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2015年度上半期の景気動向と夏季賞与を予測する(2015年6月景況トレンド)

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2015年度上半期の景気動向と夏季賞与を予測する(2015年6月景況トレンド)

株式会社三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
調査部 藤田隼平
(2015年6月9日(東京)夏季定例研究会ブックレット「夏季一時金関連データ」より)

景況分析と賃金、賞与の動向(11)

日本経済の現状と先行き

 2014年度の日本経済は消費税率引き上げが大きく影響し、実質GDP成長率は-1.0%とリーマン・ショック直後の09年度以来5年ぶりのマイナス成長となった。 最も落ち込んだのは家計部門であり、駆け込み需要の反動と実質所得の減少を背景に、個人消費と住宅投資はともに前年を大きく下回った。

 もっとも、日本経済は14年度上期に景気後退に陥った可能性が高いものの、下期には下げ止まり、足元では緩やかに持ち直している。年度では大幅に落ち込んだ個人消費であるが、四半期ベースで見ると14年7~9月期以降は増加傾向にある。

 駆け込み需要の反動は徐々に和らいでおり、増税直後は消費の抑制要因となっていた実質所得の減少も、春闘でのベア復活など賃金環境の改善や原油価格の下落を背景とした物価上昇率の縮小を受けて下げ止まっていることから、今後も個人消費は持ち直しを続けると見込まれる。

 住宅投資も、着工が緩やかに持ち直していることから15年1~3月期には4四半期ぶりの増加に転じている。足元では、14年度補正予算による住宅エコポイントの復活や住宅ローン金利の優遇拡充といった各種対策に支えられて持家の着工が増加しているほか、貸家も相続税対策としての需要から高水準を維持しており、15年度の住宅着工は90万戸を超えると予想される。

 こうした着工の持ち直しに支えられて、住宅投資は今後も増加傾向で推移するだろう。

 企業の設備投資については、14年度中は横ばいの動きが続いてきたが、企業業績の改善が進む中で、15年1~3月期には小幅に増加するなど、足元ではこれまで先送りされてきた投資が徐々に実行に移されている。今後、内需の持ち直しが続く中で企業の投資意欲が高まってくるとみられ、設備投資は緩やかな増加基調を維持すると見込まれる。

 一方、これまで景気を下支えしてきた公共投資は、逆に減少に向かう見通しである。すでに足元の15年1~3月期に減少に転じているが、14年度補正予算で実施される公共事業の規模は過去2年の経済対策と比べて小さいことから、今後さらに水準を落とすと考えられる。

 輸出については、14年7~9月期以降、電子部品・デバイス類や一般機械類を中心に増加しており、今後も海外経済の回復が続く中、増加傾向で推移すると見込まれる。

 足元で増加している訪日外国人によるインバウンド消費もサービス輸出という形で多少なりとも輸出の押し上げに寄与するだろう。ただし、製造業を中心とした海外への生産拠点の移転といった構造的な要因が影響し、伸びは緩やかにとどまると考えられる。

 このように、15年度の日本経済は持ち直しが続き、年度全体の実質GDP成長率は+1.2%と2年ぶりのプラス成長に転じる見通しである。

夏季賞与(夏のボーナス)を取り巻く環境

 日本経済が緩やかに持ち直す中、夏季賞与を占う上で重要なカギを握る企業業績、雇用・賃金についても、改善が続いている。

 まず、企業業績であるが、財務省「法人企業統計調査」によると、2014年10~12月期の経常利益は製造業、非製造業ともに前年の水準を上回っている。14年度上期は家計部門の回復が遅れたこともあり、業績はまだら模様であったが、国内景気が秋口にかけて下げ止まったことから、業績不振に陥っていた業種でも足元では持ち直しの動きがみられる。

 例えば、製造業では、食料品製造業の経常利益は前年比で減少が続いたものの、輸送用機械製造業では円安効果も加わって増加に転じ、非製造業でも、卸・小売業の経常利益は個人消費の緩やかな持ち直しを受けて増加している。また、企業の規模別に見ても、大企業、中小企業ともに経常利益は前年を上回っており、日本経済が持ち直す中で、企業業績は総じて改善が進んでいる。

 15年1~3月期の経常利益は、本稿執筆時点ではまだ発表されていないものの、原油価格下落によるコスト削減効果の本格化もあって増加が続いたとみられる。

 このため、夏の賞与の原資となる14年度下期の経常利益はかなりの高水準に達したと考えられる。ただし、非製造業については、14年1~3月期が駆け込み需要の影響でかなり高い水準だったことから、それを上回ることは難しく、上期からは増加するものの、前年比では減少するだろう。

