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「2018年度日本経済ならびに春季賃金改定の見通し」(2018年2月景況トレンド)

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「2018年度日本経済ならびに春季賃金改定の見通し」(2018年2月景況トレンド)

株式会社三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
調査部 土志田るり子
(2018年2月13日(東京)2月14日(大阪)春季定例研究会ブックレット「春季賃金交渉関連データ」より)

景況分析と賃金、賞与の動向(19)

日本経済の現状と2018年度の見通し

 17年7~9月期の実質GDP成長率が前期比+0.6%(年率換算+2.5%)と7四半期連続のプラスになるなど、景気の回復が続いている。しかし、内容を詳しく見ると、順調に拡大しているとまでは評価できない。まず、同期の内需寄与度は4~6月期の+1.0%から+0.1%に弱まった。

 特に個人消費が弱く、7~9月期の伸びは同▲0.5%に落ち込んだ。好調だった前期への反動が出たことに加え、夏場の天候不順の影響で外食やレジャー関連などのサービスへの支出が低迷したようだ。また、住宅投資も同▲1.0%と減少に転じた。加えて、政府部門では、16年度補正予算の執行による押し上げ効果が一巡し、公共投資が同▲2.4%と減少した。

 一方、設備投資は同+1.1%と4四半期連続で増加し、堅調に推移している。企業業績が拡大する中、人手不足を背景に省人化投資や情報化投資へのニーズが高まっていると考えられる。外需は、内需とは対照的に寄与度が+0.5%に高まった。海外景気の回復を背景に輸出が増加したのと同時に、内需の弱さもあって輸入が減少した。

 17年度下期以降も、景気の回復が続くと見込まれる。個人消費は、雇用情勢の改善や、雇用者数の増加による家計の所得の増加がプラス要因となる一方、物価の緩やかな上昇によって実質賃金が伸び悩むことが抑制要因となり、18年度中は四半期ベースで前期比+0.1~0.2%の小幅プラスでの推移が見込まれる。

 企業部門では、18年度も設備投資が底堅く推移して景気を下支えするだろう。業務の効率化、情報化、人手不足への対応の需要が引き続き強いことに加え、2020年のオリンピックを控えた首都圏での再開発案件の増加などが押し上げ要因となる。

 公的部門では、18年度に入ると17年度の経済対策による押し上げ効果が出てくるほか、オリンピック開催に向けたインフラ整備などが公共投資の伸びを押し上げる。一方で16年度第2次補正予算による押し上げ効果がはく落し、年度では前年比+0.1%と、伸びは小幅となる見込みである。なお、高齢化の進展もあり、政府消費は増加傾向が続く見通しである。

 輸出は海外景気の回復を背景に、増加基調が維持される見込みである。特に海外での設備投資意欲の高まりから、建設機械や工作機械等の一般機械類の輸出は好調を維持すると見込まれる。北朝鮮情勢の緊迫化や、欧米での政治的な混乱といったリスク要因はあるが、問題が深刻化しなければ、輸出は引き続き成長率を押し上げると期待される。

 実質GDP成長率は17年10~12月期に前期比横ばいとなった後、1~3月期には同+0.2%とプラス成長に戻り、18年度に入ってからは同+0.4~0.5%での推移となるだろう。年度の成長率は、17年度は前年比+1.7%、18年度は同+1.1%となる見通しである。ただし、17年度はゲタ(+0.5%)が比較的高かったことや、年度前半の成長率が高いことで押し上げられている点に注意が必要である。

春闘を取り巻く環境

 ここでは、春闘の行方を考える上で重要な、企業業績、物価、雇用情勢について、足元の動向を整理しておこう。

 財務省「法人企業統計調査」によると、17年度上期の経常利益(金融・保険業を除く全産業、全規模)は前年比+14.3%の40.3兆円と増加した。業種別に見ると、製造業は同+45.3%と大きく伸びた。世界経済の回復を背景に需要が伸びたことや国際商品市況が上昇したことに加え、輸出企業では円安の進展も追い風となり、素材業種、加工業種とも、軒並み増益となった。

 非製造業では前年比+1.5%と増加したが、前年、16年の経常利益が、純粋持ち株会社の受取利息等の大幅増加という一時的な要因に押し上げられていたことなどから、伸び幅は前年から縮小した。それでも、企業活動の活発化や個人消費の持ち直しを背景に多くの業種で前年比プラスとなった。

