1. 賃金・評価などの人事コンサルティングならプライムコンサルタント
  2. プライム Cメディア
  3. WEB連載記事
  4. 賢い会社の就業規則・人事規程作成のポイント
  5. 表彰及び懲戒ー3ー

プライムCメディア

表彰及び懲戒ー3ー

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
表彰及び懲戒ー3ー

著者・米田徹氏のプロフィールはこちら

賢い会社の就業規則・人事規程作成のポイント(36)

Q

前回は、懲戒処分をするためには懲戒事由を就業規則に定める必要があり、その際には、「けん責」から「降格」までの比較的軽い処分と労働契約解消となる「懲戒解雇」のような重い処分では分けて定めるのが良いというお話でした。

A

絶対にそうすべきだというわけではありませんが、今回はまず企業に留まることを前提にした比較的軽い処分ともいえる「けん責」から「降格」までの懲戒事由を検討しましょう。

 つまり、労働契約の解消に位置づけられる「懲戒解雇」およびこれに準ずる「諭旨解雇」については、改めて別に定めるということです。
 なんといっても懲戒解雇は懲戒処分の中でも極刑と言えるものですし、労働者との間で紛争になるような事態も多いわけですから、他の軽い処分とは明確に分けて定めるのが適切と考えられます。

Q

わかりました。では、まず「けん責」から「降格」までの処分はどのような場合に行われるのでしょうか?

A

「けん責」から「降格」までの処分の事由について、どの就業規則にもあるのは、「正当な理由のない欠勤」「遅刻、早退などで誠実に勤務しない」「虚偽の申告、届出をした」「セクハラやパワハラ」「社内での暴行、脅迫、傷害、暴言等」「会社の備品を無断で私的利用した」「過失により会社に損害を与えた」等々でしょう。

 できるだけ具体的に懲戒事由を定める必要がありますから、各企業の実態にあわせて懲戒事由を明記することになります。
 そして、最後には必ず忘れずに次のような包括規定を定めましょう。

(包括規定の例)
第○条(懲戒の事由)
1 従業員が次のいずれかに該当するときは、情状に応じ、けん責、減給、出勤停止又は降格とする。
・・・・
・ その他前各号に準ずる程度の不都合な行為があった場合

 懲戒事由を定める際の注意事項として、「懲戒とは企業秩序に違反する行為があった。」ことが前提になるという点に留意ください。つまり、懲戒処分の対象は、企業施設内、就業時間内における行為が対象になります。
 逆に言えば企業施設外かつ就業時間外の行為については、原則として懲戒処分の対象にはできません。

 ただし、企業施設外かつ就業時間外であっても会社関係者に係る行為の場合は話が別です。
 例えば就業時間後の飲み会で上司などが部下の女性に対しセクハラ行為に及ぶ等は懲戒処分の対象になりえます。

Q

セクハラやパワハラでは実質上の職務の延長と考えられる飲み会なども職場とみなされると聞いたことがあります。
それでは、例えば公休日などに社外で傷害事件を起こして警察沙汰になるような犯罪を犯した場合はいかがでしょうか?

A

そのような犯罪行為の場合、基本的にはその従業員は国家との関係で刑事罰を受けるので、会社がむやみに懲戒処分を行うことはできないと考えてください。

 しかし、例えば運送業の会社の従業員が私的行為とはいえ酒酔い運転で重大事故を起こしたとか、社員が私生活上の非行で会社の社会的名誉・信用が害されたというような場合には状況により企業秩序違反の懲戒処罰を行うことは可能と考えられます。

 このあたりの判断はケース・バイ・ケースとなりますが、例えば会社の信用が害されたとして懲戒処分を行う場合には、社員の犯した不名誉な行為により会社の社会的評価に相当重大な悪影響がでているということが客観的に評価されるような場合に限られると考えるべきだと思います。

Q

わかりました。ところで懲戒処分に関連して「一事不再理の原則」という言葉があると思いますが、説明してください。というのも「始末書を提出させ、減給する。」というのは二重処罰で違法ではないかとクレームをつけてきた社員がいて手を焼いたことがあります。

A

刑事訴訟法では、一度処罰が確定した事案について重ねて処罰をすることができないとする「一事不再理の原則」があります。これは「二重処罰の禁止」といっても良いでしょう。

 会社においても同様に、ある懲戒事由相当の非違行為を行った従業員に「停職処分(出勤停止)」を行い、更に後日「降格処分」を行うといった場合は「二重処罰」で権利の濫用になりかねず、問題になりえると思いますので十分注意してください。

 しかし、「始末書をとり減給する。」という場合には、同時に行うわけですから刑事罰でいえば「併科」の問題になります。
 実際、裁判判決で「懲役」と「罰金」が同時に科される場合などもありますので、これは「一事不再理の原則」とは関係ありません。
 同様に「減給と同時に始末書を提出させる」ことで「二重処罰の問題」は生じないと考えて結構です。

Q

それでは、例えば過去において何回も懲戒処分を受けているのに反省せず、今回も非行を行ったというような場合、過去の非行を考慮して処分を重くするというような場合はどうなりますか?

A

過去の非行を情状として考慮することは二重処罰とは言えず差し支えありません。

 刑法においても「累犯過重」という考え方があり、一度刑を科したにもかかわらず、懲りずにまた罪を犯した場合、再犯者として初犯者よりも厳しい刑が科されることになるのが一般的だと思います。
 ですから、懲戒規定にも「数回懲戒処分を受けたにも係らずなお悔悛の見込みがない場合」といった規定を設けても良いと思います。

Q

わかりました。ところで、「けん責」や「減給」などの懲戒処分を行った際、これを他の社員に知らせることは問題ありませんか。

A

懲戒処分を受けたこと自体は他の労働者には分からないようにするのが原則だと思います。
例えばセクハラのような事案では、処分を受けた者だけでなく被害者のプライバシーにも配慮する必要があります。

 例えばセクハラのような事案では、処分を受けた者だけでなく被害者のプライバシーにも配慮する必要があります。

 ただ、前回にも申し上げた通り、「懲戒処分」には従業員への教育機能があります。
 企業秩序を乱す行為についてはきちんと処分されるのだということを他の従業員にも知らしめ、そのことで企業秩序の維持に資するという判断の上で公表するのは十分可能です。
 その点、あえて「懲戒処分は公表する場合がある。」といった規定を置く必要もないものと考えられます。

 なお、公表はあくまで社内に限るべきで社外への公表はゆきすぎとなります。
 社内報などに掲載する場合でも取引先等に配布する場合は適当ではありませんし、公衆の眼に触れる場所への掲示なども適切ではありません。

 それでは、次回は懲戒処分の中でも最も厳しい処分になる「懲戒解雇」及び「諭旨解雇」について検討しましょう。

今回のポイント

  • 「けん責」から「降格」までの処分についてはまとめて事由を列記し、最後には必ず包括規定を入れる。
  • 懲戒は企業秩序違反に対する制裁なので原則として企業施設内、就業時間内における行為が対象になる。
  • 一度処罰が確定した事案について重ねて処罰を下すことは二重処罰になりかねず問題を生じるが、「始末書をとって減給する」等、同時に行う処罰は問題ない。
  • 懲戒処分を行ったことは原則として他の社員に知らせるべきではないが、企業秩序維持に資すると判断される場合、社内への公表は可能である。

プライムコンサルタントでは、本記事のようにWEB会員限定サービスをご提供しています。
「WEB会員」サービスはどなたでも無料でご利用いただけます。
今すぐご登録ください(入会金・会費など一切無料です。また、ご不要であればいつでも退会できます)。

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

カテゴリ