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使用済み自動車のトータルソリューション企業 エコアール 1⃣

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使用済み自動車のトータルソリューション企業 エコアール 1⃣

 

―企業の一層の成長を目指し人制度改革に取り組む―

エコアール紹介

1964年に栃木県足利市で石井正勇(まさたけ)氏が創業、本年(2024年)創業60年。1974年にイシイカー工業有限会社に社名を変更。2005年1月自動車リサイクル法の完全施行に備えて新工場建設し、全部再資源化認定工場に認定される。2006年に石井浩道氏が社長に就任し、社名を株式会社エコアールへ変更。2014年にエコアールマレーシアのエンジン再資源化工場が稼働。従業員数140名、正社員の平均年齢40歳(2024年4月時点)。2023年8月期売上高45億円。自動車解体、中古パーツのリユース、自動車整備、中古自動車販売など、使用済み自動車のトータルソリューション事業を多角的に展開。現在、貿易相手国は50ヵ国以上。

NHKの「解体キングダム」でも紹介されたエコアールのリサイクル率99%の自動車解体の技術。エアバッグ処理、フロンガス回収、廃液を抜いて処理した後は、ニブラと呼ばれる金属解体機で、部品を取り出し、熟練の操縦者が細部にわたり解体します。栃木県足利市に本拠を置くエコアールは人間の手による手バラシでは考えられない月間4000台の解体能力を持ち、あらゆる自動車を解体し資源として循環させ、使用済み自動車のためのトータルソリューション企業です。(会社HP:https://www.eco-r.jp/

 

 

エコアールとのご縁は1本のメールから始まった

 当社プライムコンサルタントとエコアールとのご縁は2018年にいただいた1通のメールから始まりました。当時のエコアール様は「明確な人事制度が確立されておらず、次の成長のステップに行くためには整備が必要」という石井浩道社長からの強い危機感が発端でした。

 その時の状況を石井社長は次のように述べていらっしゃいます。「当時、社員が100人を超えた頃で、次第に社員一人ひとりの適切な評価がむずかしくなってきていました。経営幹部が鉛筆をなめて一人ひとりの評価をするわけですが、統一した評価ができない。自分が社員だったら、こんなことではいやだろうなと思ったわけです。それでいろいろ模索している中で、知り合いの社長からプライムコンサルタントを紹介され、メールを差し上げた訳です。プライムさんの担当者と話すうちに、人事制度を構築する能力を持った人材をそろえ、当社の状況に合わせてカスタマイズしてくれるということが分かり、評価制度を中心に人事制度の構築をお願いすることになりました。」

 同社は1964年(昭和39年)、現会長の石井正勇氏が 創業しました。東京オリンピック開催の年です。そして時は大量生産・大量消費の高度成長時代。解体屋を創業しましたが、農家育ちの石井会長は大量消費時代の成り行きに疑問を感じ、消費し廃棄する世の中に「もったいない」の思いを抱いていました。2代目社長の石井浩道社長もそうした思いを持ちながら経営に乗り出しました。2006年(平成18年)5月に社長に就任し、工場移転を契機に社名を「エコアール」に改称しました。エコアールは「Ecology」(環境)のエコと「Recycle」(再資源化)、「Reduce」(発生抑制)、「Reuse」(再使用)という3つの「R」の頭文字を取り、「環境産業」として生きていこうという思いを込めたものです。

エコアール社屋エコアールの社屋(足利市)

 

自動車のトータルソリューション企業を目指す

 2005年に自動車リサイクル法が施行されました。この年にエコアール(当時はイシイカー工業)の新工場が竣工し、全部再資源化の認定工場となっています。これは使用済み自動車の全部再資源化への取り組みの第一歩です。その中心拠点となる全天候型適正処理工場が稼働したのです。月間処理能力2500台は業界でも屈指の規模で、業界きっての先進工場として評価されています。こうしたこともあり、石井社長は一般社団法人日本自動車リサイクル機構の副代表理事の要職も務めています。

