1. 賃金・評価などの人事コンサルティングならプライムコンサルタント
  2. プライム Cメディア
  3. WEB連載記事
  4. ホワイト企業の人事労務ワンポイント解説
  5. 同一労働同一賃金の法制化とは?

プライムCメディア

同一労働同一賃金の法制化とは?

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
同一労働同一賃金の法制化とは?

米田徹先生のプロフィールはこちら

第20回 ホワイト企業人事労務ワンポイント解説   

Q

「同一労働同一賃金」が法律になったと聞きましたがイメージがわきません。具体的にはどのような内容が法で定められたのでしょうか。

A

昨年6月に成立した「働き方改革関連法」の中でも目玉の1つである「同一労働同一賃金」ですが、一般の方にはまだまだ認知度が高いとはいえないようです。

「パート有期労働法」と「派遣法」の法改正で対応

 元々、「同一労働同一賃金」とは、等質・等量の労働に対しては,労働者の身分、性別、年齢、国籍などの区別なしに同じ額の賃金を支払うべきであるとする人間の平等権に関する原則です。
 これに対して、今回の働き方改革関連法での「同一労働同一賃金」は我が国で現在大きな格差がある正規・非正規労働者間の待遇格差の是正に焦点があたっていて、「同一の仕事に対して同一の賃金を支払う」という元々の思想とは多少区別して考える必要があります。
 実際、今回「同一労働同一賃金」の実現に向けて全く新たな法律が作られたわけではなく、既存のパート労働法、労働者派遣法に修正を加えるといった現行法の維持・強化による改正に留まっています。
 そして有期雇用者については、これまで労働契約法で「有期雇用と無期雇用」の違いで不合理な格差を禁止していましたが(第20条)、この条文をパート労働法に移し、「パート有期労働法(正式には「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)」と法律名を変更して、正規・非正規間の不合理な待遇差の是正を図ることとしたのです。
 また、この法律改正に伴って事業主が講ずべき措置に関してガイドライン(以下「指針」)が定められました。したがって、今回の「同一労働同一賃金」の法制化とは、上記の法律の改正とそれに伴って作成された指針のことを指します。

「パート有期労働法」の均衡待遇(第8条)とは?

 それでは具体的に内容を見てみましょう。「同一労働同一賃金」に関連するのはパート有期労働法(「派遣法」は本稿では省略します)の第8条(均衡待遇)と第9条(均等待遇)で、特に第8条が重要です。

●パート有期労働法第8条(均衡待遇)の内容とは?
① (非正規の)基本給、賞与、その他の待遇それぞれが
② 通常の労働者の待遇との間において
③ 職務の内容(業務内容と責任)、職務の内容及び配置の変更範囲、その他の事情のうち、当該待遇の性質、目的に照らして適切なものを考慮して
④ 不合理な相違を禁止する

 
 すなわち、パート・有期労働者の基本給、賞与、諸手当、福利厚生などの待遇それぞれが(①)、通常の労働者(同じ企業で働く正社員)との間において(②)、不合理な相違があってはならない(④)という内容です。そして、正規非正規間で待遇に相違がある場合、不合理な相違か否かを判断する際に③が考慮されることになります。それでは③の「職務の内容、配置の変更範囲、その他の事情」とは何かを次表にまとめてみます。

●不合理な相違か否かを判断する際の考慮要素(上記③)
職務の内容 業務の内容とその責任の度合い(例えば求められるノルマや成果、トラブル発生時や緊急時に求められる対応の程度等々)
変更範囲 人材活用の仕組、転勤の有無、昇進の有無等
その他の事情 定年後再雇用、(正社員等への)登用制度の有無、経営判断や団体交渉等


  考慮要素(上表)を見る際には、各待遇それぞれの性質、目的に照らして個別に判断します。例えば「基本給」の相違については「職務の内容」や「配置変更の有無」などが考慮要素になるでしょうが、「諸手当(例えば通勤手当)」や「福利厚生(食堂や休憩室の利用等)」については支給目的やルールが明確な場合が多く、「職務の内容」や「配置変更の有無」等々は考慮要素にはならず、正規非正規社員間で待遇格差があれば不合理と認められることになります。
 さらに同法の規定(第14条2項)では、正規社員との待遇格差についてパート・有期労働者から求めがあった場合には、なぜ非正規には払っていない(又は低くなっている)かを会社は説明しなければなりません。この事業主に課せられる「説明義務」は今回の改正法において実務上、最も重要なポイントの一つといえます。

基本的な考え方は「同一労働同一賃金指針」に記載

 同一労働同一賃金についてキーになるのがパート有期労働法(第8条)の「均衡待遇」ですが、法解釈の明確化のために指針が公表されました。指針では、それぞれの待遇について「問題になるケース」と「問題にならないケース」が例示されています。
 この指針の内容を要約すると、各待遇についての基本的な考え方は次の表にまとめることができます。

 例えば、基本給の決定方法が正社員と非正社員で同じ(例:職能給)なら同一の要素(例:能力・経験)で額を決定して支払う必要があり、決定方法に違いがある場合には改正パート労働法8条(均衡待遇)に照らして不合理な相違になっていないかが判断されます。
 また、各種手当てや福利厚生に関しては、原則として正規非正規間での異なる待遇は認められないということになります。

 以上、同一労働同一賃金の法制化について解説しましたが、今回の法改正・指針によって不合理と不合理でないものの境界が明確になったのかというと必ずしもそうではありません。例えば、退職金や家族手当の扱い、定年後の嘱託社員の待遇(基本給や賞与等)などをどう考えるのかは明確な基準が法律や指針に定められたわけではありません。そのような個別の問題については今後も裁判などの司法判断の蓄積によって不合理性の有無が定まっていくものと考えられます。(以上の改正法施行日は大企業が2020年4月、中小企業は2021年4月となります。)

プライムコンサルタントでは、本記事のようにWEB会員限定サービスをご提供しています。
「WEB会員」サービスはどなたでも無料でご利用いただけます。
今すぐご登録ください(入会金・会費など一切無料です。また、ご不要であればいつでも退会できます)。

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

カテゴリ