 実際、日本銀行「短観(15年3月調査)」でも、14年度下期の経常利益は、大企業、中小企業ともに、製造業では前年比で増加、非製造業では減少が見込まれている。

 なお、15年度の経常利益は、短観ベースで、大企業、中小企業ともに総じて14年度を上回る計画となっている。しかし、中小企業非製造業のように減益を見込む企業もあり、円安による輸入コストの増加などから、先行きの業績を慎重に見る企業は少なくないとみられる。

 次に雇用・賃金であるが、雇用情勢の改善が進む中で、賞与を算定する上で基準とされることの多い基本給(所定内給与)が下げ止まるなど、賃金は持ち直している。厚生労働省「毎月勤労統計調査」によると、15年1~3月期の1人あたり賃金は前年比+0.5%と増加し、そのうち所定内給与も同+0.1%と小幅ながら増加している。

 先行きについても、今年の春闘では昨年を上回る賃上げが達成された見込みであることから、増加基調が続く見通しである。

 賃金環境が好転した背景にあるのが労働需給のタイト化である。15年1~3月期の完全失業率(季節調整値)は3.5%とかなり低く、有効求人倍率も1.15倍とバブル景気の余韻が残っていた92年並みの高水準にある。今後、景気が持ち直す中で、労働需要は引き続き増加するのに対し、労働供給は生産年齢人口(15歳~64歳人口)の減少などを受けて構造的に増加数が限られることから、需給のタイト感はさらに増すことになる。

 そうなると、賃金には上昇圧力が加わることとなり、特に人手不足感が強い中小企業では、労働者の確保・定着のための賃上げや賞与の増加などの動きが広がると考えられる。このように企業業績の改善や、基本給の増加といった夏季賞与が増加するための下地は着実に整いつつある。

14年年末賞与(冬のボーナス)の結果と15年夏季賞与(夏のボーナス)の見通し

 厚生労働省「毎月勤労統計調査」によると、民間企業における14年年末賞与(冬のボーナス)の1人あたり平均支給額(調査産業計・事業所規模5人以上)は37万5431円(前年比+1.9%)と増加した。14年夏の伸びを上回ることはできなかったが、00年以降では04年に次ぐ2番目に高い伸びとなった。

 また、賞与を支給した事業所の割合も72.8%(前年比差+0.6%ポイント)と上昇し、賞与が支給された労働者の割合も85.1%(同+0.6%ポイント)と前年を上回った。

 企業の規模別に見ると、事業所規模30人以上の企業における1人あたり平均支給額は43万6024円(前年比+2.3%)と増加し、事業所規模5~29人の企業についても26万5545円(同+2.1%)とほぼ同程度の伸びとなった。

 14年度上期の中小・零細企業の業績は決して良くはなかったが、労働需給がタイトとなる中で、従業員の定着を図る目的で賞与の増加に踏み切った企業もあったと考えられる。また、事業所規模5人以上について業種別に見ると、製造業は50万4051円(前年比+4.9%)と増加し、非製造業も34万7686円(同+1.1%)と増加した。

 製造業では特に「非鉄金属」(前年比+50.2%)や「電子・デバイス」(同+14.2%)が、非製造業では郵便局・協同組合などの「複合サービス事業」(同+9.6%)が大きく増加した。

 こうした中、15年夏の賞与についても、1人あたりの平均支給額は増加すると予測する。1人あたり平均支給額(調査産業計・事業所規模5人以上)は37万7220円(前年比+1.8%)と高めの伸びとなるだろう。

 業種別では、製造業は55万1527円(前年比+5.7%)、非製造業は33万9908円(同+0.7%)とともに増加する見込みである。また、企業の規模別に見ると、大企業は製造業を中心に業績の改善に支えられて順調に増加すると考えられる。

 これに対し、中小企業では、景気が落ち込んだ影響から非製造業を中心に業績の改善が遅れている企業もあり、業績の先行きに対する不透明感から一部には引き続き賞与の支給を見送らざるをえない企業もあるとみられ、ならしてみると夏季賞与は小幅な増加にとどまると考えられる。

 実際、中小企業が多く含まれる連合の春闘回答速報を見ると、5月13日時点では、一時金の水準は前年並みにとどまっていることが分かる。

【景況分析と賃金、賞与の動向】は、プライムコンサルタントが主宰する
「成果人事研究会」の研究会資料「プライムブックレット」の内容の一部をご紹介するものです。

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