第127回 労働者を即時解雇するには労基署長の認定が必要かー5ー
中川恒彦の人事労務相談コーナー
今回も、前回に引き続き、即時解雇が可能となるような「労働者の責に帰すべき事由」に関連する裁判例を紹介し、さらに即時解雇処分の採否について言及します。(ホームページ編集部)
Q
当社の営業担当に取引先としばしばトラブルを起こす者があり、これまでも2度ほど始末書をとったことがありますが、この度重要な取引先とトラブルを起こし、その取引先への釈明のためにも、懲戒解雇として即時解雇にしたいと考えています。
ところが、当社の就業規則の懲戒解雇規定では「懲戒解雇の場合は、労働基準監督署長の認定を受けて即時に解雇する。」と規定しています(解雇予告手当も支払いません。)。
当社で規定しておいて聞くのもはばかられますが、労働基準監督署長の認定を受けない限り、懲戒解雇として即時解雇することはできないのでしょうか?
A
労働者を解雇する場合には、30日前に予告するか解雇予告手当を支払うことが必要ですが、労働者の責に帰すべき事由がある場合には、予告および解雇予告手当支払いの必要はありません。
労働基準法は労働者の責に帰すべき事由の有無について労働基準監督署長の認定を受けなければならない旨定めていますが、労働基準監督署長の認定と即時解雇の効力とは直接の関係はありません。
したがって、認定を受けなくても、予告手当を支払わない即時解雇が当然に無効になるわけではありませんが、そのような即時解雇をして認定を受けていない場合は、罰則の適用がありますので、認定を受けるか予告解雇をする等の方法を検討すべきでしょう。