 現在の同社の主な事業は3つです。まず、中古自動車の販売。これは中古自動車を整備してよみがえらせて再び自動車マーケットに送り出す事業。もうひとつは、まだ使えるパーツを取り出して、これを自動車整備工場や自社が展開する店舗で販売する事業。そして使えなくなった自動車のスクラップを販売する事業。温室効果ガスの排出量と吸収量の均衡を目指すカーボンニュートラルが国の方針となっていることから、鉄鋼業では二酸化炭素の排出量が多い高炉から電炉への転換が進んでいます。電炉は鉄のスクラップを使うため、廃車スクラップの需要が高まり、スクラップ価格は安定しているとのこと。

 3つの事業のなかでは中古パーツの販売は、日本だけでなく海外からの需要もあり、売り上げ全体の5割強を占めています。部品については、海外で日本の自動車の人気が高く、また年間150万台以上の中古自動車が日本から世界へ輸出されていることから、修理に必要な中古部品のマーケットも必然的に世界中に拡大しています。海外へのパーツの販売は、コンテナに載せた段階で支払いが行われるとのことで、エコアールの重要な事業部門となっています。

 パーツ販売は中古自動車の買い入れの際にもメリットがあります。スクラップにするにしても、パーツが使えるとなるとやや高めに買い入れることができ、競合相手に競り勝つことができるからです。平均車齢が高くなり、中古車市場がタイトになっていることからも、中古パーツの販売は欠かせないものとなっています。

 パーツ販売だけでなく、さらには、2024年2月にアフリカ東部のタンザニアに保税ヤードを取得し、中古車輸出事業を始動。経済の成長とともに自動車の需要が急速に高まる東アフリカをターゲットにしています。成熟した国内市場だけでなく、世界をにらんだ経営を展開。その直接取り引き先は50ヵ国以上に及び、エコアールが持っているノウハウを現地で開花させ、循環型社会の構築にひと役かっています。

 このようにエコアールは使用済み自動車のトータルソリューション企業であり、社会に貢献する環境産業です。


1964年創業のエコアールが最初に⼿がけた⾞はサイドドアが観⾳開きのクラウン。王冠のエンブレムは使⽤済み⾃動⾞が実は宝の⼭であることを象徴していた。
エコアールはあらゆる使⽤済み⾃動⾞のリユース、再資源化に対処できるトータルソリューション体制を整えている。

強い意志のもと契約とコンプライアンスを遵守

 中古車販売業では、このところ不祥事が起きていますが、エコアールは創業以来、その取り引きに高い信頼を得ています。「契約とコンプライアンス(法令遵守)は絶対に守る。このことを強い意志で実施しています」と石井社長は言い切ります。中古車の買い入れ価格は査定本部が決め、その価格に基づいて営業が買い入れるという明確で透明な方法をとっています。

 石井社長がもうひとつ大事にしているのは「現場力」です。現場力とは組織のそれぞれの持ち場で活躍する一人ひとりの社員の力の総和のことです。「まやかしの経営はお客さまにすぐに見抜かれてしまいます。どんな世界でも必要なのはプロの人材です。得意な領域で、世の中のためになることを行っていかなければなりません。そういう人材が育ってくるまでは、地べたをはうように足下を確かめながら人材を育成していきたい」と、決意を述べています。

 石井社長が経営者の資質として重視するのは勘。別の言葉で「鼻が利くこと」とも表現しています。勘を研ぎ澄ますには「情報を集めることが大事」。それで社員にも「アンテナを高く張って情報を集めることを奨励しています」と、石井社長。「時流、業界、経済、政治、内外のマーケットの情報に目をこらし、これだと思った情報は社員にも提供しています。その情報をどう見るかは本人の感性になります」と、社員にもアンテナを高く張ることを期待しています。

