護するために差別は禁止されなければならない、ということです。
いわれてみれば、市民社会の一員として持つべき当然の意識ですね。次に②について詳しく教えてください。
もし雇用差別が常態的に行われる世の中だとしたら、労働者は経済的に困窮してしまい、生活に重大な支障をきたします。そうなると、経済成長・雇用の増大も見込めなくなり、結果的に企業の経済活動にも悪影響を及ぼすことになります。このように、経済的観点から見ても雇用差別は社会全体にとってマイナス要因となるのです。
なるほど、雇用差別が禁止されなければならない理由がよくわかりました。昨今は、多様な人材を活用して一人ひとりが活躍できる社会を実現することが重要視されています。私たちは、自分が理解できない他者を異質な存在として差別するのではなく、それぞれの特徴を持つ個人として受容し互いに認め歩み寄っていくべきなのかもしれません。
まさしくその通りです。今回は雇用平等をテーマに雇用差別を取り上げましたが、雇用がどうあるべきなのかというよりも、私たちが生きるこの社会がどうあるべきなのかという視点が大切ですね。
教授、本日はありがとうございました。
多様な働き方の推進や同一労働同一賃金の実現は、賃金・人事コンサルティングの専門家集団 プライムコンサルタントにご相談ください!
今回の連載内容は、2017年7月5日の講義を参考に執筆しました。
東京労働大学講座「雇用平等」(奥山明良 成城大学法学部教授)
※東京労働大学講座は、独立行政法人労働政策研究・研修機構が毎年度開催している、労働問題に関する知識の普及や理解の促進を目的とした講座です。今年度で66回目を数え、これまでの修了者は27,000人を超える歴史と伝統を誇る講座です(2018年1月時点)。
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