第164回 民法の時効制度の改正により賃金等の時効はどうなるか ー3ー

中川恒彦の人事労務相談コーナー
前回は、現行民法における時効の中断について解説しました。
今回は、改正民法の時効に関する条文の改正を中心に、賃金等労働関係の請求権への影響について考えます。従来なかった新しい条文に関しては、分かりやすい具体例とともに紹介しますので、ぜひご確認ください。(ホームページ編集部)
Q
民法の時効制度が改正されるようですが、賃金等の時効にはどのような影響があるのでしょうか?
また、時効は、中断することによって延長することができるとのことですが、どうすれば中断できるのでしょうか?
A
現行民法上、債権の時効は10年とされていますが、月給、日給等賃金にかかる債権の時効については1年という短期消滅時効が適用されています。昨年6月に公布され、2020年4月に施行される改正民法では、短期消滅時効が廃止され、債権の時効は、債権者がその権利を行使することができることを知ったときから5年、(知らない場合には)権利を行使できるときから10年となります。
賃金等労働基準法に基づく労働者の請求権については、現在、2年(退職金は5年)の時効とされていますが、民法改正との関係でこれをどうするかについては、厚生労働省において検討中です。