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ジョブ型雇用とは何か、その導入手順

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ジョブ型雇用とは何か、その導入手順

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第47回 ホワイト企業人事労務ワンポイント解説   

Q

近年、大手企業などを中心に雇用を「ジョブ型」に変えようとする動きがあるようです。私は従業員数約50名のIT関連企業の経営者ですが「ジョブ型雇用」とは何か、またメリットや導入方法について興味があるのでご教示ください。

A

「ジョブ型雇用」という言葉を耳にする機会が増えています。あらかじめ職務内容を規定した定義書(ジョブ・ディスクリプション)を策定し成果に基づいて評価する仕組みで、欧米では一般的と言われています。日本では勤続年数に応じて昇給する「年功型」が普及していますが、欧米のジョブ型雇用では年功概念は否定され、また、企業内で特定のジョブがなくなれば、雇用そのものがなくなるケースが多いと言えます。経団連などが日本での「ジョブ型雇用」に前向きな姿勢を示していますが、日本型の雇用は守りつつ、「ジョブ型社員」が一層活躍できるような複線型の制度の構築・拡充を図りたいとする意図があるようです。本稿では、ジョブ型雇用とは何かについて考えます。

 

ジョブ型とメンバーシップ型の比較

 ジョブ型雇用に対する比較対象として使われるのが日本式の「メンバーシップ型雇用」です。これまで日本の大企業等は新卒一括採用を実施してきましたが、学生にとっては、特定の職務につくというよりも、特定の企業のメンバーになることに大きな意味があると考えられます。これは、欧米では「ジョブ型=就職」なのに対し、日本では「メンバーシップ型=就社」という対比で考えると良いでしょう。

 これまでの日本の「メンバーシップ型雇用」では職務を限定せず、新卒者をさまざまな仕事に就かせながら時間をかけて育てていくというやり方をとっていました。勤続年数をもとに昇給する年功型の賃金制度にもこの考え方が表れています。企業にとっては長期的な視点で社員を育成できる利点があります。
 しかし、労働力人口が減少し、デジタル化やグローバル化が進展する時代に、企業が求めるのは高い専門性と意欲を備えた社員といえます。メンバーシップ型は「人に仕事を割り当てる」仕組みですが、ジョブ型は「特定の仕事に人を充てる」仕事基準のシステムといえます。環境変化の激しい現代では、後者(ジョブ型)がよいと経営者が考えるのも当然といえます。
 社員にとってもジョブ型は専門職の仕事に集中しやすく「スキルを磨きやすい」「自分の得意分野、学んでいきたい分野に集中しやすい」というメリットがあります。両システムの特徴をまとめてみましょう。

デジタル化がもたらす影響・テレワークの普及

 ジョブ型雇用が注目される理由はいくつか考えられますが、最も重要なのが、デジタル技術革新への対応力です。従来の日本型雇用であれば、新たに必要になる技能を習得させるため企業内で社員を育成し配置してきましたが、デジタル技術の進展は企業内で職業訓練して対応するにはスピードが速すぎると言えます。
 デジタル技術を駆使した新たなビジネスモデルを展開するために、企業は即戦力として外部からスキルを持った人材を調達する必要が生じます。その際、その職種の相場の賃金を提示して募集するといったジョブ型雇用が重要になります。

 
 ジョブ型は新型コロナで広がったテレワークとも相性が良いといえます。テレワークが進んでいない企業では「適した仕事がない」という理由をあげますが、これは個々の社員の職務内容が特定されていない業務体制であることと関係していると考えられます。
 デジタル化やAI技術の進展により、人間の従事する職務は、非定型的で知的創造性を要する個々人の専門性を必要とするものになり、ジョブ型に移行していくものと考えられます。そうした職務は、場所的・時間的な制約のないテレワークに適していると言えます。

ジョブ型雇用の導入手順と職務記述書

 今後、多くの企業では徐々にジョブ型雇用に転換していく必要があると考えられますが、実際の導入は容易ではありません。
 導入にはまず、①組織全体の仕事内容を分析し職務に分解する必要があります。次に、②それぞれの職務内容を定義します(職務記述書)。そして、③職務の難易度や責任の軽重などの基準を設定し等級に分類します。さらに、④等級と賃金テーブルの対応を決定する賃金制度が必要になります。そして、⑤職務記述書にもとづき社員と職務をマッチングさせ、評価や人材育成を行っていくという流れになります(次表を参照)。

 この際、「②職務記述書の作成」が重要となります。記述書の良くない例としては、具体的な職務内容がほとんど記載されていなかったり、必要なスキルや知識だけが列挙されている場合です。肝心の仕事内容が分からなければ、社内外からの公募もうまくいかず、社員のスキルやキャリアアップへの意欲向上につながりません。

 一方、職務の内容をタスクレベルまで細かく書きすぎると、環境変化に対応できずメンテナンスも困難になります。職務内容はある程度、抽象的で概括的な記述に留めることも必要になります。
 職務記述書は社員数や職種によっても記述内容に違いが生じます。作成経験が不足している日本の人事部門や管理職は苦戦を強いられると考えられますが、ジョブ型雇用によって社員の成長を促し人材力を高め組織を活性化させるためには職務記述書の作成と質の向上に企業はこだわるべきでしょう。 

 欧米と違い日本では転職市場が活発では無く、職務記述書で記載した仕事が無くなったとしても解雇がしにくいといった事情があります。その点、ジョブ型雇用は専門分野の仕事が安定的に存在している大企業が中心で日本の中小企業では導入しにくいという指摘があるのも事実です。しかし、今回の相談者の会社はIT関連企業で適材適所のプロフェショナル人材が必要と考えられるため、中小企業であってもジョブ型雇用が機能する可能性は高いと考えられます。まずは、管理職や上級職から始めて、その後、対象を拡げていくといった対応が現実的といえるかもしれません。 

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