 企業業績の拡大は17年度下期以降も続くと見込まれる。資源価格の上昇による交易条件の悪化や人件費の増加が続く一方で、内外需要の回復を受けて売上高の増加が続くことが利益を押し上げるだろう。また、これまでのリストラ効果によって高収益体質が維持されていることも、業績改善の要因になると考えられる。

 次に物価であるが、消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は17年1月以降、小幅ながら前年比プラスでの推移が続いている。主な押し上げ要因は、原油価格の上昇によるガソリン価格や電気・ガス代の上昇である。また、為替レートが前年と比べて円安で推移しており、輸入品価格の上昇も押し上げ材料となっている。

 物価が年間を通じて継続的に上昇したのは、14年4月からの1年間に消費税率引き上げの影響で上昇して以来、2年ぶりのことである。一般的に、賃上げの検討の際に材料となるのは過去1年間の物価動向であるため、今年の春闘では2年ぶりに物価が賃上げを後押しすると期待される。

 最後に雇用情勢であるが、総務省「労働力調査」によると、17年10~12月期の完全失業率は2.8%と低い水準が続いた。11月には単月の失業率が24年ぶりに2.7%となるなど、雇用情勢は一段と改善している。一方、厚生労働省「一般職業紹介状況」によると、足元の有効求人数は調査開始以来最多の水準となっている。

 労働需給は引き続き強く、失業率には更なる低下の余地があるとみられる。また、同統計によると10~12月期の有効求人倍率(パートタイムを含む)は1.56倍となっており、こちらも1973年以来の高い水準である。今後も景気の回復が続く中で、労働需給はさらにひっ迫すると考えられる。需給面からは、当面、賃金が上がりやすい環境が続くだろう。

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2018年春闘における賃金改定の見通し

 昨年、17年の春闘における民間主要企業の賃上げ率は、厚生労働省の調査で2.11%となった。労働需給が引き締まる中で、政府が経営側に賃上げを要請したことが追い風となったとみられる。18年の春闘における賃上げ率は、企業業績の拡大が続いていることや、物価が小幅ながらも上昇していること、さらに、労働需給が昨年以上にタイトになっていることから、昨年を上回る2.20%程度になると予測する。

 今年の賃上げを予測する上での1つ目のポイントは企業業績である。17年の春闘を振り返ると、16年度の企業業績が上期に減益となった後、下期に改善したため、春闘の時期には業績の改善が確定しておらず、賃上げ幅が小幅にとどまった企業があったと考えられる。

 しかし、今年は業績拡大が続く中での労使交渉となるため、ベースアップ(ベア)もしやすく、賃金の伸びは拡大すると考えられる。ただし、一部の輸出企業では足元の業績改善は円安による利益の一時的な押し上げが大きいとみているほか、需要の伸びの背景にある世界的な景気回復がいつまで続くかわからないという先行き不透明感を感じている企業が少なくないため、2.3%を超えるような大幅な引き上げは期待できないだろう。

 2点目は、目標数値が引き上げられた5年目の「官製春闘」で、経営側が政府からの賃上げ要請にどのような形で答えるか、という点である。政府には、デフレ脱却と「経済の好循環」の実現に向けて今年も賃上げが必要だとの認識があり、3%の賃上げを求めている。

 これに対し、経営も賃上げに前向きな姿勢を示しており、今年も政府の要請は賃上げの追い風となるだろう。ただし、過去、続けてベアを行っている企業では固定費の負担が増えつつある。また、今年は一定以上の賃上げと設備投資を行った企業の法人税を減らす仕組みも設けられたが、ベアではなく賞与や手当を含めた合計の所得を増やす形でも減税の要件を満たすことができる。

 このため、年収ベースでの賃上げは実現しても、ベアの数字は期待されたほどは伸びない可能性がある。

 3点目は、労働時間短縮による残業代の減少への対応である。昨今、「働き方改革」が推進される中で時間外労働を短縮する動きが続いているが、社員が受け取る残業代は所定外労働時間が短くなるほど少なくなってしまう。

 このため経団連は企業に対し、18年の春季労使交渉において、残業時間が減っても従業員の給与が大きく減少しないよう対応することを求めている。固定費の増加にあたる基本給の増加より、賞与や手当で還元する方が現実的ではあるものの、残業代の減少分を基本給へ繰り入れる企業があれば、わずかながら賃上げ率が押し上げられるだろう。

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