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住宅手当の支給基準と見直しの考え方

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住宅手当の支給基準と見直しの考え方

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第102回ホワイト企業の人事労務ワンポイント解説

 

Q

当社では正社員に限り、持家の場合は5千円、賃貸の場合は2万円の住宅手当を支給しています。現在、割増し賃金の基礎賃金から除外して扱っていますが、住宅手当の支給基準については一部社員から不満の声もあり、今後は制度の見直しを検討しています。
住宅手当については、どのような観点で考えるべきでしょうか?

A

住宅費は生活費の中でも大きな割合を占めるため、従業員の生活を安定させる目的で住宅手当を支給している企業は少なくありません。また、住宅手当は中途採用や若手採用の場面において「待遇面の魅力を高める」効果があり、採用競争力の向上や離職防止策として一定の意義を有しています。
一方で、住宅手当は本来、企業が必ず負担すべきものではなく、支給基準の設定が難しいという側面もあります。さらに、同一労働同一賃金の観点から、正社員のみに支給している場合には、非正規社員から「不合理な待遇差」であるとして訴訟が提起される事例も増えています。こうした事情を背景に、制度の見直しを進める企業も多くなっています。
本稿では、住宅手当に関連する主な論点と、今後の見直しの方向性について整理します。

割増賃金の基礎から除外できるのか?

「住宅手当」と聞いてまず思い浮かぶのが、労働基準法で定める割増賃金の算定基礎から除外できるかどうかです。労基法そのものには「住宅手当」という用語は登場しませんが、労働基準法施行規則(21条3号)において、家族手当・通勤手当・子女教育手当などと並び、住宅手当が除外対象として規定されています。

ただし、「住宅手当」と称していれば、どのような支給方法であっても自動的に除外できるわけではありません。名称のみを理由に除外できると誤解している例も見受けられます。

割増賃金の算定基礎から除外できる住宅手当とは、あくまで住宅に要する実際の費用に応じて算定されるものに限られます。具体的には、次のようなケースです。

【除外が認められる例】
・賃貸住宅居住者には家賃の一定割合を、持家居住者には住宅ローン返済額の一定割合を支給する場合
・家賃月額5~10万円の者には2万円、10万円超の者には3万円を支給するなど、家賃額に応じて支給額を区分している場合

したがって、上記例のような実費補助型の支給方法でない限り、住宅手当を割増賃金の基礎から除外することはできず、ご質問の会社の取扱いも不適切ということになります。

同一労働同一賃金の観点から

住宅手当を正社員のみに支給している場合、非正社員にも支給すべきかという問題が生じます。

この点について、ハマキョウレックス事件では、正社員は転居を伴う配転が予定されており、非正社員に比べて住宅に要する費用が多額となる可能性があることから、正社員のみに住宅手当を支給することは不合理な労働条件の相違には当たらないと判断されました。

一方、日本郵便事件では、転居を伴う転勤のない正社員に住宅手当が支給され、有期契約社員には支給されていない点について不合理であると判断されています。

現在、厚生労働省で検討中の「同一労働同一賃金ガイドライン」の改正案においても、転居を伴う配置転換の有無に応じて支給する住宅手当については、転居を伴う配置の変更がある短時間・有期雇用労働者にも、通常の労働者と同一の住宅手当を支給すべきとしています。

こうした流れを受け、正社員に支給していた住宅手当を廃止する企業も見られます。本来、法の趣旨からすれば、不合理な待遇差がある場合には非正規社員側の労働条件を引き上げることが望ましい対応ですが、人件費負担の増大を懸念し、廃止を含めた見直しをする例も少なくありません。

住宅手当制度の見直しの考え方

住宅手当は一律に廃止すべきとはいえませんが、近年の社会情勢や雇用環境の変化を踏まえると、廃止を含めた見直しを検討することにも一定の合理性があると考えます。

その主な理由は、次の3点に整理できます。

1.支給基準の公平性が保ちにくい
持家・賃貸・実家暮らしなど、居住形態により負担額が大きく異なり、不公平感が生じやすい。
2.制度の目的が曖昧になりやすい
近年は転勤の減少やテレワークの普及により、住宅費調整の必要性が低下している。
3. 仕事と直接の関連がない手当である
職務や成果に基づく賃金体系が重視される中、業務と直接関係のない手当は整理した方が一貫性を保ちやすい。

これまで支給されていた住宅手当を廃止することは、従業員に「生活支援の打ち切り」と受け止められかねず、ネガティブな印象を与えるおそれがあります。そのため、制度改定にあたっては、丁寧な協議や説明を通じて従業員の理解と納得を得ることが不可欠です。

あわせて、近年の住居形態や勤務形態の多様化により、住宅手当の支給基準を公平に運用することが難しくなっている点や、給与体系の簡素化・透明化を進める観点から、住宅手当を基本給に統合し、より分かりやすい賃金制度へ移行することの意義を説明することも重要です。さらに、住宅手当の廃止により支給総額が一方的に減額されることのないよう、経過措置や調整手当の付与など、移行期における適切な配慮も欠かせません。

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