新テレワークガイドラインに沿ったテレワークの進め方
第49回 ホワイト企業人事労務ワンポイント解説
Q
当社は新型コロナの感染防止の観点からテレワークを試験実施し、困難と思われた業務であっても、予想以上にできることがわかったと感じています。しかし、経営陣からはテレワークの恒常化に消極的な意見もありコロナ終息後の対応をどのようにすべきか決めかねています。テレワークの推進・定着を図る上で、労務管理を中心にどのような点に留意すべきか、会社方針を決める上でのポイントをご教示ください。
A
働き方改革の推進、そして感染防止対策としても注目されるテレワークですが、厚生労働省は今年の3月、テレワークガイドラインを改定しました。旧版(2018年2月)に比べ全体的に記載内容の幅が広がり、解説もわかりやすく丁寧になっていて、この改訂版の内容をしっかり把握して対応していくことは企業が良質なテレワークを進める上で役立つと考えられます。以下、改定された新ガイドラインを参考にして貴社のテレワークの進め方について検討してみましょう。
「テレワークの推進」に当たっては、貴社における「導入の目的、対象業務、申請手続き、費用負担、労働時間管理」等について明確にする必要があります。会社にとっては、「今回のような非常時にも感染リスクを抑えて事業の継続ができる」、「優秀な人材の確保、雇用継続につながる」「資料の電子化や業務改善の機会となる」などのメリットが考えられます。一方、社員にとっては「通勤の負担軽減」、「ワークライフバランスの向上」、「集中力が増して、仕事の効率があがる」といった効果が期待できるのではないでしょうか。
「対象業務」については、「業務単位」で整理することが有効です。業務プロセスの見直し、仕事の見える化、電子化・ペーパーレス化、Webツール活用など、仕事のやり方を工夫することで一気にリモートワークが進む場合があります。
「テレワークの対象者」については、業務内容だけでなく、本人の納得の上で対応を図る必要があります。在宅勤務は生活と仕事の線引きが困難等で希望しない社員にはサテライトオフィス等の利用も考えられます。また、新入社員、中途採用社員や異動直後の社員は、コミュニケーションの円滑化に特段の配慮が必要になり出社と組み合わせる等の対応が有効です。
労使で十分に話合い、会社としてのテレワーク許可基準などのルールを明確にすることが重要になります。
人事評価制度と人材育成
テレワークは、非対面の働き方であるため、個々人の業務遂行状況などが把握し難いというマイナス面があります。適切な人事評価を行うために、「上司は部下に求める内容や水準等をあらかじめ具体的に示しておく」「上司と部下の面談(1on1)を頻度高く行う」「時間外のメールに対応しなかったことなどを理由に不利益な取扱いをしない」「出勤者だけを有利に高く評価しない」「評価者に対する訓練等を実施する」等の対策を検討することが有効と考えられます。
テレワークの特性から、企業には自律的に業務を遂行できる社員の育成を図ることが求められます。社内教育の充実が課題になりますがオンラインの特性(動画利用等)を生かした実施は人材育成にとって有効といえます。また、新たな機器やオンライン会議ツール等を使用する場合、必要な研修を行うことも有用です。
費用負担について
当然ですが、テレワークを行う社員に過度の負担が生じることは望ましくありません。業務で使用した携帯電話料金やWi-Fi通信費などを実費で支給する、または毎月定額や在宅勤務日あたり数百円などの基準でテレワーク手当を支給する方法等を検討する必要があります(図参照)。
様々な労働時間制度の活用
オフィスでの労働時間制度を維持したままでテレワークを行うことが可能です。一方で、在宅での勤務について必ずしも一律の時間に労働する必要がないときには、就業規則に定めることで1日の所定労働時間はそのままにして、始業及び終業の時刻を労働者ごとに変更できる自由度を認めることも考えられます。
その他の方法として、「フレックスタイム制」はテレワークになじみやすい制度と言えます。テレワークする社員の生活サイクルにあわせて始業及び終業の時刻を自ら柔軟に決定し調整することが出来ます。在宅での労働で一定時間業務から離れる「中抜け時間」についても、労働者自らの判断によって、その時間分その日の終業時刻を遅くしたり、清算期間の範囲内で他の労働日に労働時間を振り充てることが可能です。
また、「事業場外みなし労働時間制」も有力な方法です。近年では外回りの営業職等における事業場外みなし労働時間制は否定される場合が多くなっていますが、テレワークガイドラインでは「携帯電話などを所持していることのみをもって、当制度が適用されないことはない」ことが明記されています。「①情報通信機器が、使用者の指示に基づいて常時通信可能な状態におかれていないこと、②随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと」、の2つの要件を満たせば、事業場外みなし労働時間制度の活用が可能です。
テレワークにおいて実労働時間の把握をどのようにするかが問題になりますが、例えば、パソコンなどの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として、始業及び終業の時刻を確認するのは望ましい方法といえます。
また、労働者をある程度信頼するのであれば、「中抜け時間」も含め自己申告制により労働時間を把握することが考えられます。その際には、「労働者に対して十分な説明を行い」自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と著しい乖離があることが判明した場合(申告した時間外にメール送信があったり、PCの起動記録がある等)、労働時間の補正をすることなどが必要です。
以上の他にも、テレワークを実施する上では、「長時間労働対策」「メンタルヘルス対策」「セキュリティ対策」「ハラスメント対策」など考慮が必要なポイントがあります。新テレワークガイドラインは本文17頁(A4)でチェックリスト(事業者用、労働者用)なども付いています。厚生労働省のホームページから入手して検討されることをお勧めします。
テレワークガイドライン改定はこちら(厚生労働省の改定版テレワークガイドラインPDFが開きます)
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