 というのも、現在、自動車産業は百年に1度といわれる変革期にあるからです。ガソリン車から電気自動車への移行は産業の有り様を変えることから、国を巻き込んでの競争となっています。自動車メーカーはいうに及ばず部品メーカー、電力会社、商社、大手リサイクラー各社が次々とエコアールを訪れ、将来を見据えて話し合いが進められています。

解体の前処理が終った使⽤済み⾃動⾞は、熟練の技術者が解体機ニブラで解体する

2018年6月、人事制度構築の検討開始

 当社プライムコンサルタントとエコアールとの新しい人事制度構築の作業は2018年6月にスタートしました。社長や常務取締役、執行役、ゼネラルマネジャーなど7人でプロジェクトチームを構成し、10ヵ月かけて社員区分、評価、賃金・賞与の仕組みについて検討が開始されました。新制度導入にあたり、石井社長が希望したのは次のことです。

 これまで明確な人事制度はなかったが、会社と社員の間には信頼関係があったため、大きな問題は起きていなかった。しかし、企業が一層の成長を目指すには、会社・仕事・処遇が魅力的で社員が定着すること、そのためにも社員が自らの将来を展望でき、安心とやりがいが感じられ、貢献がどのように報いられるか、透明性のある明快な人事制度にしたい、ということでした。また、持ち場でこつこつと業務に携わり貢献している社員も評価される人事制度にしたい、という課題も出されました。

 そして10ヵ月の検討の末に導入されたのが、「役割責任区分」に基づく人事制度です。役割責任区分は、いわゆる等級に相当するもので、その階層は8階建てです。「実務階層」の名称はB、G、P、Lとしました。これはブロンズ、ゴールド、プラチナ、リーダーの略称。さらに「管理・専門職層」のC、M、GMはチーフ、マネジャー、ゼネラルマネジャーの略称です。これらの名称は石井社長の意向を反映したものです。一般的には下から1等級、2等級などとし、等級ごとに課長、部長などの役職を割り当てることが多いのですが、こうした名称よりも「社員全員が輝いてほしい。オリンピックなら金銀銅で一目瞭然。家に帰ればみんな大黒柱です。ひとりの人間としてきちんと評価されるべき」。これが各階層の名称の由来で、上下関係を意識することがない親しみやすいものとなりました。

⽯井浩道代表取締役社⻑(左) 笠原怜⼠郎執行役員 総務本部長(右)

役割行動基準の定義にエコアールの思いを込める

 役割行動基準の設定項目は5つです。そのひとつに「対組織」があります。そこではオールマイティな「考働(こうどう)集団となろう」と行動基準を示し、それを「エコアール丸」の名称で括っています。「対自己」では今日より明日と成長する人材になること、それを「エコアール人」としました。このように印象深く身近な言葉で役割行動基準を示しています。そしてそれぞれの階層に行動基準を示しました。

 総務部本部長の笠原怜士郎さんは今回の人事制度の導入にあたって実務面から作業をしてきた人です。「行動基準の定義づけでも社長のセンスが光っていました。たとえばエコアール丸という同じ船に乗っているという考えが、結果的に浸透するようになって、今では社員同士で話し合っていると、その考えってエコアール丸だよね、それはエコアール人だよね、などと気づくことがあり、社員に根付いてきたことが感じられます。行動基準や評価方法については時間をかけて意見を出し合って検討してきたので、その時間があったからこそ、人事制度が違和感なく受け入れられてきたものと思います」。だからこそ、「いい制度ができたので、社内に新制度をリリースする日が楽しみでした」と、満を持しての発表だったと言います。

 石井社長が力を込めて話していたコンプライアンスについては「対社会」の項目で「コンプライアンスと3R」と表現されました。「コンプライアンス体制の確立・維持とリサイクル・リデュース・リユースを継続的に実践する」。実践を強く意識した定義となっています。

 

 このようにして2019年4月に新人事制度がスタートしました。次回は2023年度に行った「人事制度2.0」のバージョンアップについて紹介します。

 

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