第162回 民法の時効制度の改正により賃金等の時効はどうなるか ー1ー

中川恒彦の人事労務相談コーナー
有給休暇は2年以内であれば繰越可能など、労働基準法に基づく賃金等の請求権の時効は2年であることは広く知られています。今回は、2020年4月1日に施行が予定されている改正民法の一部である「債権等の消滅時効」について考える準備として、まず、現行民法における時効について解説します。(ホームページ編集部)
Q
民法の時効制度が改正されるようですが、賃金等の時効にはどのような影響があるのでしょうか?
また、時効は、中断することによって延長することができるとのことですが、どうすれば中断できるのでしょうか?
A
現行民法上、債権の時効は10年とされていますが、月給、日給等賃金にかかる債権の時効については1年という短期消滅時効が適用されています。昨年6月に公布され、2020年4月に施行される改正民法では、短期消滅時効が廃止され、債権の時効は、債権者がその権利を行使することができることを知ったときから5年、(知らない場合には)権利を行使できるときから10年となります。
賃金等労働基準法に基づく労働者の請求権については、現在、2年(退職金は5年)の時効とされていますが、民法改正との関係でこれをどうするかについては、厚生労働省において検討中です。