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退職証明書とは何か? 記載上の留意事項

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退職証明書とは何か? 記載上の留意事項

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第38回 ホワイト企業人事労務ワンポイント解説   

Q

コロナ禍で会社業績が悪化し、やむなく社員を整理解雇したところ、その元社員から「退職証明書」を交付して欲しいとの請求が会社にありました。当社の就業規則にも「退職者が退職証明書の請求をしたときは、会社は遅滞なくこれを交付する。」とあります。当社ではこれまで「退職証明書」を交付した経験がありません。記載方法や留意事項について教えてください。

A

退職の際、社員の求めがあれば使用者はハローワークに「離職証明書」を作成・提出しますが、これは雇用保険の失業等給付を受給するために必要な離職票の交付を受けるための証明書類です。相談事例の「退職証明書」はこれとは別の労働基準法第22条に定められた退職証明書類のことで、労働者から請求があれば使用者は必ずこれを交付しなければなりません。退職証明書を交付するケースは比較的稀で会社実務として見過ごされている場合も多いと思われますが、労基法に定められた基本事項ですから会社としてしっかりおさえておく必要があります。

 

 一般に退職(「解雇」を含む)した元社員が退職証明書を請求してきたというような場合、その請求理由として次の二つの場合が考えられます。

①再就職に際し応募先の会社が前職照会を目的に元社員に提出要請があった場合
②元社員が退職(解雇)理由に不満があり使用者の主張する退職理由を確認の上で紛争等を準備する場合

 まず、①のケースですが会社が中途採用をする際、応募者に職務経歴書を提出させますが、この内容に虚偽の記載がなされることが稀にあります。例えば、営業職経験が豊富と書かれていても実際には営業経験は僅かで即戦力の営業マンと期待して採用しても目的が達成できないといった場合、雇用のミスマッチが発生します。あるいは、短期の入社と退職を繰り返しているような問題社員の採用を未然に防ぎたいといった理由もあるでしょう。
 このように採用会社側が応募者の職歴に疑問を抱いた場合、あるいは疑問というわけではないがリスク回避策として職務経歴書の記載内容等が事実であることを確認する手段として「退職証明書」の提出を要求する場合が考えられます。

 
 次の②のケースですが、退職時に会社と何らかのトラブルがあった元社員が紛争を起こす準備として「退職証明書」を要求することが考えられます。例えば勤務態度不良という理由で解雇(又は退職強要)された社員がこれを不満として、労基署、弁護士、または合同労組などに相談するために退職証明書(解雇又は退職の理由)の発行を求めるような場合です。
 退職証明書の形式については決められたフォーマットがあるわけではありませんが、厚労省のホームページにもモデル様式があるので参考にするとよいでしょう。
 記載すべき内容については、労基法に以下の法定記載事項が定められています。

(ア)使用期間
(イ)業務の種類
(ウ)その事業における地位
(エ)賃金
(オ)退職の事由(解雇の場合にあってはその理由を含む) 

 ここで留意すべき点は、上記を退職証明書に記載する際には「労働者の請求しない事項を記載してはならない」という点です。これは、例えば再就職先の会社に提出するために交付する場合、再就職に不利な事項が記載されないように労働者に配慮するのが趣旨です。ですから元社員が「退職した事実」のみの記載を求めた場合には「解雇」等の退職の事由を記載することはできません。
 なお、業務の種類、事業における地位等を記載する際にどの程度詳しく書くのかは任意ですが、退職した労働者に証明書の使用理由について確認の上で、それに沿ってなるべく詳細かつ明確に記載するのがよいと考えられます。

 さらに、上記の法定記載事項以外の内容の証明(例えば勤務態度や人事評価等)を求められる場合も考えられますが、そういった事項は法定外の任意記載事項ですから会社に記載する義務はありません。もちろん会社の善意で記載することは可能ですが、後日第三者からクレーム等がつかないような無難な内容にとどめるのがよいでしょう。
 解雇された社員に不満があって退職証明書を求めるケースでは、解雇の理由などの記載には注意が必要です。懲戒解雇や普通解雇の場合には、就業規則の対応条項とその内容、及び当該条項に該当するに至った具体的な事実関係(行為、事情、状況、経緯等)を記載しなければならないとされています。交付した証明書が将来の紛争に影響を与える可能性があるので、会社はその点を十分配慮の上で証明書の作成を行うべきです。 

 
 退職証明書は退職後に請求があった場合「遅滞なく交付する」ことが必要です(労基法22条1項)。また、退職前でも解雇予告通知を受けた者はその直後から解雇の理由についての証明書(「解雇理由証明書」と呼ぶ)の交付を請求できるので、その場合にも会社は解雇予定者に「遅滞なく交付する」必要があります(労基法22条2項)。

 退職証明書(及び解雇理由証明書)は離職証明書(ハローワークに提出)ほどポピュラーではなく交付経験がない、又はその存在自体を知らない会社も多いと思います。そのため、退職者から請求を受けた際に安易に拒否してしまったり、十分な考慮をせずに作成交付してしまったりするケースが散見されますが、以上述べたような留意点を踏まえたうえで会社として適切な対応を行ってください。

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