第118回 退職者の競業行為、同業他社への就職に対する差止請求・損害賠償請求は可能かー4ー
中川恒彦の人事労務相談コーナー
これまでご紹介してきた裁判例の中には、たびたび「競業避止義務に関する誓約書」が出てきました。
しかし、労働者にこの誓約書を提出する義務はなく、誓約書に頼りすぎることにはリスクもあります。
今回は、競業避止に関する裁判例のご紹介に加えて、退職時の誓約書についても解説しています。(ホームページ編集部)
Q
先だって、競業避止義務と退職金の不支給についての説明がありましたが、退職者に会社と同じ事業を始められたり、同業他社に就職された場合、退職金の不支給程度では防ぎきれない損害を被る場合も予想されます。
そのような場合、同種事業の営業、同業他社への就職等を差し止めることは可能でしょうか。また、退職者の競業行為により損害を被った場合、損害賠償を請求することは可能でしょうか?
A
退職者が自社において培った技術、知識を利用して、同種事業を始めたり、同業他社に就職したりした場合は、自社としては、多大の損害を被ることもあり得ます。そこで、企業防衛上、就業規則や誓約書等に基づき、そのような行為の差し止めを求めることは可能です。また、退職者の競業行為によって、損害を被ったときは、その賠償を求めることも可能です。ただ、差止請求や損害賠償請求が認められるかは、競業行為の状況にもよります。