1. 賃金・評価などの人事コンサルティングならプライムコンサルタント
  2. プライム Cメディア
  3. WEB連載記事
  4. プライムブックレット巻頭言
  5. 賃金で我慢比べをするのはもうやめよう(ブックレット63号巻頭言)

プライムCメディア

賃金で我慢比べをするのはもうやめよう(ブックレット63号巻頭言)

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
賃金で我慢比べをするのはもうやめよう(ブックレット63号巻頭言)

株式会社プライムコンサルタント代表  菊谷寛之
(2022年2月15日(WEB開催)春季定例研究会 ブックレット「はじめに」より)

人材マネジメントを展望する(31)

 バブル崩壊後の低成長経済が定着した西暦2000年(平成12年)前後を境に、日本の賃金水準は上がらなくなった。むしろ下がり続けている。
 物価も長く横ばいが続き、ユニクロやニトリなどで買える中国製の安い商品のおかげで生活費は楽になった面もある。しかし実際には消費税が5%から10%に増え、社会保険料や教育費、医療費が膨らみ、日本の賃金の購買力は先進国の中でも最下位レベルに落ち込んでいる。いったい、なぜこうなってしまったのだろうか。

 そもそも「日本企業の生産性が低い」といってしまえばその通りだが、かつての「生産性基準原理」は、皆の創意工夫で生産性を上げ、全体のパイを増やして賃金を上げ、社会を豊かにしようという好循環経済のビジョンが社会で共有されていた。しかしバブル崩壊の強烈な体験は、賃金を信頼の基礎や豊かさの源泉ではなく、皆で節約・我慢すべき膨大なコストとみなす、まるで戦時統制下のようなマイナス・デフレ思考をもたらした。

 日本企業で正社員の賃金が決まっていく仕組みをごく単純化していうと、会社の大事な終身メンバー候補として採用した新卒人材を初任給で迎え入れる。その後は仕事の経験と熟練、責任の度合に応じて毎年の昇給・昇格とベースアップを積み重ね、賃金が増えていく。まず人を採用し、人に仕事をつけ、人の年功に値段をつけるメンバーシップ型の「属人給」の仕組みである。



 見方を変えると、これは企業の内部で人と仕事をやりくりし、お互いの立ち位置を比較考量して賃金序列を決める仕組みである。そのため、いったん経営が厳しいとなれば、皆で一致協力して節約・我慢すべきという同調圧力になりやすい。

 諸外国の場合は、仕事や組織のポジションに人をつけるジョブ型雇用をベースに、仕事やポジションの市場価値で値段をつける職務給が賃金の基本である。
 はじめから、必要な仕事に必要な人材を、都度採用する局面で個々の賃金を決めるため、採用が難しい職種は思い切って賃金を上げる。そもそも賃金決定の動機が投資的で選別志向であり、賃金水準も外部の市場価格に敏感に反応して絶えず動く。

 働く側も基本的に仕事が変わらない限り昇給しないことを理解しており、不要な仕事や事業が整理されれば自分の居場所もなくなるため、勢い新たな仕事の機会や事業の将来性に対して選択的になる。結果として、自分で自分のキャリアを切り拓き、稼ぎのよい仕事や将来性のある会社への労働移動が常態化する社会となる。

 日本ではこの20年間、会社の存続と雇用維持、株主本位の利益確保を優先し、皆で昇給や賞与を節約しながら、既存の経営資源でやりくりする内向き志向の経営を続けてきた会社が多いように思う。しかし、その間も事業の優勝劣敗が進み、絶対的な人手不足が進行する中で、有能な人材は成長機会の乏しい仕事や会社に見切りをつけ、より成長力のある事業家精神に富んだ会社に移る動きが加速してきた。
 日本がいきなりジョブ型雇用の社会に変わるわけではないが、これからは成長性のある仕事や事業の機会を開発し、仕事基準の賃金待遇をフル活用して、外に開かれた雇用・人事を実践する会社が競争優位に立つことは間違いないように思われる。

プライムコンサルタントの
コンサルティング

コンサルティング会社と聞くと、「敷居が高い」「中小企業の当社には関係ない」といった考えをお持ちではありませんか?

当社のクライアントの大半は、従業員数が30~300名ほどの中堅・中小のお客様です。
これらのお客様からは「中小企業の実情を理解したうえで的確なアドバイスをくれる」「話をしっかり受け止めようとしてくれる」「いい意味でコンサル会社っぽくなく、何でも相談できる」といった声を多くいただきます。
担当コンサルタントの「親しみやすさ」も、当社の特長の一つです。

会社の規模に関わらず、一社一社のお客様と親身に対話をすることが当社の基本方針。
人事のご相談はもちろん、それに関連する専門知識を持ったコンサルタントがお客様の悩みをしっかり受け止め、人事にまつわるさまざまな課題を解決に導いてまいります。

ぜひ、お気軽にご相談ください。

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

カテゴリ